第42話 紫都香のヤンデレ化

 俺は紫都香さんに促されてお風呂に行くことにした。



 ――――


「悠くんが浮気してるかもしれない……」


 明確には浮気とは言わないけど、他の女の子と仲良くしているかもしれない。


 わたしが帰って来た時、悠くんがスマホで誰かとメッセージのやり取りをしている風だった。


 わたしには今までと同様、甲斐甲斐しく世話をしてくれるけど、ずっとスマホを触っている気がした。


 わたしはダメだとは分かりつつも気になったスマホの中を見る為に悠くんをお風呂へ行くよう誘導した。

 悠くんは何も疑わずにお風呂に行ってくれたのですぐに行動に移ることが出来た。


「えっと、悠くんならスマホのパスワード、何にするのかな」


 試しに悠くんの誕生日を入れてみる。


 ……違っていたみたいだった。

 次にそうだったら嬉しいなという願望を込めて自分の誕生日を入れてみることにする。


「開いちゃった……。開いちゃった!!」


 スマホのロック画面が開きアプリが並ぶホーム画面が目の前に現れる。


「どこにあるんだろう……。あっここかな。うんここだ」


 アプリがどう仕分けられているのかを理解して遂にメッセージアプリを見つけた。


 メッセージアプリには会話した人との履歴が残るようになっており基本、最後にやり取りした人との履歴が上に来るようになっている。

 しかし、悠くんのスマホの画面で一番上に来ていたのは昼に会話したわたしとの履歴だった。


 よく見てみるとピンが刺されていた。


「ピン挿し……つまり悠くんはわたしを特別だと思ってる?! って今はそんなことじゃなくて……」


 わたしの下にある人は誰なのかと視線を下にズラす。


「星……? 悠くんが最近入ったバイトの先輩、とか?」


 わたしは履歴を見る。



『今日はありがとう。これからも一緒に頑張ろう!』

『ごめん、ごめんお風呂に入ってて返信遅れちゃった。今日の事は俺も出しゃばり過ぎたかなって思ってたから感謝してもらえてこちらこそありがたいです。はい! 頑張ろう』

 ~~~~~~~~

『うん! 相談事とかも無いのに急に二人でカフェに行きたいって言ってごめんね』

『今日、いっぱい話せて良かったよ』



「悠くん……。わたしにもちゃんと話して欲しかったなぁ」


 どういう関係なの?

 バイトの先輩じゃなくて大学の人?

 悠くんはわたしとこの人どっちの方が好きなの?

 わたし、だよね……。まずは悠くんとこの人の距離を遠ざけておかないと……。


「悠くん、ひどいことするけど、ごめんね」


『俺は今からお風呂に入ってくるから連絡してくんなよ』

『あんまり近づいて来るなよ。ただバイト仲間でサークルが同じだけなんだから』


 バイト仲間かサークルが同じなのか、それとも両方違うのか分からないけど適当に打ち込む。



『貴方は悠じゃないです! ボクはこんなところを好きになった訳じゃないですから』


 返って来た文章からこの子が悠くんのことをしっかり見ている事が分かってしまった。

 この子の悠くんのイメージが壊せなかったのならこの子の想いを一度踏みにじってしまったかもしれない。


 同じ人に恋している身だから、もし悠くんにこんな言い方をされては立ち直れない。


 この子の持つ悠くんへの想いを自分の想いと置き換えて考えると良くない事をしたと実感していると悠くんがお風呂から上がって来る。


「紫都香さん、どうしたんですか?」


「悠くん、ごめんなさい。この子に嫉妬しちゃってひどい事をしてしまいました」



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