第3話 裏切り
鑑定士さんは不定期に騎士団を引き連れこの村にやってくる。
鑑定士は貴重な存在のため魔界と隣接している危険な村にはめったにおもむかないのだが王国は戦力不足のため逸材発掘のためにこの村を不定期に訪れるのだ。
「ほら! 次はお前たちの番だぞ! 前の子は魔力がAランクであの魔導学校に入るそうだ!」
「お前たちもいいスキルを手に入れて村に貢献するんだぞ?」
「まずはバリスからだ、鑑定士殿! お願いします」
「承知しました、ではこちらに座って水晶に手をかざして頂けますか?」
「はい!」
ーーキィィイィイ!
バリスが手をかざした瞬間に水晶が光り出し文字と数字が浮かび上がってきた。
鑑定士の役割はスキルを鑑定しそれを発現させることだ、一般的にはバランスの取れた“騎士”や戦場での切り札になる“魔道士”が強いとされている。
ごく稀に“勇者”や“剣聖”など異常な強さを持つスキルが発現する事があるが剣聖はここ10年現れていないらしい。
勇者は500年もの間現れていないのだという……“勇者”は魔王に抵抗できる唯一のスキルだとされている、まさに伝説のスキルだ。
「!これは!バリスさんは剣聖!? おめでとうございます!」
「や、やった!! 父上! やりました!」
「おお! よくやったぞバリス!!! お前は我が家系の誇りだ!! この様子なら二人も大丈夫そうだな!」
「私たちの子ですもの、当然じゃないかしら?」
「それにしても、剣聖なんて見たのは鑑定士をしていて初めてですよ! 大変珍しいスキルなので慎重に扱ってくださいね!」
「は、はい! 分かりました!」
「では、次はグエルさんですね、こちらへお座りください!」
「はい……」
ーーキィィィイィ!
「こ、れは……!!」
ーーピシッ!! バリン!!
「きゃっ!! す、水晶が!!」
「ど、どうされたんですか!!? 鑑定士殿! これは一体どういう……」
「こ、これは!! そんな!! あ、ありえません!! 」
どうしたんだろう? グエルが手をかざした瞬間水晶にヒビが入って水晶が割れてしまった……鑑定士さんもすごく取り乱してるし、何か予想外のことが起きたに違いない。
「す、すいません取り乱してしまって……皆さん落ち着いて聞いてください」
「グエルさんのスキルは“勇者”です……魔力は測定不能おそらく王宮魔道士よりも高いと思われます」
「と、とりあえずこの話は後で村長もお呼びしてゆっくりと……ミカエルの鑑定もまだですので」
「は、はい分かりました! ではミカエルさん、こちらにお座りください!」
いよいよ僕の番だ……! ここでいいスキルを手に入れて僕もバリスやグエルに負けないようにしないと!
「お願いします!」
「では、替えの水晶がありますのでここに手をかざしてください!」
ーー・・・・・・
「これは……残念ですがスキル無しですね」
スキル……無し? 僕にはスキルが無い? 状況が理解できないスキルが無いなんてそんな事ありえるのか?
「そ、そんな!! ミカエルにスキルが無いなんて……か、鑑定士殿!! 何かの間違いでは!?」
「いえ、水晶に何も映し出されていないので間違いありません……残念ですが……」
「では、魔力……魔力はどうなのですか!?」
「魔力は……えっ! 魔力無し? 珍しいですね……スキルも魔力も無いなんて、魔力は赤子でも多少は持っているものですが……」
「そんな……」
鑑定士から残酷な言葉を聞いた父上は膝から崩れ落ちその場に座り込んでしまった。
「父上! 落ち込まないでください! スキルや魔力が無くとも修行はを頑張ればいずれは……これから修行をがんばります! なので家に帰りましょう父上……」
「黙れッ!!!!! この出来損ないが!!!!!」
ーーゴッ!!
「ガッ!! ち、父上……落ち着いてください……」
厳しくも優しかった父上は怒鳴りながら僕の顔を殴りつけ僕はテントの柱に叩きつけられた、どうして……父上は一体どうしてしまったんだ。
「何が家に帰りましょうだッ!!!! 馬鹿に!! しやがって!! この!! 出来損ないが!! いくら!! 修行!! しようが!! スキル持ちには勝てないのが分からんのかッ!!!!!」
父上は倒れ込んだ僕を何度も何度も蹴り上げ、殴りつけた、あんなに優しかった父上がまるで獣のように暴れて暴言を僕に叩きつける……スキルが無いというだけでこんなに変わってしまうのか……。
「は、母上……」
切れた唇に恐怖で震えた舌で母上に必死で助けを求めるも、帰ってきたのは現状に追い討ちをかけるような残酷な言葉だった。
「何かしら? 貴方ほんとに私の子なの? お腹を痛めて産んであげたというのに何も返してくれないなんて……貴方を産んだのは間違いだったわ」
そんな……母上まで僕のことを……痛い……苦しい……殴られるのはいい、蹴られるのも……でもその言葉だけは言って欲しくなかった……その汚物を見るかのような目は向けてほしくなかった……。
「ハァ……ハァ……グ、グエル! バリス! やはり私たちの宝はお前たちだけだ!」
「ゴホッ……ゴホッ……ち、父上……母上……」
「黙れ! 出来損ないが! お前なんぞどこぞでのたれ死んでしまえ! そうだ! グエル! バリス! スキルを使え!」
「どうせこのグズは魔界に捨てるんだ! 何の役にも立たないなら最後にお前のスキルを確かめる道具になってもらおうじゃないか!?」
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