第28話 2泊3日の修羅場 6
二口、三口と紫都香さんは美味しそうに焼き肉を食べながらお酒を飲む。
いつ酔うのだろうと隣の紫都香さんを見つつ俺も焼き肉を食べ進める。
正面にいる詩は『これもう出来てるかな? 取っても良いかな』とお肉の色が変わり、ひっくり返す度に聞いて来る。
その仕草がどうしても小さな子どもの様に見えてしまう。やはり今まで甘やかしすぎたせいで少し精神年齢が低くなってしまったのだろうか、離れて暮らした事によってそう感じる様になった。
有佐はサンチュと呼ばれる野菜にお肉を包み、口いっぱいに頬張って食べている。
お肉も徐々に減り、かなり少なくなった頃、紫都香さんのお酒も少なくなって来たのかアルミ缶を逆さにして飲んでいる。
詩も有佐もお腹いっぱいになったと言って食事を終える。俺と紫都香さんも最後にホットプレートに残っていたお肉と野菜を食べて片付けをした。
幸いにも紫都香さんは食事中に酔っぱらってしまうことは無かった。
食事も片付けも終えると順にお風呂に行くことにする。
「有佐はお兄ちゃんと入る」
「いや、私がお兄ちゃんと入る」
「いやいや、全員別々に入るんだぞ。昔もずっとそうだっただろ」
俺は実家に住んでいた時、この二人とお風呂に入っていた訳でも無いので全力で一緒にお風呂に入ることを拒否する。
「じゃあ、どの順番で入る?」
いつ酔っぱらうか分からない紫都香さんが未だ理性を保っているようでお風呂に行く順番を決めよう、ということになった。
色々話し合い、案を出し合った結果、紫都香さんの提案で年下から順に入るという入り方に決まった。有佐はそれに対して最初噛みついていたが詩がお風呂に入ったと同時に諦めが着いたのか何かを思いついたのか納得した。
「お兄ちゃんが誤って入って来ることももしかしたらあるかも……。それかお兄ちゃんが脱いでいる所に有佐がお風呂から出て来てって展開も……」
「……俺は間違えて入ったりしないからな」
俺が間違えて入って来る的な事がボソ声で聞こえて来たので反応する。ただ始めの部分しか聞き取れなかったので後半何を言っていたかは分からなかった。
詩もお風呂から上がり有佐も続いてお風呂に入っている中、俺と紫都香さんはソファに並んで座っていた。
「紫都香さんは俺の後で本当に良かったんですか? 前に入ってもいいんですよ」
「いいんだよ、悠くん。ちょっとやりたいことがあるから……」
お風呂から上がる前にやっておきたい事でもあるのかな、と俺が思っていると隣でまた飲み物を飲む音がした。
「紫都香さん。それさっき飲んでいたやつとは違うお酒、ですよね」
「うん! 片付けが終わってキッチンから戻ってくるときに冷蔵庫から取って来たの」
一度に口に入れる量からして話し合いの前に持って来ていたということは既に半分ほど減らしているだろうから俺は紫都香さんがもうすぐ完全に酔ってしまうと確信した。
詩も髪を乾かし終え、有佐も洗面所から出て来たので俺は洗面所に向かいお風呂に入った。
身体も洗い終わり浴槽に身体を沈めてお湯に浸かる。俺はリラックスする為に目を閉じた。しばらくして目の上に汗が垂れて来たのでそれを掌で拭った後に目を開けた。
その時だった。
ガラガラという音と共に紫都香さんの物と思われる姿態がお風呂の中に登場する。
「な、なんで入って来てるんですか!!」
「だって、許可を貰ったんだもん」
「誰の許可ですか!!」
つい大きい声で聞いてしまう。俺は許可してないんだけど……。
静まっていた俺の心はタオルで隠しながらもこちらに身体を向ける紫都香さんに乱されていた。なんで入って来るくせにタオルで隠すんだ、隠すのなら入ってこなくても……。
「有佐ちゃんと詩ちゃんに悠くんが二十分経っても出てこなかったらわたしも入っていいって聞いてダメって言われたの……」
「なら許可もらえてないじゃないですか」
「……でも、明日の夜は悠くんと一緒に入っても良いって言ったらあっさり許可してくれて」
二人も何許可してるんだよ……。
「お、俺もう上がりますから」
「まだ、一緒に入ってて……あと二分くらい」
俺、もう既に二十分近くお風呂に入ってるんだよな……。
それから紫都香さんが身体を洗い終えて浴槽に浸かって数分経つまで俺はお風呂に入り続けていた。
お風呂問題は一旦解決させた。次にどうやって寝るかという話になった。
この家には布団が二枚しかない。なので二人で一つの布団に入るという事になったのだが、話し合う、それだけならまだ良かった……。
「わたしは悠くんの隣で寝ます。これは決定事項です」
紫都香さんが完全に酔ってしまった。俺の腕を掴み早く添い寝しようと言ってくる。
「ちょ、ちょっと! 有佐も隣で寝たい」
逆の手を有佐が掴んで引っ張られている俺の動きを止める。詩は二人とは違い俺の身体に掴まって来る。
酔っている事によって暴走が止まらない紫都香さんに軍配が上がり俺と紫都香さんが同じ布団に寝ることになった。それでも諦めきれなかった有佐は自分と詩が寝る布団を俺と紫都香さんが寝ている布団に重ねるように合わせて、紫都香さとは違う方の俺の隣に寝た。
詩はと言うと有佐が寝ている布団は元から使う気はなかった様で俺の布団を潜り込んでお腹の上に乗って来た。
俺は両手と腹の上を占領されながら眠りに着いた。
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