第11話 報復

街は、にわかに騒然そうぜんとしていた。


「なんだってんだ!!

急にうちの家族が苦しみ出して……黒死病、なのか……?

なん……う、ぐ……」


「医者はどこだ!?

『教会の騎士』は何をやって……う、ああ……」


路上に倒れ込む多くの人々、それを蹴り付け踏み付けながら逃げまどい、しかしながらやがて同じように倒れもがき苦しむ人々。


「ネシュトス様!」


数人の神父が、薔薇の咲き乱れる庭園を駆け抜けて、大きな屋敷へとなだれ込んだ。


「わかっている。

皆の目には見えないようだが、小さな魔法陣が街一面に降り注ぎ人々の体に突き刺さっている。

それが黒死病を生じさせているのだ。

こんなことができるのは、あやつただ一人」


「御名答。

久し振りだね、ネシュトス騎士長」


いつの間にかネシュトスの隣に立っていた、漆黒に身を包んだ女が微笑んで耳元にささやき、顔の前に開いた手のひらへと、ふっ、と息を吹きかけた。


「ぬぅっ!?

まずい、逃げられよ!」


飛び退き十字架をかざし念じたネシュトスの叫びが響くが、


「な、何事……まさかこいつは、魔、女……ぐ、あ、あ……」


周囲の神父たちはあっという間に全身に黒い染みを広げて崩れ落ち、動かなくなった。



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