第44話「幼子の短き冒険①」

ある日の朝―――


「ん?残さず食べた?野菜も?」

「えぇ、普通は野菜嫌いの子供が多いんですが・・・」


料理を任せていたエリデリアが合成獣の食事の事での報告をしに来た。


「一つも残さず?」

「えぇ、野菜をふんだんに使った料理をお出ししました。」


そして、女の子の合成獣の名前が決まった。


「エリン、偉いですよ。全部食べれたじゃないですか」

「まーっ、まーっ!」


キャッキャッと笑いながらナルと戯れている合成獣のエリンは楽しそうだった。


「まぅまー?」

「そーだな~、お昼までまだ先だからパパと遊ぼうか」


僕もノリにノってエリンと遊ぶ事にした。


「パーパー?」

「ん?あぁ、コレ?僕の魔力を制御する為の指輪だよ」


エリンは物珍しそうに見つめてくる。


それなら・・・


「セス!」

「呼んだー?」


セスを読んだらエリンの為の遊び場で遊具の点検をしていた。


「飲み込まない程度の大きい輪っかって今作れるか?」

「ん~、軽めのボールで良いんじゃない?」


セスはそう言って瞬時に軟木材のボールを作り上げた。


「物作りリクエストのお陰で鍛冶以外にも色々と器用に出来ちゃったんだよね」

「凄いな?!」

「キャッキャッ」


どうやら木材ボールをエリンは気に入ったようだ。


「あれって顔に当たったりしたら痛いだろ?」

「大丈夫だよ~?」


セスはそう言って顔に何度もあたる。

特殊な機能を取り付けてたのかと思い、覗くと――――


「あの服、プレゼント?」

「そーそー、ここぞとばかりに用意したんだ」

「流石です。ゴールド」


ボールが跳ね返り、エリンに当たる・・・直前にそのまま勢いを殺して地面にストンと落ちた。


「落下速度低下、そして上昇か」

「そっ、後は所持者やその家族、そして製作者の私以外は24時間停止状態の付与」


割と殺意も高めじゃんか


「そうだ、歯はどうだ?」

「しっかりと生えてますね」


確認を終えて――――


「歯磨きをしてお昼を過ごそうか」

「あーい!」


歯磨きを済ませ、お昼ご飯までに少し寝かせる事にした。


「リーダー?・・・あれ?」

「しーっ」


書記官がスタヴを呼びに来たが、義理の親子のお昼寝姿を微笑ましく見るナルが制した。


「後は私が決裁をします。隣の部屋に置いといて下さい」

「判りました。失礼しました」


書記官は静かにその部屋から出て行った。


「・・・貴方の下で働き始めてから色々とお世話になりまくりです。偶には私に任せて下さい。リーダー」

「~~~~~」

「スピー。スピー」


寝ているクランリーダーのスタヴによって彼女は命を救われた事が一度だけある。


「あの時の貴方のお陰で今もこうして・・・」


そっと彼の額に彼女はキスをする。


数分後――――


「ん・・・くぁ~・・・良く寝た・・・ん?」

「ねむむ~・・・んま?」


誰かが僕とエリンに厚手の毛布を掛けさせてくれたようだ。


「あ~、そっか。ソファーで寝てたのか」

「パァパ」


エリンが僕の頬をペチペチして来た。


「ん・・・あぁ、涎垂らしてたか」

「むー?」


お昼寝時間から起きて丁度お昼ご飯になっている。


「(本当はお昼ご飯食べて何時間か経った後にお昼寝すればいいんだけどねぇ~)」

「マァマ!」

「こちらに」


仕事を終えたらしいナルが顔を出してきた。


「そのまま寝ていらしたので」

「あぁそっか、有難う。助かるよ」


久しぶりに午後に活動するメンバーとお昼を食べる事にした。


「―――と言う訳で、遅れながらランクアップの試験に参加する事になりまして」

「あ~、そう言えば付近にある修練所で受けるんだっけか?頑張りな」


僕が一人一人に話を聞いている最中、隣では―――


「んまんまんまんま」

「美味しいですか?良い食べ振りですね」

「幼子相手にメロメロですやん・・・」


そう、エリンはナルに食べさせて貰っていた。


「パァパ!」

「ん?食べ終えたか!偉いぞ~」


そうだ・・・


「ナル、今日は少し仕事を休めて気分転換しようか」

「エッ・・・・・」


暫くして―――――


「キャッキャッ」

「おー、すげぇな」

「幼い子供が扱える魔力量ではない気がするんですが」


壁門の外側に出て魔物の多い森に出かけた。

数分も経たない内にエリンが魔物を蹂躙し、そこらに居た筈の強いとされる魔物達は怯えながら道を開けていた。


「そうだ、じっちゃんの所に行くか」

「行きましょうか」


なんかナルが諦め顔になってるんだけど・・・なんで?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る