クリスマスレイン

@rarin1831

クリスマスレイン

 12月25日、クリスマス。雪が舞っている。氷点下を下回る極寒の正午近く、野外をたくさんの人が埋め尽くしていた。皆何かに期待するように空を眺めている。 

「そろそろだな」

「今年は何が貰えるだろうな」

 いい年のおっさん達の踊るような声が響く。まるでサンタクロースの置き土産を待ち望む子供のようだ。周りのざわつきも増していく。


 クリスマスには空からプレゼントが届く。今では当たり前だが、余りに超自然的な現象。その始まりは2022年のクリスマス。雪が降っていた。正午を迎えた頃、寒空からありとあらゆるものが降りだした。ダイヤ、車、サンタクロース。大小様々なものが個人の元へゆらゆらと落ちていく。その速度は舞う雪よりゆったりとしていた。


 当時は突然の出来事に混乱を極めた。現代の技術では考えられない現実離れした現象に、ある者は未来人からの廃棄物といい、またある者は神様からの贈り物と言った。その後19年後である昨年まで、毎年続いている。


 結局この超常現象がどういった原因で起こっているかは分からなかったが、人々は年を重ねるごとに慣れ始め、今では当たり前の現象として認知されていた。


「来たぞ、クリスマスレインだ!」

 正午を回るころ、冬空の彼方から点々と穴が見え始め、段々と輪郭をはっきりさせながらゆっくりと地上にが降り始めた。空からの贈り物に人々の喧騒が一層激しくなる。2042年、20回目のクリスマスレインだ。


「俺、サッカーボールだった!そろそろ新しいの欲しかったんだ!」

「私はドレス!ずっとこういうのが着たかったの!」

 大地が興奮で溢れ、夢がかなったような幸せそうな声に包まれる。


 毎年さまざまな諍いや不幸なことがあれど、この時だけは人々はそろって幸福一色になるのだった。

 

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