第32話 聖女去ったのち 勇者達SIDE
ロマンスクラブから宿に戻るとフリージアの書置きがあった。
『勇者パーティを抜けさせて頂きました。これからは聖女として『救世』の旅に出向きます。追わないで下さい』
そう言う内容だった。
「ミルカ…これ」
「やっぱりこうなったのね」
「こうなったのねって、ミルカはこうなるのが解っていたのか!」
「何となくだけど、此処の所様子が可笑しかったから…」
「なんでこんな事に…」
「リダは解らないの?」
ミルカに話を聞くまで、私は気がつかなかった。
かなり昔からフリージアが悩んでいたとは。
聖女とは4職の中でも一番、神聖視される存在。
それが勇者とはいえ、最後の一線の一歩手迄許した。
そして、そこから火がついて、まぁ私も言えないが『かなり淫ら』になってしまった…その事で悩んでいたらしい。
「そんなに悩む事なのか?」
「これは『聖女』だけの苦しみなんだと思う。勿論、私もリダも三職ではあるけど、精々が『模範的にしなさい』で済むけど、聖女は女神に直接仕える存在だよ、そして女神は処女神だからね。気にしない方が難しいと思う」
「確かにそうだな」
「最初は喜んでロマンスクラブで遊んでいたけど、途中から苦しかったのかも知れないよ…私達の破瓜とは桁違いに責任が重そうだもの」
確かにそうだ。
聖女である以上は『聖なる存在』でなければならない。
「それで『救世』の旅か…」
「ロマンスクラブの事もそうだけど、カイトとの事を考えたら仕方が無いよ」
勇者と聖女は結ばれる。
そう考えたら『勇者限定』なら恐らくは心の問題は起きなかった可能性もある。
だが、今のカイトは最低だ。
私ですらもう伴侶にしたいと思わない。
相手もそうだと思うが…
『仕方ない』そう割り切るしか無い。
それより怖いのは、恐らくフリージアは恐らく教皇様に『救世』の許可を取った筈だ。
だったら私達にも咎めがあるかも知れない。
ロマンスクラブに行けなくなるのが怖い。
「なぁ、ミルカ私達にも何か咎めがあるかな」
「多分、何かしらあるかも知れない…流石にこれはカイトに相談しないわけにはいかないよ」
「そうだな」
そう言えばカイトに随分、会っていない気がする。
今回は緊急だ…通信水晶を使うしか無いな。
◆◆◆
「フリージアがこのパーティを抜けただと! お前等何をやっているんだ!」
「カイト、まずは落ち着け…この手紙を読んでくれ」
いきなり俺の許可なくパーティを抜けるなんて何処まで迷惑かければ済むんだよ。
「解った」
「なんで急に『救世』なんだ?訳が解らねーよ!」
「それは、私が話すわ」
なんだ、それ?
事の発端は、俺との関係から始まり、此奴らも俺と同じ様な場所で『楽しんでいた』それを恥じて…そう言う事か?
「成程な!なら丁度良かったんじゃないか? リダとミルカは今の生活はどうだ!楽しんでいるんんだろう! もう薄々感づいているかも知れないが、俺もお前等と同じ様に楽しんでいる」
「そうだな、確かに楽しんでいる。だが、今後の旅が不安で仕方が無い」
「そうだよ。リヒトが居なくなって、今度はフリージア、カイトは不安じゃないの?」
「まぁ、不安はあるが、なった物は仕方が無いだろうが…ゆっくり考えれば良いんじゃないか? 考え方によっちゃ『恥じていた』なら今後煩く言ってくる可能性もある。居なくなって良かったんじゃないか?」
「確かにそうかもな」
「だけど、回復役が居ないと不味くない?」
「それは、俺も考えるから、お前らも何か考えて見ろよ…そうだな3日後位までここに滞在して考えれば良いんじゃねーか?」
「「そうだね」」
「それじゃぁな」
さて、サロンで酒でも飲みながら考えるか?
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