seen6-管理人2

マンション内の掃除、目隠し用のツゲの木への水まき、不要投函物BOXの廃棄などを終える頃にはお昼になり、家から持ってきたお弁当を冷蔵庫から電子レンジに入れ2分。待っている間にペットボトルのお茶をコップに入れ、テーブルにセッティング。

温まったお弁当のおかずは昨日の晩御飯と同じ焼き魚と煮物だ。自分で作っているのでわくわくもない。まあいい。

さて、と、スマホを出しLINEを確認。ぬいぐるみの写真がアイコンになっている”あや”から2通の通知が来ていた。一つはスタンプで”おはよー”、もう一つは「今日1時にいってもいい?」

「いいよ。返事遅くなったけどこれそうかな?」

”だーい好き”のスタンプ。

既読

「よかった、じゃーあとでね」


急いで食べ終わった弁当箱の中をすすぎ、歯磨き、ついでに洗顔、あやの事を考えてニヤける顔をタオルでふき、あれこれ妄想しているとスマホがなった。

「ついたよ」

急いでエントランスに向かいオートロックを開けると、そこには満面の笑顔のあやが立っていた。


知り合ったのは出会い系サイトだったので、あとから変な男が出てくるのではとか高額のお金を脅しとられるのでは、など最初はかなり警戒していた。

やり取りを進めるうちに少しずつ信用していき、会ってみようとなり新宿のスタバで待ち合わせ。一時間ほど話してその日は別れたのだが、夜には「また行きましょうね」とうれしい文字が飛んできた。この時にはすでに恐怖の感情はなくなっていた。

私が結婚していることも妻の事もある程度は話しているので、それでもこの反応だと率直に嬉しい。


あやさん(この時はまださん付けだった)は21歳の大学生で、単身東京で暮らしているそうだ。実家からの仕送りとバイトで何とか生活していたが、例のウイルス騒動で人との接触がなくなり、寂しくなって出会い系サイト(あやはマッチングアプリといっているが)に登録してみたらしい。


昔から年上の人がタイプらしく、最近はある大御所の有名俳優さんが一押しだとか。

私が小さい頃からのアクションスターとは張り合えないので、身近なお兄さん的な立ち位置でやり取りしていたらたまたま気にいってもらえたようで、向こうから一度会いませんかと言ってきたのだ。


高校生のようなあまいコロンの香りをさせたあやに恋するまで、時間はかからなかった。休みの日は私が会えないので、平日の昼間に私の職場に来ることが多くなり、空室の202号室が私たちのデートスポットとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る