教祖の子事件

穂麦むぎ

警察がやってきた

20XX年、児童の権利を社会が保護する意識が高まり、あらゆる方面で家庭の児童への介入が制限されていった。



ぐすっぐすっ

私は、帰り道に転んでしまってひざを擦りむいてしまった。血がにじんでいてすごくヒリヒリする。


ガチャ、

なんとか家まで帰ってこれた。まだ全く痛みはあるけれども、少し安心もした。


おかあさんに近づいていく

「おかーさーん、けがした~」


おかあさんは叫んだ

「あんた、憑いてるわよ。けがしたのはそのせい!、除霊しなきゃ!」

そして、私を奥の和室へと連れて行った。


ピンポーン、

おかあさんが詠唱をはじめてしばらく、インターホンが鳴らされた。しかし、おかあさんはそれくらいで詠唱をやめたりはしない。


コンコンコン、「中村さーん、いるんでしょ~」

私のひざからはまだ血が流れている。


ドン!ドン!ドン!、「中村さん!、開けてください!」

家全体にドアを叩く音が響いている。やっと、おかあさんがドアの方へ向かっていった。


どたどたどたどた、おかあさんと男の人が怒鳴りあう声と誰かが近づいてくる音がする。


「あっ!、あかりちゃんだよね!」

スーツを着た女性が現れて言った。おかあさんの声は大きくなってきているが姿はみえない。


彼女は私のけがをみつけるとすごく心配そうにして、治療してくれると言う。

「大丈夫?ひとりで歩けるかな?」

お姉さんは、私の手を取って歩き出した。


玄関の方へ行くと、おかあさんの姿がやっとみえた。大きい男の人数人に囲まれていて、その姿はすごく小さく見えた。

おかあさんは彼らとの言い合いの間に私に何か言ってきたようだけど、彼らに阻まれて聞こえなかった。


外で手当てをしてもらってしばらくすると、家からおかあさんたちがでてきた。お母さんはひどくしゅんとした様子だった。


おかあさんが連れていかれてまたしばらくして、”ジソウ”?というところの人が現れた。



あの事件からもう”おかあさん”とは会っていない。

普通の生活というのを手に入れて、あの環境がどれほど異常だったのかを知ることができた。


もう私みたいな子がいないならいいな

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教祖の子事件 穂麦むぎ @neoti_2020

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