第21話「謁見~緊張が迸る対談~」

謁見の間――――


男爵

「あの者達が・・・?」


子爵

「あぁ、噂では国内外一最恐と言われていたパーティーだそうだ」


どうやら、重要な会議を国跨ぎで行ってたらしい。


我が国の国王が咳払いして話し始めた。


「よくぞ戻って来た。して、大体は手紙で把握している。だが・・・君達からの口頭でも聞きたい」

「わかりました。陛下」


取り敢えず、ギルドの元メンバーの件でのあった事を話す。


「――――と言う事で、無事に彼女を奪還致しました」

「うむ、ご苦労である」


周囲がざわつき始める。


伯爵

「彼らが言っていたのは・・・あの亡国のか」


辺境伯

「確か、かの国の王は色欲の愚王と呼ばれていたな」


流石、貴族間での情報伝達は早い。


「今、本人は体調がまだ軽快ではないので暫くは」

「そうか、是非とも体が健やかな状態になったらいつでも騎士団への聴取をしておくよう代わりに伝えて欲しい。頼めるか?」

「問題ありません。近々、ご本人に伝えておきます」


僕の代わりにナルが言い、頭を下げる。


「さて、我々の報告は終わり!後は皆さんの自由行動ですよ」

「ほっ・・・」


僕や流星メンバーが登城した事で空気が重たかった。

これを機に報告を終えて少し場の空気を軽くさせる為に僕は動いた。


「皆の者、我々の会合は終わった。後は各自の判断で動いて構わん」

「か、解散宣言・・・!」


そして、何故か朝食も済ませてない事も話したのか、王族御用達のお店を紹介して貰い、そのまま城を出た。


「ここが?」

「あぁ、懐かしいよな~スタヴ」

「あぁ」


着いた場所は―――昼夜問わずいつでも営業している飲食店。

王家御用達の召し抱えの料理人達もこのお店から卒業した立派な料理人が多い。


「ゼクターとは国王の青年期以来か」

「だな、あの時のお高目な料理は結構美味しい記憶がある」

「気になりますね」

「だね~、さっさと入ろっ」


入った先は何とも言えない程の豪華絢爛な建造物の内部。

装飾や所々でお腹が好く程の匂いが室内を充満していた。


「―――っと、そうだった。すいませーん」

「はーい、只今!」


対応してくれた店員さんは――――僕らの顔を見るなり姿勢を正した。


「お席は既に確保してあります!先輩!あの方々がお見えになりました!!!案内を!!」

「ちょっ、大袈裟――――」

「おおおおお客様ァ!お待たせして申し訳ありません!既に綺麗になっておりますのでどうぞこちらへ!!!」


先程の対応をしていた店員よりガチガチに緊張していた。


「メニューはこちらになります!お決まりの際はお声掛けを御願い致します」

「アッハイ」


彼らはそのお店で食事を楽しむのであった。


一方で――――


「ふぅ・・・何とか乗り切ったな」

「えぇ、陛下。もう心臓が止まる思いでしたよ」


国王夫妻はそう言って座っている椅子の背凭れに寄り掛かる


「エンハウンス殿」

「うむ、他の国の王族らにもしっかりと説明せねばな」


国王、エンハウンス・オルトロンは自身の経験と出来事を他の国々の王族に対して話す事にした。


「――――と言う事があってな。私もその話を聞いて驚愕したよ」


南国の王カラマンティス

「確かあの国は我々からの対応を無視して全面戦争の準備をしていたんでしたな?」


「えぇ、そうなんですよ。カラマンティス殿」


その国が、彼ら流星パーティーの手によって堕とされたのである。


「陛下、その事で新しい情報が」

「ふむ、話してみよ」


騎士の一人が頷きそれぞれの王族にとある資料を渡す。


「冒険者の一人が調査をした所――――彼らの手出しの後・・・いえ、途中の方で貴族に対しての下剋上がありまして」

「ふむ、彼らの影響で革命を起こしたと言う事か」

「ほう、ではあの国は今は・・・・」


騎士の一人が頷き


「処刑された貴族の殆どは金利を貪り、庶民らの暮らしの困窮の根本的な原因元だそうで。今では新たな王族や貴族らがその国で行われているそうです」

「確か、まだ立派な国だった時は軍事国家だのなんだの言われてたな」


そんな強固な国が内部から滅んでいったのである。


「して、彼らの事を知らぬ他の王族の者達にも一つ注意して頂きたい」


熱帯雨林の国の王テルテロッサ

「・・・何か守ってないと駄目な理由でもあるのか」


国王エンハウンスは頷き


「彼らは見ての通り低姿勢で話す事もあり謙虚な姿勢を取ってはいる。だが、それは外見だけだ」

「と言うと?」


彼は目を細め


「その彼らの態度に気を許してしまうと――――痛い目を見る。実際に砂丘の国のは王子らが酷い目にあったそうだな?」

「うむ、息子らが調子にのりおって・・・羽目を外しすぎて命の危機に瀕したことがあってな」

「確か、私が外交で不在の時ね?」


彼ら王族らは何か気付き


「確か、彼らの中のリーダーは星帝と言う職を持っているんだったな?」

「あぁ、アレの副次効果により――――相手の運命を勝手に強制的に決めてしまう恐ろしい職なのだよ」


故にエンハウンスらは有能な鑑定士のお陰で命拾いしたと言う事である。


「勝手に強制的に決める・・・・恐ろしいですな」


商業国家小国の王ティターノ

「・・・おい、それってもしかしてよ~、その強制的に決まった運命は一度味わっていなきゃ永遠なのか?」


エンハウンス国王は黙って頷き、周囲の他の国の王族達は唾を飲み込む。


「我々があの場で行動していたら・・・・」

「恐ろしい事が起きてしまうな」


あの時動かずして見守ると言う判断は過ちでなくて良かったと安堵する彼ら王族達であった。


「お前達、彼らを丁重に送って差し上げてくれ」

「ハッ!」


こうして、彼らの対談は無事に――――何事もなく終わった。

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