第5話「魔導闘技祭り~亡き友との思い出~」

「ま~つりだ!祭りだァ~!!!」


とある日、俺や俺のメンバーが所属するクランハウスの管理をしているギルドがある王国にて、年に一度の白熱する祭りが始まった。


「おっ、おい!あの三人が出るってマジか?!」

「それに覇王ジャスティマも出るらしいぞ!!!」


ジャスティマの爺さんは若者に人気で覇王とまで呼ばれている。

実際に本人は覇王龍だけども・・・


「スタヴ様」

「あぁ、君はいつも通りクランハウスの仕事を一段落したら席で見ててくれ」


数年に一度しか開催されない祭りな為、爺さん世代は自分の孫や息子に祭りの楽しさを伝道した事もあってこうして盛り上がりが熱い。


「ギリアムさんは後から参戦だそうですよ」

「まじか~、それじゃ・・・二人共。暴れて来な!」


当然の如く僕以外の見習いの団員二人や自分のメンバー二人はすぐさま祭りに乱入して行った。

因みに見習い団員のラインは用事があるそうで、不参加だそうだ。


「当然の如く拳で語り合うケンカ祭りだからな・・・アッツ!?」

「流石に私は部屋の片隅で涼んでおくわ」


ギルドマスター夫妻は暑さの中で仕事に追われていた。

取り敢えず自分も含めて六人分の参加証明書を発行し―――


「じゃ、参加してきま~す」

「手加減してやれよ~!」


当然、ギルドマスター夫妻の話を受けても――――


「はいはい、怪我人はこちらに。あっ、騎士団さん出番です。あそこで使用禁止の毒を使ってる人が」

「了解!お前ら!とっ捕まえるぞ!」

「「「「「了解!」」」」」


暑苦しい民衆の集まりの中で汗まみれな騎士団が今回もせっせこ働く。


「ほいほーい、耐久性のある服に着替えな~」

「おっ、あざっす!」


街中の喧嘩慣れした男女が入り乱れ、そこかしこに拳の語り合いと言う名のケンカが始まる。


「そう言えば・・・アナタ」

「ん?何だ?」


因みに僕は顔を出した後にギルドで書類処理の手伝いをしている。


「今回はライン君は参加しないのね?」

「あ~リアは知らねぇか。スタヴ」

「OK。僕が説明しますよ、ティージリアさん」


剣士としてあの時ギルドのクランメンバー募集に来ていた彼ラインは【兄貴】と慕う立派な剣士が居たそうだ。


「彼の話によれば、一時期、どんな冒険者より誠実で勇敢なSランクを誇る大ベテランの冒険者でソロ活動をしていたと。そう言う冒険者に心当たりはありますよね?」

「・・・!ゼクターの事?!」


ゼクター・ハイマン、ソロ活動を主にしていて戦略を練るのが得意とされている冒険者の一人。


「あの日以降のゼクターの死に関する何か重要なヤツを見つけたとかでハイマン家は事実上、貴族名簿から消えたんだったな?」

「えぇ、ゼクターは・・・彼は僕にとって唯一信頼の置ける相棒でしたから」


僕はそう言って近くの椅子に座る。


「今日、この日は彼にとって約束の日でした。ですが・・・彼は帰って

「そこら辺は知ってるわ。その時、彼が受けていた依頼は黒衣龍の討伐だったわね?」

「あぁ、その魔物の素材で出来る防具一式は最高の一品とも言われていたヤツだ。その素材を狩って欲しいって事で受理したんだったな」


何故、彼が帰って来なかったのか・・・その理由は単純で―――

裏では魔族の陰謀が隠されていたからである。


「当時の魔王倒した切っ掛けだったな~そう言えば」

「そう言えば、思い出したわ。今日だったわね。の命日は」


その祭り当日に亡くなった事から【ゼクター事件】として有名になってた。


「その時の彼の手持ちのを自分が回収しまわったって事ですね」

「俺らも祭りが終わったら墓参りすっか」

「・・・そうね」


祭りはまた白熱し、色んな冒険者が挑戦している。

それと同時に誰かがドアをノックする。


『ギルドマスター、私です。今回の祭りで不正者が多く出て来たそうで対応に遅れが出ています』

「分かった!リアと一緒に対応する!スタヴ、手伝えるか?」

「勿論」


今回の祭りでルールを知らない人は少なからず居るが・・・冒険者に騙されて使用した人やルールを無視して使用した人などが居た事も発覚している。


「そんじゃ、ここの連中は国王の御前で裁判を。後の者は宰相との相談のうえで謹慎処分か数日程度の免許停止処分の判断を仰いで貰って来てくれ」

「わかりました」

「スマン、あと一つ」


僕は職員を呼び止めて冒険者の一人が映っている証明書を見せる。


「この人、確かハイゼン共和国出身だったか?」

「はい、本人もそう仰ってました」

「それがどうしたんだ?」


俺はその証明書を置き


「多分アイツと同等の強さを持つんじゃないかと思うんだが。共和国ハイゼンは他種族を総括する双翼族が居るし、それにこの国の出身者は殆どが強者ツワモノ剣闘技場コロッセウムが有名な場所だと聞く」

「・・・明日、この男に面会したい。裁判の後に国王に掛け合ってくれ」

「畏まりました!」


祭りもそろそろ――――と思った矢先。

別のギルド職員が急いで来ていた。


「大変です!ギルドマスター!」

「どっ、どうした?!」


どうやら魔物の大群が今いるこの国に進行しているらしい。


「それぞれの魔物の多くは生息地がバラバラですっ!」

「そうなのか?!」


全員で一斉にその魔物と生息地を調べ始めた。

言っていた通り、どの魔物も上級から下級まで全て生息地がバラバラだった。


「南国の魔物は若干乾燥しているこの国外周辺だと余り活動しづらいんじゃないかしら?」

「・・・いえ、ティージリアさん。魔物の体質や性質、それと属性なんかも含めてよく考えて下さい。この沼地が生息地である魔物は泥を扱う魔法を使います。南国の魔物と言えば乾燥地帯に行くとどうなるか――――」

「―――成程な」


ギルドマスターのギリアムさんは気付いたようだ。


「何か分かったの?」

「沼地のは周囲が泥になる。んで、本来の寒冷地の魔物は乾燥地帯に行けば周囲は水浸しになる。それじゃあ~南国の魔物つったら?」


ティージリアさんも気付いた。


「湿気ね!?」

「えぇ。ティージリアさんはそう言った魔物達の対策に多くの魔道具を製作できますか?」


取り敢えず、対属性対策用装備品をセスに任せるか・・・


「君、あの魔女の居る森に行って魔獣達に力を貸して貰う様伝えてくれ。そこの君はセスの所に行って武具制作を依頼してくれ。費用全額は僕が出す」

「「分かりました!」」


二人の職員は急いで行動し始めた。


一方で――――


「あら、どうしたの?」

「シュルルルルっ(あのお方の居る国に向けて魔物達の大群が来ると)」

「グルゥ、グガァウ(先程、ギルドの受付の人がそう言って来ましたよ)」

「ブルルラァッ?(ジャスティマ様に応戦依頼をしますか?)」


森林の魔女フォッシは少し考え


「キミは彼の所に行って援軍を依頼してくれる?」

「シュルルルッ!(分かりました!)」


「キミはそのままジャスティマに頼んでくれるかしら?」

「ブルァッ!(分かりました!)」


「キミは先に行って侵攻を少しでもいいから抑えて頂戴。冒険者達の手伝いをお願いね」

「バウアッ!(了解しました!)」


その森林代表の三体の魔獣達はそれぞれの魔獣達を引き連れて行動を始めた。


魔王の居る所では―――


「何?白大蛇が?」

「援軍依頼を出している模様です!我々は如何為さいますか?!」


魔物の軍勢の進軍を聞いた魔王はおもむろに立ち上がり


「新生四天王達に出撃の許可を出す!彼が大群の群れの所に着くまでフォッシの従者と冒険者達の共闘をする様に伝えておけ!」

「畏まりました!」


そして、場面は戻り――――


「急げ!セスター様から装備品を受け取って直ぐに動け!」

「祭りの怪我で動けない奴は住民の避難を優先するんだ!」


ギルドからの報告を受けた国は直ぐに騎士団を動かした。


「団長!スタヴ殿が準備が出来たようです!」

「出来るだけあの者の負担を減らせ!冒険者達と共闘で魔物達の侵攻を食い止めるぞ!!!」

「「「「「オォ~ッ!!!」」」」」


魔物の軍勢との対決が―――始まった。

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