第22話「亡国の後処理」

ギルド内部にて・・・・


「スマン、手伝って貰って」

「大丈夫ですよ。資料作成や精査や決定までの流れも仕事の内ですから」


嘗て軍事国家だった滅びの国、亡国グリムゾル。

そのグリムゾルが内部分裂はしなかったものの、内部陥落する程に争いが起きていた。


丁度、僕や仲間達がグリムゾルの王を倒しに行っている間に起きた出来事だった。


「しっかしまぁ~、お前等が戻ってきてもまだ国の復興の目途が先とはな」

「それだけあの国は自ら破滅したんですよ。お陰様で出ていく人も多く居ると聞いていますし、それに――――」


傍に置いてあった手紙を見てみる。


「あのグリムゾルが新しく生まれ変わる為に今いる数で工事の遅れが出てるみたいですから」

「そら大変だな。請け負って正解だ」


そう、あの時のその国の軍人や暗殺部隊などの面々が手に持っている役職を捨てて新しい職に変えて復興を急いでいる。


そんな旨の手紙が今、手元にある。


「で、あいつ等は予定だとどれ位掛かる事を?」

「こっちに戻ってくるのは見積もって一か月後、遅くて一年だとか」


グリムゾルでの一件以降、救出された元冒険者の女は彼女の師範であるゼクターは師弟関係の修復を第一として責任もって事情聴取をナルの代わりにやって貰っている。


「あ、アナタ。やっと片付いたわ」

「手伝って貰ってスマン!先に戻って昼飯の準備を頼む!」

「ギルマスも先に戻られては?後は自分と秘書さんとでやっときますよ?」


物見遊山ギルドのギルドマスター専属秘書ミリュート

「私とスタヴ様とで終わらせます。お二人で休憩をどうぞ」


ギルマス夫婦に仕事を任せられ、二人を見送ってから書類の処理を再開した。


「確か、いつもこんな量ではないんですよね?」

「えぇ、もしかしたらどこかしら異常事態が起きてるのかも・・・・」


流星メンバー結成当時から随分とギルドに秘書として存在しているミリュートさんは僕の歳の10程上の希少なレア種族、セントエルフである。


様々なエルフ種と人間らとは、昔から今もなお強い結束力を持ち――――友好関係を築いている。


「そうだな・・・・アイツもリハビリ訓練としてナヴァと一緒に受けて貰うか」

「そう言えば・・・ナヴァンス様やゴールド様やエリデリア様以外にお弟子様はまだ居ないのですね?」


書類の精査まで終わり―――――


「そーだね~、僕にとっての弟子はアイツの弟だからな」

「あ~、ライン様ですか」


因みに彼女は訳があって庶民として下町に暮らしていた事があって自分や他の後輩達にも敬語が抜けない人だ。


僕の仲間のナルも彼女を崇拝する程である


受付嬢ラミネリア

「ミリュートさーん!お時間良いですかー?」


「あら、また確認しないといけないものかしら?」


彼女がそう言うと、受付嬢のラミネリアが首を横に振る。


「なんか、このギルド管轄である冒険者訓練所の所有する大森林に強力な魔物に出くわしたそうです」

「・・・もしかして、僕らが処理したこれらにも似たようなのが混じってる?」


僕がそう言って見せると――――頷き


「これらも大体他の国でも似た事があります!」

「おかしいですね・・・、国や街や村から近い場所は比較的に弱い魔物しかいない筈・・・・」


まさか・・・


「君はナルに直ぐに周辺調査をするよう呼んでくれ」

「わっ、わかりました!」


ラミネリアが去った後―――


「ミリュートさん、気付いた?」

「・・・えぇ、やはり何かが起き始めましたね」


明らかな異常事態、本来の魔物の生態変化。


考えられるのはただ一つ――――


「ナルの報告次第で決まりだね」

「ですね」


そんな話をして約数分後――――

瞬時にナルが現れた。


「調査終了しました」

「お疲れ。それで?どうだった?」


ナルの報告書を受け取り、確認した。


やっぱりだ。


「ビンゴ。ナル、ウチで受け持つよ」

「畏まりました。ミリュート先輩。国へ報告をお願いします」

「わかりました。直ぐに伺いましょう」


丁度ギルドの受付嬢が通りかかった。


ギルドの受付嬢

「如何為さいましたか?」


「君、丁度良かった。この報告書を夫妻に渡しておいて。後、『緊急案件』って伝えておいて」


受付嬢は了承し、そのまま封筒を渡したら直ぐに動いてくれた。


「あっ、クランリーダー」

「ナヴァ、丁度いい。上位のメンバーを出来るだけ多く集めてくれ」


僕のその言葉にナヴァンスは察し、直ぐに動いた。


「誰かゴールドに武器と防具の大量生産を受注しておいて!生産ギルドに多めのポーションを卸すように伝言を!料金のツケは私が代わりに受け持ちます!」

「わかりました!!!」


数分後の別の場所では――――


「何?アイツから俺に資料を?」

「はい!後、スタヴ様から【緊急案件】だと」

「「・・・!?」」


ギルドの職員のその一言でギリアムら夫妻は直ぐに席を立った。


「俺らの代わりにスタヴが執務をしてたんだったな?」

「大体は彼の鶴の一声で既に動いているわね。王城に向かってるのは?」

「多分ミリュート秘書がまだ居たので、代わりに動いているかと」


夫妻は少し考え―――


「俺は出来るだけ遠方に居る連中に連絡を取る。リアは直ぐに魔王の居城周辺で住んでいるジャスティマ様に声をかけてくれ」

「わかったわ!あなたも手伝って頂戴」

「わかりました!」


ギルドの外にて―――――


「一度、とある犯罪者によるスタンピード事件が発動した。ヤツ1人で扱えるような魔物の数ではない事は確かだ。だが――――今回は違う!あと数日経てばマジもんの魔物の大群がこの国に押し寄せてくる!!!」

「おいおい・・・マジか」

「確か、他の冒険者が確認したのだとあの時の10倍は迫ってるらしいぞ?」


ギルドマスターのギリアムは咳ばらいをし


「スタヴが事前に気付いたお陰で直ぐに行動が移せる時間は多くある。それに請け負って貰っていたにも拘らずその依頼を後手にして緊急の案件を請け負ってくれる連中にも感謝する!!!お前等、自然が厄災の種を撒いた自然を相手に――――全てを守り切るぞ!!!」

「「「「「ウオオオオオオォォォォォォォ~ッ!!!!」」」」」

「やってやるぜ!!!」

「しっかりと守ってやるよ!!!」


この件が国にも伝わり――――


「何?あと数日経つと自然が生み出した魔物の大群が押し寄せてくる?」

「この国と幾つかの領村も狙われる可能性があります」


エンハウンス国王は少し考え


「村や国の護りは冒険者が?」

「我々も加わって欲しいとの事です。他の国へも緊急案件として手紙を出しますか?」


エンハウンス国王は頷き


「早馬で近くの国に依頼を出せ!全ての権力をこの場で発動する!!!」

「「「「「はっ!!!!」」」」」


こうして、各国にもこの話が伝わり、直ぐに各国の冒険者ギルドや様々な職業のギルドが動き始めた。


そして、ついに運命の日が近づいた―――――――。

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