彼女(男の娘)が美少女すぎる!

口惜しや

第1話

「次は~公園前~公園前~」

けだるげな車掌の声とともに冷風が車両に入り込む。

白いセーラー服に身を包み学校カバンの紐を両手にぶら下げ、満員とまではいかないが座ることはできないくらいの人の数に忖度し隅の方で立っていた。

(…ッツ…また…?)

背中に柔らかいような固いような,独特だが人によっては馴染みのある感触が伝わる。

肩にかかるまで伸びた黒髪の隙間から一瞥するにカップ麺を主食にしてそうな男性が息を荒立てている。

(こ、こわいし…気持ち悪いなー…姿勢をずらしても追いかけてくる…)

宝石のように美しい瞳が今は嫌悪に眉をひそめて台無しになっている。

このまま目的地まで耐えられそうにもない、しかし強く拒否をしようにも男性の股間が背中に来るほどの背丈では敵わないだろう。

どうしようかと本格的に悩んでいた時にようやく電車が発車し少し大きく揺れた。

(ひっぃぃ…今までで一番このおじさん積極的だ…!)

左の尻をおもむろにつかみ局部を開くように持ち上げた。

(うわぁぁー!!流石にもう無理ーー!!)

左の肩にも手をかけられる―ん?どんな姿勢してるの?

違和感に気が付き振り返ると同じ学校の制服を着ている青年が隣に立っていた。

「あっ…!」

救世主の登場に感嘆の声を漏らすと無言で親指を立てて見せ痴漢男性の方に振り向きなおした。

「おっさーん、おいおいおっさーん」

「俺らのアイドルになーにしてくれてんのー?怖がってるぞー?」

手を払われた男性は開いたチャックのまま焦って周りを見渡した。

「いやー…めちゃくちゃにしたいくらいコイツがかわいいってのはわかるよー?でも知らない人がこんなところで手を出したらダメだぜー?」

「…しかたないだろ!その女がいやらしい格好で俺を誘ってきたんだからよ!」

彼にちらりとそれ見たことかと一瞬にらまれる。

「あー…だから俺いったろ?もうちょっと露出を控えろって…」

「なんだその短いスカートは…ナカのもん見えてんじゃねぇか…」

「でも…これスパッツだよ?ズボンみたいなもんじゃん…」

官能的過ぎるムチムチすべすべの太ももとスパッツの間の段差を見せびらかすような短いスカートをつまみ軽く持ち上げる。

「それに…そもそも私…」

「ああ…そうだな、言いたいことはわかるよ」

「おいおっさん、夢をこわすようでわるいんだけどさ」

全くの予備動作無しにスパッツをスカートごと足元まで一気におろしライトグリーンのパンティーを見せつけた。

なんか下半身がスースーするなーっと思うくらいで下ろされた方はまだ気づいていない。

その少しの猶予の間にその車両に乗っていた男性という男性がその姿に釘付けになった。

先ほどの騒動を見ていた人、痴漢を見て見ぬふりをしていた人、痴漢されている姿を見て悶々としていた人。

そのどれもが心の中でとんでもなくかわいい子と思っていた人物のパンツがいきなり自身の目にさらされる幸せこの上ないハプニングが起こったのだ、嬉しさと驚きと興奮が激しく入り乱れフロアが沸き立つ。

しかしなんだかおかしい、女子の中でも小さいほうだと思っていた身長に見合うくらいの小さいものが…小さいとしても存在していることがおかしいものが観測できた。

かわいらしいパンティーがやたらともっこりとしていた。

見慣れたようで見慣れない。

ブツが女性用下着に包まれていることがまずおかしいのだ、誰もが自分の目を疑った。

乱暴に彼女?の股間をつかんで声を荒げ叫んだ。

「こいつは男だっての!」

先ほどまで彼?の身体で悦んでいた男性は何よりもの証拠を見せられ悦んでいた自分を悔やんでいるのか尻もちをつき呼吸を忘れているようだ。

遅れて自分が電車の中で乗客全員に見られるように股間を展示されていることに気が付いた"彼女"は顔を真っ赤にし助けてくれた彼を拳で殴った。

いそいそと彼を連れて次の停車駅で降りて行った、彼たちの目的の駅はそこだったのであろう。助けた彼は一駅しか乗っていないが。

駅のホームに出るや否や助けた彼を殴りつける。

「おりゃぁぁ!!」

「痛っ!ちょ!待って!待てって!」

「尋常じゃないくらいかわいい顔で腰入れて殴るな!ったく!助けてやったのによ!」

「うそでしょ!?あんなことしてまだ自分が正しいと思ってるの!?このイカレ野郎!!私の服脱がす必要ないでしょ!!」

「素直に男の娘だって言っても信じてもらえないのはわかり切ってただろ!」

「チ〇コつかんでサイドブレーキって言うか悩んだんだぞ!やらなかっただけ運がよかったと思え!」

「うるさい!!脱がすことないでしょ!!ぜったいこれから噂になるって!!」

「芸能界のスカウト来ちまうな」

「うるさい!来てもまたAVだけだよ!!」

「あーあー!!そんなに言わるんなら助けてやんなきゃよかったなー!!」

「…」

すこし彼が元気になったのを横目で確認し言いにくかったことを切り出す。

「…今回のは本当に怖かったみたいだな…」

「…うん」

「いつもなら嫌がるそぶりを見せたら引いてくれるんだけど…しつこくて…」

「本当に…怖かった…」

「そんな奴を無罪放免で許しちゃおけないだろ?ああやって自分の行いを…」

言いかけた彼の身体に柔らかい温もりが伝わった。

「うぅ…ぐすっ…こわかったぁぁー!」

「ほんとにぃ…いつも助けてくれてありがとぅー…」

「えぐっ…ひっぐ…本当にありgなんか当たってるんだけど」

抱き着き泣く彼を見て思いっきり勃起していた。

「はぁ…はぁ…口でしてもらえたりする?」

「離してください!離してください!!離してください!!!!」

身長150センチほどの彼を運ぶことなどおおよそ男ならば容易い。当然駅のトイレで犯すことも―




「ご心配していただけてありがたいですが…もう解決しましたので帰らせてもらえませんか…?」

「いやいやいや、あんなに助け求めてたんだから解決したも何もないよ」

「男の方は別室で取り調べさせてもらってるから。なにがあって彼とはどういう関係かとか聞かせてもらえる?」

「私とあのイカレ男は同じ学校で…お付き合いさせていただいてるもので…」

「でもキミも男性でしょ?身分証に書いてあるよ?」

「『本当のことを』話してもらえるかな?なかなかめんどくさいことになりそうなんだ」

「…はい」


別室にて…

「トイレに連れ込んで何をしようとしていた!?自分が何をしたかわかってるのか!?」

「誤解をしているようですが…あいつは男ですよ?」

「何を言うかと思えばそんな苦しい言い訳を…」

「信じてくださいよ!それじゃああいつの言い分を聞いて照らし合わせてくださいよ!辻褄が合うはずです!」

「ったく…じゃあ話してみろよ!」

「俺は…あいつと同じクラスの生徒で付き合ってて…」

「もうおかしいだろ!キミの言い分では男なんだろ!?それに…あんな美少女と付き合えるなんて思いあがってるんじゃない!」

「テメー!それはどーいうことだよ!俺じゃ釣り合わないってのか!?」

敬語がすぐに取れてしまった。

「当たり前だ!あの娘に釣り合うような人間はトップスターくらいなもんだ!あの娘自身もアイドルか何かだろ!?」

「確かにかわいいのは認めるがあいつは男だっていってるだろ!!」


「ワーワーワー!!」


「となりの部屋でずいぶんと揉めてるようだね…」

「まずはその恰好から聞いていいかな?自分は男だって自分で言うってことは性自認は男なのかな?」

「はい…私は男です、この格好は…動きやすいってのと…彼が好きって言うから…」

「それじゃあ本当は男の格好をしたいのかな?」

「い、いえそういうわけでは…彼と出会う前から女の子の格好をして…」

「そんな私を…彼は全部受け入れてくれて…」

「告白はどっちからしたの?」

「彼の方から…」

「最初は私を男だと思ってなかったみたいだったんですけど…性別のことをカミングアウトしても変わらずに好きだって…」

「今までよく告白されてきて…その度に男の娘だって…それで…その度に…拒絶されて…」

「でも彼は…そんな私を一切気にしてなかった…初めて私の全てを愛してくれた…そんな私の大好きな人です…」

「彼はキミのことを犯そうとしていた」

「それは…確かにそうですけど…」

「我々が止めて居なければやられていたと思うよ?」

「こ、こっちは彼とお付き合いして長いんです!」

「そ、そんなことをされても…気にしません!」

…かわいい


「それで告白したときに男だって泣きそうな顔で言われたんだよ!」

「はぁ…それでなんて返したんだよ」

「ち〇こついてるなんてふたなりじゃんお得じゃんって言って付き合ったんだよ!」

「あんなかわいい顔にち〇こついてるわけないだろ!いい加減にしろ!」

「もう認めろ!いい加減!」

「ずいぶんと揉めてたようだけど大丈夫?」

話がまとまったのか彼と駅員が二人に合流した。

「あっ!聞いてくださいよ駅長!コイツあの娘のこと男の娘だって言ってきかないんですよ!」

「彼の言うことは本当だよ、身分証で確認もしたし本人の相談も聞いたし。」

「っえ…そんな…本当だったなんて…ありえない…」

「…えへ♪」

「ぐわぁぁぁ!!!こんなにかわいいのに!!!!」


「他のお客様もおられるからこれからは気を付けてね?」

「はい…すいませんでした…お世話になりました…」

改札を抜ける前に小言を言われ何とか無事に解放された。

完全に遅刻が確定した彼らは学校の最寄り駅から開き直って歩いて登校し始める。



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