20.大鬼

 今回も順調。もはや3角鬼も敵じゃない。鬼を両断したセンを握り締め自分の成長を実感する。


 『おいおい。あんまり自惚れるな。3角の中には特殊な能力持ちだっているんだ。油断して大切な身体を傷付けるなよ』


 ジャックの忠告はもっともだ。大切な”俺”の身体を油断から損なってはならない。能力を持った鬼。ジャックに聞いても色々だ、見ればわかるとしか教えてくれないのでどれだけ危険かわからないが注意するに越したことはない。隊長達からは出たら逃げなさいと言われているが。


 「ヒカリ、気を付けなさい。穴が開くわ。」


 少し考え込んでしまっていたようだ。ヒメさんの叱責の通り、目の前に鬼道が繋がり穴が大きくなっていく。だが、すぐに膨張は止まった。まだ小さい。これなら小鬼くらいしか通って来れない大きさだ。ほっとした最中、黒い物体が飛び出してきた。なんだろう。よく見たら黒い紐でグルグルに縛り付けられた鬼、かな。なんで縛られているんだろう。あっけにとられていると紐がほどけていく。現われたのは3角の小鬼。小鬼で3角は珍しい。キョトンとして座ったままだ。

 先手必勝と斬りかかったが、刃は無造作に上げられた左手に止められてしまった。


 「離れて!」


 ヒメさんの声に従って後ろに飛ぶ。ドカッ!!さっきまでいたところに小鬼の右手が振り下ろされて大きな窪みになっている。小鬼が届く範囲ではなかったはずだ。土煙が晴れると右腕が大きくなっているのが見えた。どんどんと身体の部位が大きくなり見上げるほどの大鬼へと変化した元小鬼が大声で叫ぶ。


 「ここはどこだ!夜赦のヤツは!」


 大鬼は怒鳴り散らしながら歩きだした。一歩進む度に少しずつ大きくなっていく。


 『巨大化か。放っておくとどこまで大きくなるかな』


 ジャックは呑気に言っているがそんな様子見している場合ではないだろう。隊のみんなも異変に気付いて集まってきた。


 「これは、また大きいね。タケル君まかせていいかい?」


 ミコト隊長が今回合同で参戦している25番隊の菓子谷隊長に声を掛けているころ、大鬼は建物よりも大きくなっていた。

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