19.躊躇
どんなに気を張っていても、いつかは緩む。
他の隊とはいえ、隊長が倒れたのは衝撃だった。その後の鬼の発生を告げる警報が鳴った時は緊張したが、変わらぬ隊の皆の態度に安心していつも通り鬼を討伐出来た。
鬼の数は増えている。角が2角の鬼も。1角よりも強いが十分に対応出来た。さすがセンだ。頼もしい。大丈夫。11番隊なら4角の鬼にも対応できるだろう。
そんな考えを抱くようになったある日である。ここは結界内、目の前に鬼がいるがいつものように斬ることが出来ない。
「タスケテ。キラナイデ」
話しかけてくるのだ。鬼が。考えれば当然だ。ジャックとは普通に会話しているのだから。
これまでは鬼のあまりに怪物然とした姿から戦うことの恐れはあっても斬ることの恐れは無かった。その鬼は2角の普通の鬼に比べ体が細く小さい。弱々しく震えている。どうしよう。ジャックに聞いてもなにも応えてくれない。角を与えていないので不機嫌なのだ。
「ヒカリ君、気を付けて!」
後ろにいるヒメさんの声が聞こえたその時、鬼が跳びかかって来た。すごい速さだ。驚き、動けない。
「シネ」
「おまえがな!」
俺の右手が勝手に鬼の頭を掴み地面に叩きつける。左手が鬼の角をへし折って口に運ぶ。バリバリ食べている。オエッ。
『なんで!どうなってる!!』
着ぐるみの中にいるような感覚。ジャックに体の主導権をとられている。
「頭まっしろで腑抜けてたんでね。むしろ感謝しろ。オレ様が代わらなきゃ怪我してただろ」
「角の数が増えるほど鬼は多才な力を振るう。教えたでしょう。話す位で動揺しないこと。鬼は凶暴で狡いの。気を抜いてはだめ。もちろん、天邪鬼にもね。ヒカリ君に体を返しなさい!」
ヒメさんのお説教。怖い。
「ハイハイ」
以外にも大人しくジャックは引っ込んだ。
「今後搦め手を使う鬼に対しての訓練を強化するわ!」
緩んだ気持ちをしっかりと引き締めされる猛特訓が始まった。
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