第13話 (おしっこの観点から考える)人間とは……
真琴(なんなんだ、なんなんだこれはっ……!)
ネットに溢れるおもらし画像やコンテンツの数々。そのどれもが瑞々しく、華やかに映る。
真琴(こんなの見たら頭がおかしくなるではないか……! よく人は平気でこんなもの生み出せるものだ!)
この年になってもまだ受け入れがたい。『恥ずかしい』がまず真っ先に思い浮かび、それ以上の感覚は出てこない。
真琴「おしっこなどただの排泄物にすぎぬではないか……なのに情けないことに、紳士淑女かまわず『飲んでみたい』だの『わたしもこういう趣味あります』だのおかしいだろ……! わたしはどうすればいいんだっ……!」
頭を冷やしたくなって、わたしは部屋を飛び出して海のほうに出た。
真琴「あーっ! なんて人間はきょうも愚かなんだーっ!」
叫びたくなる心の声がもう口をついて出てきてしまっていた。それくらいにわたしは頭がおかしくなっている。
真琴「もっと人間らしくあれ! そうすればあしたはなんて素敵な毎日なんだろうなぁーっ!」
吐きたいことが吐けてよかった。幾分かマシになったこの感情を背に帰ることにした。
真琴「もうネットはしばらくいいだろう……そんなことより本! 研鑽を積まねばっ!」
山積みになっている本をかき分けかき分けして、ようやく自分の居場所を知る。
真琴「はぁ……やっぱりわたしはこうなのだな」
諦めにも似た表情。どう見ても普通じゃない感覚。わたしは人とかなり違っている。
真琴「わかっているよ……これがわたしだ」
かすれそうな声でそう言う。みなと同じことをすればきっとわかることもあるのだろうけど。
真琴「そうだ、一回やってみよう」
うまれてこのかたおもらしの『お』の字すらまるで見えなかったこのわたしが、実はずっとやってみたかったこと。
真琴「しかしやはり抵抗感が……過去何度か挑戦して、そのたびに失敗しているからなぁ……」
ここでいう失敗とはもちろん、言い換えればトイレに成功している、ということ。けっして間違ってはいない。だけどもしかすると間違っているかもしれない。わからない。だけどやってみるしかない。
真琴「今度もまたやらかしてしまうのだろうか……正しすぎるわたしとしての行動がまた……」
そんなことが起こらないよう、今回はかなり入念に準備してある。たとえばこのローター。出ないと悟ったときに強制的に出せるよう刺激するものだ。
真琴「これで出なければわたしは精密機械となんら変わりのないなんら変哲のない朴念仁だ……とにかくこれはなんとしても成功しなければ……っ」
すでにぶるっときているから大丈夫な気はするが油断は禁物。どんなことがあっても結局耐えきり、わたしは絶対にトイレにたどり着いてしまう。
真琴「わたしだって……おもらししてみたい!」
きっとできる。そう信じて取り組む今回の我慢企画。ルールは簡単。おしっこを漏らすだけ。ただそれだけ。それだけのことが、なぜだろうかこんなにも難しい。
真琴「よしっ、まずはお水を4Lっと……」
正直飲みすぎではと思うだろうが、わたしはこれくらいしないと効かない。
真琴「ぷはぁーっ! このお水美味しい……」
誰かにこの企画を知られたらどう思われるだろう。きっと笑われるかもしれない。それでも気にしちゃいられない。前に進まなくては。
真琴「手足の縛りかた……これでいいのだろうか?」
思ったより上出来で自分ながら感心してしまう。さて、ここからは自分との勝負。精神を研ぎ澄ませ、おもらしに集中する。
真琴「ふん……っ! やはり出ない……」
便秘かと思うほど出ない。普通なら大きいほうでこれが起こるはずなのに……。
真琴「我慢しようとするから出ないことは百も承知なんだがな……次はこうしてみよう」
どこで知ったか赤ちゃんプレイ。かなり恥ずかしいが、やってみる価値はあるかもしれない。
真琴「ままぁ〜、おしっこ、もうれちゃいそう……えっと、出ちゃうの段階だとダメか……」
あれこれ考えてしまってこれもダメ。となれば最後の手段。縛られながら操作するのは大変だがスイッチをオンにしてみる。
かちっ。
真琴「おぉ……これいい……このままゴールまでいってほしいものだ……」
股に一本ある先っぽがつんと立っているのが手に取るようにわかり、好感触であることがうかがえる。これ、いけるかも……。
真琴「そうそう、この感じ……まるでみんなが感じていたあのもじもじ感……くるっ、きちゃう!」
ずっとイキっぱなしのこの状態なら、いつか漏らしてもおかしくはない。だけど……。
真琴「だめだ、トイレに行きたい……」
ついトイレに行く本能に負けてしまい、気づいたらトイレの中にいた。
真琴「あぁだめだめだめっ……ここはいまトイレじゃなかった……」
あくまでもトイレ以外の場所をトイレにしたい。そのために一時的な処置ではあるけど鍵をかけることにした。
真琴「これでいいかな……はて、どうしたものか……」
トイレに行くと出せる。だけどそれでは意味がない。それだと漏らす人の気持ちなんて一生理解できない。仕方なく手を自由にする代わりにこれまで以上に出すことに力を注ぐことにした。
真琴「このっ、早く出てくれないか……パンパンで苦しくなってきたんだよ……わかるだろう……」
ピンクの突起も有効にいじらせてもらって、それでもまだ出てこない。トイレには行きたくなるし、いつまで経っても終わりはしない。
真琴「こうなったら、この金属の棒を差して、それでもダメならまた考え直せばいい……」
どこになんて言わせないでほしい。わたしはぐっとそれを差して素早く抜くことにした。
真琴「出ない……」
雫っぽいものは出たけど、それを出したととらえるにはあまりにもお粗末だった。
真琴「もっとこう、ばーっと出るイメージだったのだけど……少しパンツが濡れたからそれでも良しにしたいところではある、でもみながするようなおもらしには到底及ばない……いったいどうすれば……」
そのときふと、わたしの前に女神が見えた気がした。
真琴「そうか、やさしく撫でるだけでいいのだ」
出そうなところをやさしくさする。これだけで出るはず。
真琴「下から上に……やはり恥ずかしいぞ……」
それでも諦めずに、誰かがするようにそーっとそーっと撫でてみる。触れるか触れないかくらいの、ほんのこそばゆいところで。それにつられるかのように、おしっこは素直にわたしの指のところまで降りてくる。
真琴「よし、もうすぐだっ」
そう思った瞬間、やはりまだ恥ずかしがっているのかすぐに引っ込んでしまった。
真琴「んんん~っ! あと少しだったのに……」
ここで諦めたくない。わたしはすぐ再開した。
真琴「そうそう、この調子……あぁ、またダメか……何回やり直せば……」
もうお腹がちぎれそうなくらいの膀胱の量をこれから服の上に出そうとしている。
真琴「早く、したい……このままだとお腹が破裂して、救急車呼ばないといけなくなるから……」
懸命なリードの先に、光はあるだろうか。
真琴「お願い、早く出て……ここもずっと刺激してるのに、出ないなんておかしいよぉっ……」
感情ぐちゃぐちゃで泣きたくなってしまった。駄々をこねた子どもでもここまで泣かないだろう。
真琴「あはぁっ……まだ出ない……ほんとにおがしくなっちゃ、よ……うぅぅ〜〜っ!」
どれだけ泣き叫ぼうともその時はこない。そう思いかけていた頃だった。
真琴「あっ……」
しょろろ……熱いものがほんの少しだけ身体から抜けていくのがわかった気がした。
真琴「これって……」
念願のおしっこだろうか。匂いで確かめる。
真琴「よくわからない……やはり失敗なのか?」
たしかに出た感触はある。だけどそれが待ちに待ちわびていたものかどうかは知らない。
真琴「もう一度触れてみよう……今度はちゃんとできますように……」
間違いなかった。二回目のしょろろ。今度はかなり勢いがあった。
真琴「おおっ! これがトイレじゃないところで出した感覚……底しれない背徳感がある……やってはいけないけど、やってもいいような……」
そんな不思議な感覚だった。それから時間はかかったものの、三回目がやってきた。
ちぃぃぃぃ……じゅっ、じゅわわっ。
真琴「これこれ! もっと上下にいじればちゃんと出せるはず……これは楽しい……」
出せる喜びに打ち震えていたところだった。もうどんな格好してるのか想像したくもない。
真琴「あら、あら、あら……また出なくなってしまったぞ……どうしてだこれ……」
わたしはここで、つい刺激が強くなってしまったことがわたしをおもらしに導かないひとつの原因ではないかと類推した。その考えは正しかった。
真琴「もう、何もしなくてもおしっこが勝手に……はぁ、これでよかったんだ……」
出る勢いにかけたものの、ゆっくり着実におしっこおもらしに"成功"していた。
真琴「まだまだ出るよ……それっ!」
腹圧はあまり強めないようにしながら出すとちょうどいいことに気がついてからは出すのが楽しくなっていった。要するに調整が大事だった。
真琴「やったね……ここまでほんと長かったよ」
わたしもやっとちゃんとした女の子になれたような気がした。これまでの人生ってほんと何だったんだってくらい。思えば『お手洗いにいっときなさい』ってずっと言われなかった人生だった。
真琴「あなたなら我慢できるわ、って思われて過ごしてきたんだもん……そんなことないよってずっと言いたかった……」
普通におもらしできる人生がよかった。我慢しっぱなしだって、そっちのほうがつらいんだもん。
真琴「お腹はずっとしくしく言ってて、それに誰も気づいてくれなかった……」
いまこうして自分で開放してみて、ようやくお腹の底から笑うことができてる。
真琴「嬉しい、な……きょうはお赤飯炊こうかな」
これまでの話しかたからも開放された気がして、それも嬉しい。お腹をずっと撫でて、出し切ってない分があったのでそれもゆっくり出していく。
真琴「出したお水で炊けるかな……って、そんなこと考えたらダメ、だよね」
いくら無駄だからってそれはない。だけどこの時自分が何を考えてるかわからないほど幸せな気持ちに満たされていた。
真琴「トイレ、やっと行けるね……お疲れさま」
自分をねぎらうことばをかけてトイレにこもる。やっぱりこのときがいちばん出た。
真琴「逆トイレのリハビリまだまだだなぁ……またみんなと会うときには直したい……」
それからというものの、トイレに行かないで出す特訓を日々欠かすことはなかった。
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