11.小鬼族※ダエワ視点(残酷描写有り)

 小鬼族の一生は短い。魔族の中でも底辺の魔力しかないからだ。頭も良くない。それでも魔界中に小鬼族は存在する。種族能力[繁殖]のおかげだ。同族との生殖では3ヶ月で子が生まれる。そして母体はどんな種族でも良い。母体の大きさによっては双子、三つ子が当たり前。減った分は増やす。小鬼達はその本能に従って常に獲物を探している。

 魔界の南西。人間界に近い場所に小さな集落があった。集落の端にある大きな建物。妊婦の集う場所、通称産場で1人の小鬼が母体の腹を裂いて産まれた。産声も無く周りをギラついた目で見回す。近くの母体の叫び声を聞き小鬼が集まった。

 

 「ハラをサいてデてきたのか。」

 「もったいない。またウませるつもりだったのに」

 「いや。もうゲンカイだった。クロウしてツカまえたニンゲンだったが、イチネンもメンドウをみるのはタイヘンだ」

 「おい、おマエ。それがおマエのエサだ。もったないからノコさずクえよ」


 赤子に向かって1人の小鬼が言い放ち集まった小鬼達が産場から出ていく。腹が減ったら近くのものを食べるのが本能だ。弱きものは生き残れない。

 赤子はすぐに喰いついた。


 あれからしばらくの時が流れた。小さな集落はもうない。集落のあった場所は村、いや街になっていた。


 「ダエワサマ。ジュンビがデキました」


 1人の小鬼が跪きながら言う。ダエワと呼ばれた小鬼は建物を出てそこに整列する兵を見て声をかけた。


 「北征を開始する。攻めに攻めよ!」


 ダエワ。腹を裂いて産まれし者。成長するに頭角を現し、あっという間に群れのリーダーになった。

 この集落は人間界に近い。近場の多くは元戦場であり、現戦場である。至る所に落ちている武器、防具を集めそれを兵に装備させ鍛えた。鍛えられた小鬼達は周りを攻めてさらに多くの物を奪い、増えに増えた。

 数の力で今まで逃げるだけだった種族にも勝利し、更に力を付ける。


 「そろそろ実験も大詰めだな。どこまでやれるか。強者との戦いだ。上手くやれよ、俺」


 北の山は狼牙族の縄張りだ。近づいた小鬼が帰ってきたことは無い。ダエワの顔には笑みがあった。

 先ほど出発した軍を率いる者も同じ顔をしていた。

 


 「ダエワさま!ダエワさまが!!」


 街に伝令が戻ってきた。伝令の報告によると狼牙族の里は落としたが、残党狩りの最中、将のダエワが戦死したらしい。

 やはりどんなに鍛えても元が元だと限界がある。ここでやりたいことは大体終わった。


 「俺も出る!」

 

 目指すは東、魔王城。街の総ての兵を率いて出立する。

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