【実力主義】の村で生まれた【魔力無し】【スキル無し】の少年は魔界に捨てられるが魔族の女剣士に拾われ修行していたところ“勇者”である弟たちをいつの間にか超えていた件について〜無能少年のやり直し〜

jester

第1話 全ての始まり






 魔界……様々な異形が住まう地、未だ深部に至った者はおらず、生きて帰った者もいない場所。


 そんな場所に面している四つの国が存在しその中の一国、その中に魔界に最も近く日々モンスターの進行を食い止める村が存在した。


 曰く、強いスキルのある者が全て、力無きものは酷い扱いを受け排斥されるという。


 そんな場所にとある少年がいた……。


「父上! 母上! ただいま戻りました! キングオーガを討伐して参りました!」


「おお! 戻ったか! その歳でキングオーガを倒すなんて修行した甲斐があったな!」


「まあ! 一人で倒すなんて凄いじゃない、さすが私たちの子ね! この調子ででどんどん強くなってね?」


 僕は“ミカエル・スヴェイン”魔女の母と剣士の父を持つ3人兄弟の長男として生を受けた。


「この様子なら明日に控えたスキル鑑定も期待できるな! きっと魔力もかなりのものだろう!」


 僕はこの瞬間が好きだ、もちろん修行は辛く魔界に面しているこの村ではモンスターが強い……倒すのも命懸けだ。


 でも、普段厳しく修行を付けてくれる父がこの瞬間だけは優しく僕の頭を撫でてくれる。


 母も普段は冷たいけれど今だけは僕を見てくれる……僕はこれだけで幸せだ、家族のためなら何だってできる。


「ただいま戻りました……素振り5000回と走り込み終わりました!あっ兄さん!帰ってきてたんだね! 今日はどんなモンスターを倒したの!?」


「ハァ……ハァ、帰って来てたんだ……つ、疲れた……」


「お前たちも終わったか、いまミカエルも帰ってきたところだ! ミカエルはキングオーガを倒したそうだ! お前たちも見習ってもっと強くなるんだぞ!」


「はい! ご期待にそえるように鍛錬を怠らず精進いたします! 」


「……頑張ります」


 僕の弟……次男のバリスは頑張り屋で強くなるための努力を惜しまないが強さに貪欲なところがあり安易に使うと危険とされる技でも盗み見て真似をして大怪我をしたことがあるほどだ。


 自らをかえりみないところもあるため兄として心配している。


 三男のグエルは怠け者で努力をする事が苦手だ、強さ的にも村の同年代の中で一番下なので父上や母上から冷遇されている。


 バリスとは別の意味で心配だ……才能は僕より上で努力さえする事が出来るなら僕をも超えていたかもしれないのだが最近は修行をサボってばかりいる。


「よし! メシにしよう! スキル鑑定の前祝いだ! 今日は食事制限をせずに存分に食え!」


「父上! 本当ですか!? やったな! バリス、グエル!」


「は、はい! 」


「……」


「どうしたバリス? 久しぶりのご馳走だぞ! 具合でも悪いか?」


「いや……そんなことないよ」


「そうか? 具合が悪かったら兄ちゃんに言うんだぞ?」


「う、うん分かったよ、ありがとう……」


 バリスはこの頃様子がおかしい、元気が無くなったし時々こちらをジッと見ていたり夜中に家の外で何かをやっているようだ。


 もともと暗いところはあったかもしれないが最近はさらに口数が減り俯く事が多くなった気がする。


「いただきます!」


「ちゃんと食べて明日の鑑定に備えろよ! お前は一番期待されてるんだからな!」


「はい! 父上分かっております!」


「バリス、グエルお前たちにも期待しているぞ、我が家系の尊厳がかかっているのだからな! 良いスキルを手に入れて村に貢献するんだぞ!」


「はい! ではありがたくいただきます!」






ーーーーーーーーーーーーーーーー






 飯を済ませて寝床に入ったが、明日のスキル鑑定と魔力測定への緊張でまったく眠気がこない……それに……


「お腹が苦しい……少し食べ過ぎたか? バリス、グエルお前たちはどうだ僕と同じぐらい食べてたけど……」


「ぼ、僕もつい食べ過ぎてしまいました……あと明日の事楽しみで寝れません!」


「楽しみか……バリスは強いな! 僕は緊張して寝られないよ、ハハッ、情けない兄でゴメンな? グエルはどうだ?」


「……俺は別に……」


「そうか! 二人とも本当によく出来た弟だなぁ……僕にはもったいないよ!」


「に、兄さんそんな事ないよ! 兄さんは僕たちの憧れだよ! キングオーガを一人で倒しちゃうなんてさ! 国の聖騎士団が何人も集まらないと倒せないって噂だよ?」


「そんな事どこで聞いたんだ? キングオーガぐらいならお前たちにも倒せるよ……」


ーーコンコン


「ミカエル? いる?」


 こんな夜中に誰だ? それに玄関からじゃなくて窓ガラスからなんて……。


ーーガラガラ


「! アリス! どうしたの? こんな夜中に……一人は危ないよ! 最近魔獣が活発になってるの知ってるでしょ?」


 窓を開けて姿を確認するとそれは僕の幼馴染で小さい頃からよく遊んでいるアリス・グライダルだった。


 村長の一人娘で髪はピンク色で下がった目尻とぱっちりとした目……日に日に女性らしい体つきになっていく彼女を見ると胸が苦しくなる。


鑑定士から”回復師”のスキルを授かりその優しい性格から聖女とまで呼ばれている。


 そして彼女は……僕が恋心を抱いている女の子だ。


「えへへ、来ちゃった……ミカエルと話したくなっちゃってさ……ねぇ、少しお散歩しない?」

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