第43話 ギルマス



「俺は特別な人間なんだ。そんな俺様にあんな態度をとってコケにしあがって!タダで済むと思うなよ!お前が泣き喚いてもやめねぇ。お前をヤったら次はあの青いガキだ。最後にあのちびトカゲ、あの皮は高く売れそうだなぁ」

「おお〜、ここまで見事に自分で自分の首を絞たや奴は初めてだ。まぁここまで踊ってくれてありがとうな。さて、どこを折ろうか?剣の持ち方的に、右が利き手だしそれを折るのが一番困るだろうな」

「戯言を!最後の最後まで、馬鹿にしあがって!」


 そう言って剣を振り上げて突っ込んできたディック。あいつが冷静だったら俺が二回吹き飛ばされても無傷で立ってることに違和感を感じたかもしれない。でもあいつは怒りに身を任せている。


 でなければ、たとえここで俺を切り捨てても、公共の場で殺人を犯してしまい、いずれも詰んでいることに気づいていただろうし。


 そもそも俺に喧嘩売った時点でチェックメイトだけどね。


「うぉおおおおおおおおおお!」

「ノア!」

「グルルル!」


 いよいよ目前に迫ったディック。


 この機に及んでまだ動かない俺を心配するジオ。「かんばれー」と応援するゴジ。


「大丈夫だ」


 ジオに短く答えると同時に、ディックの懐に潜り込みディックの右手を片手で掴む。そのままもう片方の手でディックの手の関節を逆の方から殴った。俺のステータスだと人間の骨を折るのは容易い。ディックの腕は小枝のような音を立てた。


「ががぁあああ!イタイイタイイタイイタイ!腕が!俺様の腕がぁあああああ!よくもよもよくもぉおおおおおお!ぎゃあああああ!」

「ギャーギャーうるせぇ!」


 うっせぇなぁ!腕折れたぐらいで喚き散らしあがって!もう一回やるか?今度は口を狙って。


「そこまで!」


 部屋中に響く、よく通る怒鳴り声。発したのは受付の奥にある階段から降りてきた初老の男だ。白髪が見え隠れする髪に髭。それなのに、体型はボディービルダーと見間違う程ムキムキで、体だけを見れば20代後半だ。


「俺のギルドで何をしている!喧嘩なら路地ででもやれ!」


 そこ……喧嘩をするなって言うところじゃないの?まぁいっか。


 ともかく、"俺のギルド"って言ってたから多分この人がギルドマスターなんだろうな。ちょうどいい。ここで、一つ弁明しとくか。

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