第9話 漢廣(みなみの おおきな あのこが ほしい)

※「はないちもんめ」のリズムで


みなみの おおきな あのきが ほしい

だめさ あのきじゃ やすめない

かわで みずあび あのこが ほしい

だめか かわぎし むこうがわ

かわを およいで ちょいと いってみたい

だめか ひろくて いかれない

いかだ つくって ちょいと いってみたい

だめか とおくて いかれない


ぞうき ばやしの のいばら みたか

だめさ あのこは よめにいく

まけて くやしい はないち もんめ

うまに まぐさを くれてやろ

かわを およいで ちょいと いってみたい

だめか ひろくて いかれない

いかだ つくって ちょいと いってみたい

だめか とおくて いかれない


ぞうき ばやしに よもぎの はなが

だめさ あのこは よめにいく

まけて くやしい はないちもんめ

うまに まぐさを くれてやろ

かわを およいで ちょいと いってみたい

だめか ひろくて いかれない

いかだ つくって ちょいと いってみたい

だめか とおくて いかれない


【元の詩】

南有喬木 不可休息

漢有游女 不可求思

漢之廣矣 不可泳思

江之永矣 不可方思


翹翹錯薪 言刈其楚

之子于歸 言秣其馬

漢之廣矣 不可泳思

江之永矣 不可方思


翹翹錯薪 言刈其蔞

之子于歸 言秣其駒

漢之廣矣 不可泳思

江之永矣 不可方思


【ひとこと】

 喬木は高くそばだって枝がなく蔭の少ない木のこと[1]。えっ、それ褒めてなくない? 確かに松やコノテガシワを指すのに見る語だけどさ……じゃあこれ休んじゃダメなんじゃなく、休めないなの? この詩解釈色々で面白い。喬木は褒めてるのか褒めてないのか。とても手が届かない高嶺の花のあの娘説もあった。

 楚(いばらのこと)は薔薇のモデル級・超絶美人のお姉様というより、ノイバラの清楚系・目立たないけど実はめっちゃ可愛いクラスのあの子な気がしている。蔞(よもぎのこと)はこの子なら手が届きそうっていう娘なんだろう、届かなかったけど。

 なお「之子于歸」は「桃夭」と同じフレーズ。分かると嬉しいですね。


[1]吉川幸次郎 注『中国詩人選集〈第1巻〉詩経国風』上下、岩波書店、一九五八年

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