第143話 リードラシュの悪魔7
「くっ!?」
リリアナ殿下を傷つけることはできないが、なんとかして悪魔の精神支配から解放しなければならない。4人の精神支配を解放した時は、影をアイムールで切り裂くことでなんとかなったが、この闇の空間ではリリアナ殿下の影を見ることもできない。
「さぁ、どうするのか見ものだね。皇女殿下を傷つけるのかい? それともボクをその前に殺すかい? 方法もわからないのに?」
確かに、今の俺には悪魔を殺す方法はない。ただ、一度だけ『破壊の炎』で傷を与えることはできているので、なんとか倒す方法もあるはずなんだ。
「『氷槍』!」
「無駄だよ」
「『雷撃の槍』!」
「あはは! 自暴自棄?」
「『破壊の炎』!」
「ん……当たらないねぇ」
悪魔は煽るようにしながら俺の魔法は効いていないと宣言しているが、何故か『破壊の炎』だけは大袈裟に避けている気がする。他の『氷槍』や『雷撃の槍』は避けずに身体を透過しているのに『破壊の炎』だけを身体ごと避けているのには、なにか理由があるはずだ。しかし、今は悪魔を倒すよりもリリアナ殿下を何とかしなければならない。
(貴方が私に振り向いてくれるなら、私はなんでもするのに……ダメ、こんな私を見ないで)
「なんとかして影を……影?」
そうか。もしかして、最初から俺はもっと簡単に考えるべきだったのかもしれない。精神を支配されている人間を解放するのには、その人間の影に及んでいる悪魔の魔力をアイムールで断ち切る必要がある。それはつまり、人間の影を作り出す光が必要なんだ。4人を解放した時にあった周囲の光は、太陽の光だ。悪魔は太陽の光を、忌々しい太陽だと表現していた。それはつまり、悪魔の能力は光の中では使えないと言うことに他ならないのではないだろうか。
なんにせよ、打つ手のない今、試してみる価値はある。
「『燃焼』!」
「っ!?」
魔力の糸を伸ばして、リリアナ殿下を囲うように展開してその糸を『燃焼』させて光を確保する。闇の空間に突然現れた光によって、リリアナ殿下の足から悪魔へ伸びる影を発見した。しかし、すぐにリリアナ殿下の『停止』によって『燃焼』を止められて光が失われた。
「……忌々しい奴だね。本当に勘のいい奴だ」
「悪いな。頭はそんなに良い自信はないが、昔から機転は利く方なんだ」
これで、悪魔の弱点ははっきりと分かった。それがわかれば、対処方法はある。
「なら、点火なんてできないようにしてあげるよ!」
今までリリアナ殿下を操って攻撃するだけだった悪魔が、周囲の闇を操って直接的な攻撃を仕掛けてきた。しかし、弱点がわかった今ならなんとかできるかもしれない。
(ライト君……私を、助けて)
「わかってます……わかってる。俺が貴女の全てを、受け止める」
リリアナ殿下が操られている理由は、精神の闇を支配されているからだ。それを解放する方法は、影をアイムールで攻撃して魔力を吸収する以外にも存在している。それは、リリアナ殿下の心の闇を晴らしてやることだ。心の闇がなくなることはなくても、悪魔の支配に対して抗うことができる程度には弱めることができるはずだ。
俺が、リリアナ殿下の心にある闇を受け止めてやればいい。リリアナ殿下の心の闇の原因は殆どが俺によるものだ。つまり、リリアナ殿下の闇を晴らせるのも俺にしかできない。
俺がやるしかないんだ。
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