無料ガチャ039回目:4Sガールズ

 宝条院家のパーティーが終わった翌日、ショウタと繋がりを持つためにやってきたクリス、シャル、テレサ、マリーの4人は、ホテルの一室に集まっていた。

 ショウタと実際に会って話をするまでは、彼女達は皆ライバル関係であり、蹴落とし合う運命にあると誰もが予想していた。しかし、蓋を開けてみればショウタの婚約者達は皆和気あいあいとしており、誰もが同列の存在として互いを尊重し認め合っていたのだ。そしてショウタを奪い合うことなく、分け合っている姿を目撃し、すっかり毒気を抜かれてしまったのだった。

 また、突然やってきた4人に対しても彼女達は非常に友好的かつ好意的であり、その姿や姿勢には感動を覚えた者すらいた。彼女達が今まで見て来た一般的なSランクの冒険者とその番いという生き物は、そのほとんどが周囲から持て囃され、自尊心が膨れ上がった怪物達だ。一部まともな人間はいるが、絶対数としてはそう多くはない。それでも実力はしっかり秀でているので、必要な時が来れば力を貸してもらう為にも邪険にできないのが世知辛いところではあった。そんな今まで出会ってきた怪物たちと、ショウタ一行とは何もかもが違いすぎていた。


「聞けば、あの奥手のエルキネスが彼女を迎え入れた事もショウタ様が発破をかけたからと言うではないですか。それだけでも、わたくし達がよく知るSランクの男達とは別種の存在ですわね」

「はい。お話に聞いていた以上に、とても素晴らしい方でしたわ」

「そうね。実力も高く、高潔な人格者だなんて……。あんないい男、他にいないわ。あたしとしては完全にブラマダッタの所有権で負けちゃったし、本気で手放すつもりでいたんだけど……。まさか本当に返してくれるなんてね」

「えへへ、勇者様はカッコ良かったですね~。あの方の奥さんたちも、皆さん良い人ばかりでしたし、特にアキさんとは意気投合しちゃいました~」

「まだ結婚はしてないみたいよ?」

「あれ~、そうでしたっけ~?」


 4人はショウタガールズ達と話をする中で、もう何人か気の合う友人を見つけて仲良くなっていた。

 マリーはショウタの想像通りアキとお酒談義で仲良くなり、テレサは同じ神職者としてイリーナと。シャルは刀が気になったのか前衛職のカスミとハヅキと。最後にクリスはお嬢様繋がりかマキとアヤネといった感じで、上手くばらけていた。


「ああ、アキとはお酒の話で盛り上がってたわね。てかそれ何杯目よ」

「んひ、まだ1本目を開けたばかりですよ~」

「ほんと、すぐ酔えちゃうのね。そういえば昨日の別れ際、アキと内緒話をしてたみたいだったけど、あれは何だったのさ」

「ふへ~、あれはですね……」


 マリーは一度深呼吸をして酒気を抜き、シラフに戻った。


「相変わらず、急に醒めるのね」

「いつ見ても不可思議な光景ですわね」

「ふふ」

「ええと……。そうですね、もう皆さまは敵でもライバルでもなく、並び立つ仲間となった訳ですし、お伝えしても良いかもしれませんね」

「ええ。貴女の身の上話、聞かせて頂戴」

「おほん、実はですね……。この度日本へ訪問するにあたり、我が祖国はあろうことか、私が持つ口座へのアクセスを禁じるだけに留まらず、私のお小遣いを制限してきたのです! それが本当に厳しくて、私がお酒を買えないように最低限のお金しか持たせてくれなかったのです」

「うわぁ……」

「貴女、政府にどれだけ嫌われているの……?」


 シャルとクリスは憐れみの眼でマリーを見た。


「それをアキ様にお話したら、連絡先を交換してくださった上、欲しいお酒を連絡してくれればホテルに手配するとまで仰って頂いたのです! それが本当に嬉しくて、つい涙が出てしまいました。あの人は神です」

「聖女が簡単に人を神様扱いしないの。でも良かったじゃない」

「では、今持っているお酒も?」

「はい! アキ様に送っていただきました! お酒は私にとって命の水なんです。祖国の方々はそれが分かっていません……!」

「マリーさん、東京で合流した時は、今にも死にそうな顔をしていましたものね」


 マリーとテレサは『聖魔法』と『聖印』というスキルに加え、聖女と騎士というイメージ的な繋がりから、昔から交流があった。それは国の行事だけでなく、互いのダンジョンの間引きに協力しあったりと、行動を共にする機会が多かったのだ。

 そんな2人が仲良くなるのは、最早必然だった。


「国からそんなに禁止されるなんて、あなた一体何しでかしたのよ」

「えっと、それはそのぉ~」


 マリーはモゴモゴしていると、テレサが笑って答える。。


「ふふ。去年の暮れ頃、ナンパしてきた有力氏族の方を袖にしたんです。マリーとしては軽く払いのけたつもりでも、実力差があればどうなるかは想像つきますよね」

「ああ……」

「その手の馬鹿はどこにでもいますのね。わたくしなんて、その手の輩を何度凍えさせたかわかりませんわ」

「ロシアの上流階級では、パーティ会場に生きた氷像が現れるって噂は本当だったのね。最近は聞かなかったけれど」

「馬鹿の相手は疲れますから、最近は辞退しておりましたの。ただ、それでも参加するように声が掛って来るものですから、いい加減わたくしに相応しい殿方はいないかとパートナーを探していたのですわ。そんな折に、エルキネスの誘いがありましたので、興味半分で乗ったのですわ」

「あたしも似たような感じかな。最初は半信半疑だったけど、今は来て正解だと思っているわ」

「ええ、まったくね」


 シャルとクリスは微笑みあう。


「あ、ごめんマリー。続きを教えてくれる?」

「はい~。あの時は、一応手加減したんですけど、上は私が悪いの一点張りで納得してくれなくて……。前々から酒には注意しろと警告は受けてたんですけど、ついにお酒の禁止を言い渡されました」

「レベルの高い酔っぱらいは存在するだけで危険だけど、マリーは悪酔いしないし暴れないから問題ないと思うわ。そんなの、ナンパしてきた馬鹿の自己責任でしょうに」

「うう。シャーロットさん、ありがとうございます」

「もう、泣かないでよ。……それにしても、今日はエルキネスが間に立って紹介してくれて助かったわ。アマチさんは喋ってみれば話しやすい良い人だったけど、エルキネスが信頼してくれてるって前情報があることで、あの人の警戒度も和らいだと思うもの」

「そうですわね。エルキネスには、今度何かの形でお礼をしないといけませんわね」

「本当ですね。彼がいなければ、間違いなくマリーは挨拶をし損ねていたでしょう」

「うっ……。だって、本当に久しぶりのお酒だったもん……」


 フランスとバチカンの両国では、難易度が高くスタンピードが間近なダンジョンに対して、共同で大規模な掃討作戦を行う事があり、テレサとマリーはそれに毎回参加していた。そんな中で、武者修行も兼ねて広範囲の殲滅技を持つエスが手伝いに来ることがあり、彼とはその時からの友人でもあった。

 シャルもそういった掃討作戦に参加する機会があったほか、そもそも国が近い事からエスと友好関係を結ぶのは難しくなかった。そしてクリスは、同じ属性使いというくくりから最難関ダンジョンの掃討作戦などでエスと顔合わせする機会が多くあり、フレンドリーかつ、自分に対して性的な目で見ないという点は大きかった。


「ゴクゴク……ぷはっ、美味しい~! それでぇ、みんなはこれからどうするの~?」

「ああもう、また飲み始めちゃったわ」

「わたくしはしばらく留まろうかと思いますわ。大規模掃討作戦もこの間済ませたばかりですし、我が国のダンジョンは今のところ、溢れる心配はありませんもの」

「あたしも残るかな。せっかく出会えたのに、このまま帰ったら印象が薄くなっちゃうだろうし」

「私は使徒様……いえ、アマチ様に待機を命じられましたので、お呼び出しがかかるまでは観光でもしていようかと思います」

「わたしも、テレサと一緒に遊ぶ~。でへへ」

「ええ。ゆっくりと羽を伸ばしましょうね、マリー」

「あ、それあたしも参加していいかい? このご時世、ダンジョン関係なく外国に行く機会なんて滅多にないしさ」

「あら。でしたらわたくしも行きたいですわ。ジャパニーズカルチャーには興味がありましたの」

「もちろんです。それと聞いたところによると、カスミ様達はこれから半月ほどお暇らしいですから、都合が合えば案内をお願いしてみるのも良いかもしれませんわね」

「さんせ~」


 そうしてテレサは、早速イリーナに連絡をして、遊びの約束を取り付けるのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

これにて第十八章終了です!

次章もお楽しみに!


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