第4話 装甲車両で冒険者ギルドへGO!
装甲車両を飛ばし続けた結果。
俺とライツは夜には国境を超えることができた。
ちなみに国境を超えるには通行証か通行料が必要だった。
この世界のお金を持っていないため、
なんてずさんな警備だとは思うも、令和日本が厳し過ぎるだけかもしれない。
実際、50年前の昭和日本でさえ色々ずさんだったのだ。
文明が数百年遅れている異世界の管理体制に緊張感などあるはずもない。
その日は草原で車中泊をして、翌朝、近くの大きな街に入った。
「ここが商業都市リトナか?」
「国境警備兵の話だとそうなりますね」
装甲車両を量子化してから街に入ると、その喧騒に驚かされた。
道は人でごった返し、石畳の道路は荷馬車がせわしくなく行きかっている。
通りの左右には大きな店舗が軒を連ね、小路や空いたスペースには露店商たちが商魂たくましく客を呼び込んでいる。
国境近くなだけあり、この街は隣国との輸出入で成り立っているのだろう。
「これだけ人がいれば情報も集まるだろう。ワープ被害者もいるかもしれないぞ」
「同感であります。ですが、どうやって名を挙げるでありますか?」
「それが問題だよなぁ……」
――ガルアミのゲームだとプレイヤーは傭兵団の司令官って設定だけど、この世界じゃ無名の俺らに傭兵としての依頼なんてないよな。
「ヘイそこのおじさん。この辺に傭兵の仕事はないのですか?」
――行動早いなおい!
ライツに声をかけられた衛兵風のおっさんは、彼女をしげしげと眺めた。
「変わった格好だな。どこの国の民族衣装だ? まぁいい。傭兵なら冒険者ギルドに行けばいいだろ」
――冒険者? この世界にもあるのか?
異世界転移の定番職業に、俺も駆け寄った。
「すいません。その子の連れですけど、冒険者ギルドってどこですか?」
「この道をまっすぐ行けば右手にあるよ。盾と剣の看板が目印だ」
「ありがとうございます。よし行くぞ」
「はいなのです」
「若いうちから大変だな。冒険者は危険な仕事だから気を付けろよ」
「え? ああはい」
たぶん、俺とライツを口減らしのために故郷を追い出された兄妹か何かだとでも思ったのだろう。
これぐらいの文明レベルだと、よくあることだ。
――だとすると、人の命も安いんだろうなぁ……。
傭兵稼業の身としてはそちらのほうが助かるも、こんなところにワープ被害者たちをほうってはおけないという気持ちのほうが先立った。
俺はライツと一緒に駆け足で冒険者ギルドを目指した。
◆
「おぉっ」
両手で羽扉を左右に押し開けると、そこにはこれぞ冒険者ギルドと言わんばかりの世界が広がっていた。
床板の上に並べられたウッドテーブルでは武装した鎧やローブ姿の男たちが料理を食べながら酒を飲みつつ騒ぎ、壁際の掲示板に群がる荒くれ者風の連中はクエスト内容が記載されているであろう羊皮紙とにらめっこをしながら仲間たちと相談している。
ホールの奥のカウンターには綺麗な女性が座っていて、大剣を背負った男の対応を笑顔でこなしている。
異世界転移モノをテーマにしたアトラクションのようで、ちょっと興奮した。
とはいえ、いつまでもファンタジー世界に浸っている訳にもいかない。
俺はカウンターに並んで、順番が回って来ると受付のお姉さんに毅然と尋ねた。
「すいません。俺ら、田舎から出てきたんですけど、冒険者ギルドについてあらためてキチンと聞かせてもらえませんか?」
「かしこまりました。では僭越ながら、わたくしがご説明させていただきますね」
眼鏡のお姉さんは理知的な笑みでハキハキと説明を始めてくれた。
「まず、冒険者とは報酬次第でどんな危険な仕事もする何でも屋です。依頼内容は多岐にわたりますが大きく分けて5つです」
お姉さんは指を5本立てた。
「1つ、薬草など特定の素材入手を目的とした【採集依頼】。2つ、特定のモンスターや危険事物の討伐を目的とした【討伐依頼】。3つ、特定の対象を護衛する【護衛依頼】。4つ、特定の場所やモノについて調査する【調査依頼】。5つ、街の掃除や土木工事などの【雑用依頼】です」
お姉さんはニッコリと笑って手を下ろした。
「他にも戦闘技術の家庭教師をして欲しいなどどれにも当てはまらない依頼や、モンスターを討伐してその素材を手に入れた欲しいなど【採集依頼】と【討伐依頼】を兼ねた依頼。そして戦争に協力して欲しいなど【護衛依頼】と【討伐依頼】を兼ねた依頼がありますが、最初の5種類がほとんどです」
「モンスターと動物の違いってなんですか?」
「モンスターは別名魔獣。魔力をもち魔法を使える動物のことです。馬、豚、羊などの家畜や小鳥は動物で、魔獣は魔法を使い人間を積極的に襲う傾向がある危険生物です」
以前、とある動画でドラゴンサイズの生物が飛ぶことはできないからドラゴンはあり得ないと説明していた。
この世界にドラゴンがいるのなら、飛行魔法を使っているのかもしれない。
続けて、眼鏡のお姉さんは冒険者ランクについて説明してくれた。
冒険者と依頼はFからSまで7段階評価に分けられていて、Fランクから自分のランクよりもひとつ上のランクまで受けることができる。
ひとつ上のランクを3回達成すると、昇格するらしい。
ちなみに、各ランクの目安はこんな感じだ。
目安レベル
F 01~09新人冒険者
E 10~19一人前の冒険者
D 20~29腕利き冒険者
C 30~39一流の冒険者。
B 40~49小国を代表する冒険者
A 50~59国を代表する冒険者。
S 60~ 規格外。勇者や英雄と呼ばれ歴史に名を残す。
――俺はレベル1だから当然Fランクだけど、人造少女兵器のライツって何レベルなんだ?
彼女にステータス画面はなかった。
俺の画面で見られるのは【ガールズアーミー大作戦】のステータス画面で、彼女のスペックをこの世界のステータスに変換するとどれくらいになるのかはわからない。
「質問ですけど、何か規律とか罰則とかギルドから干渉、拘束されることはありますか?」
「常識的な行動をして頂ければ基本は問題ありません。それでも一応説明させてもらいますと、他の冒険者の手柄を横取りしない、戦闘に乗じて他の冒険者を害さない、ギルドを通さず依頼人と直接交渉してはいけない。違反行為をした場合、警報に触れる場合は法の鯖会を受けるのはもちろんですが、ギルドからは降格、一時的な活動禁止、罰金、脱会処分などがあります」
「強制クエストはありますか?」
「あります。頻度はかなり少ないのですが、王族の命令、あるいは街を防衛するためのクエストなどは強制的に参加してもらいます。断った場合は、何かしらの処分が降ります」
この説明で、俺は冒険者ギルドに加入することをしり込みした。
「わかりました。ではじっくりと話し合って加入を決めるので、失礼します」
「はい。お待ちしております」
限りなく冷やかしに近い俺にも営業スマイルを欠かさない眼鏡のお姉さんに頭を下げて、俺は冒険者ギルドを後にした。
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