第3話 自分たちの道を行く、そんな曲

 玲香「弾きたい曲があるって?」


 それはわたしが提案したことだった。


 未咲「うんっ、これなんだけどね……」


 ご丁寧に楽譜を持ってきてくれた。わたしはもし音源が渡されてもやるけど。


 玲香「『Going our own way!! ※』……これがやりたいのね」(※所感(三月二十三日(またまた作曲)より)

 未咲「そうそう、玲香ちゃん聴いたことない? アイドルソングなんだけど……」

 玲香「ないわね……あいにくそちらは疎いのよ」

 未咲「いろいろ知ってそうなのに……ここはわたしのほうが上かな?」

 玲香「調子のいいこと言わないの……わたしも悪い気はするけど……」

 未咲「もぅ、玲香ちゃんってば相変わらずなんだから……」

 玲香「いいからやるわよ。それと未咲、さっきからあんた虫に好かれてるわね」

 未咲「えっ……?! ひゃっ?!」


 おでこにいたから言ってあげたけど、驚いてしまって最初は練習にならなかった。


 玲香「そんなに驚くとは思わなかったわ……」

 未咲「年甲斐もなく騒いでごめんなさい……」

 玲香「いいわ、緊張もとれたんじゃない?」

 未咲「そうだね、やろっか」


 転調があるところ以外はそこまで難しい曲じゃなかったので、楽しくできた。


 未咲「できた~」

 玲香「お粗末だったわね」

 未咲「玲香ちゃんの教え方がよかったんだよ~、これでばっちりだねっ」

 玲香「わたしは添え物くらいに思ってたけど、そこまで言ってくれて嬉しいわ」


 未咲の笑顔が見られるだけでもやった甲斐があったように思う。これでいい。


 未咲「春泉ちゃんのところまで届いてるかな……」

 玲香「だといいわね」


 なんとなく上を見ていた。きっとそうだといい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る