第22話 変わるレイラ
「リヒトくん! おはよう!」
え~と『くん?』一体どうしたと言うんだろう?
「え~とレイラ『くん』ってなぁに?」
次の街まで来て宿屋に泊まったんだけど、レイラの様子が可笑しい。
いや…いい意味で。
「年下の男の子は『くん』ってつけて呼んであげると喜ぶって聞いたのよ。それで試してみたんだけど…駄目?」
「駄目じゃないし、寧ろ嬉しい…」
「そう良かったぁ」
寝起きにいきなりこれは強烈すぎる。
うん?
「所で、一体いつからレイラは俺を見ていたの」
ここはベッドだ。
「え~と、大体3時間位かな? 目が覚めてからずうっと見ていただけだよ!」
「3時間? ずうっと?」
「うん、ずううっと今迄、いやぁ、リヒトくんって幾ら見ても飽きないね。結構、表情が変わるし幾ら見てても、楽しいよ」
3時間も俺の寝顔を眺めていたのか。
確かにこの間告白はされた。
『大好き』って言って貰えて嬉しかった。
だけど、何故此処迄好かれたのか解らない。
「そうかな? 俺なんか見てても、楽しくないだろう?」
「そんな事無いよ!何度も言うけど、リヒトくんは幾ら見てても飽きないよ」
面と向かって言われると照れる。
「そう、ありがとう」
「あはははっ、リヒトくん、顔が真っ赤!可愛いね」
ううっ、凄く嬉しいけど、こうも言われ続けると凄く照れる。
「一体レイラどうしたんだ…その」
「私ね、もう決めたの! 年上だからとかおばさんだからと言う、言い訳はもうやめる事にしたのよ!色々考えて自分の気持ちに素直になる事に決めたわ」
「素直になる事に?」
「そうよ!こうも好きだって気持ちを、ぶつけられていたらもう仕方ないじゃない?私が28歳でリヒトくんが15歳、どう考えても親子位年が離れているのに好きなんでしょう? 親子とか家族とかじゃなくて恋人として」
「そうだよ。俺は1人の女性としてレイラが好きだ」
「それなら、もう言い訳はやめて素直に受け入れようと思ったのよ。周りは関係ない。これはリヒトくんと私の問題だわ」
◆◆◆
【回想】
狩に行くのはリヒトだけ。
私は奴隷なのに、何故かお小遣いを貰って自由にさせて貰っているわ。
しかも金貨3枚も渡されて、どうしろって言うのよ。
今迄、遊んだ事が無いから使い道が解らないわ。
果物を持った女性から声を掛けられたの。
「今日は何時もの子は一緒じゃ無いのかい?どうだいお土産にリンゴでも如何?」
「いや…あれはその、子供じゃ無くて」
私は何を話しているのかな。
果物売りのおばさんに。
「あはははっ羨ましいじゃないか? 実の子供だって糞ババア呼ばわりされる年齢なのに『恋人』だなんて。羨ましい限りだね。若いツバメを捕まえて羨ましいかぎりだ!」
羨ましい…私が?
「羨ましいですか…」
「そうだよ! その歳で女扱いして貰えるんだ、女として最高に幸せじゃないか! 惚気ならまた聞いてやるから…ほらリンゴ5個買っていきな」
「はぁ、頂きます」
気がついたらリンゴを買わされていたけど、まぁ良いわ。
他に何かやる事も無いし、夕方までリヒトは帰って来ない。
仕方ないから、久々にギルドに併設された酒場にきたのよ。
尤も私は食べる方でお酒は飲まない。
肉料理を頼んでガッついていたけど…リヒトの料理の方が遥かに美味しいわね。
「なぁ、ちょっと此処良いかな?」
沢山席が他に空いているのにわざわざ私の所に?
なにか用なのかな。
「別に構わないけど、どうして?」
「いや、私はミランダって言うんだけどさぁ、アンタら凄く仲良さそうだからさぁ…情報でその『本当の親子』じゃないんだろう? なにか親子円満の秘訣でもあるのかと思って」
「うちは親子じゃなくて『恋人』扱いを私がされているだけだけど?」
「マジ? あんたどう考えても私と変わらない歳だよね」
「28歳…」
「やっぱりそうだ。私なんか旦那からも女として見られていないし、息子も冒険者やっているけど、一緒に行動なんてしてくれないんだ…それが恋人ねぇ…はぁ、もしかして童顔なだけで結構な齢なのかな」
「リヒトは15歳だけど?」
「15歳? どうしたら28歳の女が15歳の少年口説ける訳? コツがあったら教えて」
コツも何も、奴隷として買われて、そのままなんだけど…
「いや、コツと言われても、困るよ。何もしていないから…」
「はぁ~羨ましいね。こんなチャンスは2度とないから大切にしてあげるんだよ」
「そうだね…ありがとう」
今迄も自分の境遇が凄い…そう思っていたけど。
他の口から言われると凄く恵まれているのが解るわね。
確かに30歳近ければ、親子であってもウザがられている光景を見たことがあるし、夫婦であっても手すら繋いで無い。
まして普通は『恋愛』相手なんかに考えるわけが無いわ。
冒険者や騎士の中には歳とって婚姻相手が居ない女性が『お金で美少年の奴隷』を購入する。そんな話も聞いた事もある。
それが『本当に愛して貰えているし』買われたのは私だわ。
凄く恵まれている。
『好き』とか『大好き』だけじゃ申し訳ないよね。
本当に大切にしてあげなくちゃ。
こんなおばさんでも『好き』だっていったのはリヒトだし。
リヒトは堂々と私を『どこでも好き』だというんだから…
うん、もう照れるのはやめよう。
堂々と好意を示してあげる。
多分喜んでくれる筈。
それで良い筈だよね…リヒト…
◆◆◆
「そうだよ、俺とレイラの問題だよ」
「そうだよね!だから私はもう恥ずかしいとか照れるのは辞めようと思うの。リヒトくんは気にしないし、人前でも恋人として振舞って欲しそうだから全力でそうする事にしたのよ」
「ありがとう、嬉しいよ」
「リヒトくん、私に火をつけたんだから、知らないわよ?」
俺が望んだ事だから、喜ぶ事はあっても後悔は無いな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます