第十八章 遠征明けの休暇
ガチャ608回目:新居確認
記者会見が終わり、俺達はそのまま新居へと帰ってきていた。いや、帰るって言うのも語弊があるけどな。初めて見るし。
アメリカに飛ぶ前に、彼女達が俺と今後のメンバーの為にと用意してくれた大豪邸。第一エリアの支部長達にも協力してもらって、都市部なのにこんな広い土地を使わせてもらえるなんてな。Sランクさまさまだ。
いや、日本初のホルダー特権かな? それとも世界初の楔システムのオーナーだから?
……まあ思惑はどうあれ、俺はこれからも今まで通りに、ダンジョンに潜って行くだけだ。これが提供された理由なんて、なんでもいいか。
「部屋は事前の通達通りの割り振りでお願いします」
「以前よりもお部屋が広くなりましたし、もーっと可愛く仕立て上げますわ! ここなら、わたくしの部屋にとやかく言ってくる人はいませんもの!」
アヤネのテンションが爆発している。前の家の時何度かお邪魔したけど、本当にメルヘンでファンシーな可愛らしい部屋だったよな。あれがもっとパワーアップするのか……。ちょっと楽しみだな。
「んー。私の場合、物置になるのかもねー」
アキは漫画とかの私物は人並みにあるけど、あとの趣味はお酒とゲームくらいのもので、そんなに家具や調度品にお金をかけてるイメージはない。前の家に居るときも基本的に居間か、たまにマキの部屋。あとは俺の部屋のどれかに居て、別々に寝る時くらいしか部屋に居なかったんじゃないか?
「でも姉さん、それだとショウタさんを自室に招き入れるイベントも一生起きないよ?」
「むむっ。それは嫌かも……」
「私は、夢だった大型の温室が庭の一角に用意されているみたいだから、お部屋は今まで通り小型のプランターで十分かな。ちょっと数を増やしてみるかもしれないけれど」
マキの部屋では色とりどりの花が咲き誇り、常に彼女と彼女の部屋からはフローラルな香りが漂っていた。アメリカにいる間、花と4体のゴーレム達の面倒を義母さんがしてくれていたみたいだけど、あの子達も今回の引っ越しに合わせて移動して来たらしい。さっきから視界の端にちらちらと映っている。
『『『『!』』』』
4体のゴーレムは俺に気付くと、ぐっとサムズアップをした。元気にやってるよってことかな?
その後はそれぞれの飼い主の下に走って行き、久しぶりの再会に喜びを分かち合っているようだ。
しかし、この子達はいつまでもコアレベル1のスキル無しじゃ可哀想だよな。コアのレベルを上げると俺の消費魔力が増加するネックがあるから慎重にしなきゃだけど、スキルくらいはあげても良いかもしれない。
あの頃と比べて、4種の操作スキルは文字通り腐るほどあるからな。
そうしてアイラを除いた彼女達が、事前に割り振られたであろう部屋へと入って行き、各々が荷解きを開始する。
『キュ!?』
『!』
『キュキュ』
アヤネの部屋からは、モル君の驚くような声が聞こえて来た。恐らく、部屋の中で第二ペットのモル君が、第一ペットのリヴァちゃんと邂逅したのだろう。きっと、可愛らしく挨拶を交わしているのかもしれないな。
そんな中、俺は広々としたリビングのソファに腰掛け、背後に立ちながらも端末で何か操作をし続けるアイラに振り向いた。
「なあ、俺、部屋割りなんて何も聞いてないんだけど」
「はい、申しておりませんでしたので」
「だよね」
俺の扱いがこうなのはいつものことだけど。
「部屋割りも何も、ご主人様の部屋は結局、大部屋の寝室になるかと思いまして、伝えておりませんでした。ご主人様は私物もほとんどありませんし……。ですが、前の家に置いてあった、ウェポンラックとアーマースタンドは既に運び込んでおります」
「それはありがとう。……エスとシルヴィはどうするんだ?」
同じくリビングのソファに座るカップルに確認を取る。俺の家の新居という事もあってか、シルヴィは若干緊張しているようだが。
「ああ、アイラ姉さんから一緒に住むかどうか確認されたんだけどね。日本に永住する事が決まっている訳でもないし、保留中さ。ただ、迷惑じゃなければこれからも兄さんの冒険にはついて行きたいと思ってるよ」
「そりゃ心強いな。ならやっぱり、一緒に住んだ方が良くない?」
「ありがとう、そう言ってくれると嬉しいよ。だけど、いくらそっちの方が便利ではあっても、ここは兄さんの為に建てられた専用のハーレム御殿……いや、大奥かな? そんな場所に居候になるのは、流石に肩身が狭いよ」
ハーレム御殿に大奥て。エスは時代劇とか好き好んでみるらしいし、発想が偏ってるな。……否定も出来んけど。
「だから、アイラ姉さんに以前紹介してもらった、別の住居を借りようと思う。そこは以前に兄さんが使っていた拠点らしいじゃないか」
「ああ、あそこか。アイラも引き払ったりしなかったんだな」
「はい。何かと便利な場所ですので」
「エスが良いなら良いんだが、アメリカから見るとそんなに広くもないかもだぞ。狭かったらすまんな」
「ははっ、ありがとう。でもシルヴィとの初めての二人暮らしをするには、十分な広さだと思うよ」
まあ、それもそうか。
「ん。お待たせショウタ。私の部屋、見に来ない?」
そうして真っ先に荷解きが終わったミスティが声をかけて来た。お邪魔してみると、部屋のほとんどが衣装ケースに占有されており、ベッドすら置いてなかった。
「ベッドは?」
「ん。ショウタの部屋で寝るから必要ない」
「えぇ……」
いや、俺の部屋だって使えない日が来るかもしれないじゃん。
「ん。もしもの時はリビングのソファで寝る」
「はぁ……。アイラ」
「はい。こんなこともあろうかと」
アイラは部屋の内装を弄り、十分なスペースを確保すると、どこで用意したのか、ベッドを取り出し設置した。
「ってこれ、前の家の俺のベッドじゃん」
「!!」
しかも、キングサイズベッドに変わる前に使ってた奴だ。どこに行ったのかと思ったが、アイラがしまってたのか。
そしてミスティはベッドにダイブしゴロゴロと転がり始めた。
「……ん。ショウタの匂いがする。気に入った」
そのままミスティが動かなくなってしまったので、仕方なく他の子達の部屋を順番に覗いて行き、そして最後には自室という名の戦場予定地へとやって来た。
前回の家では、扉のサイズ的にも部屋の大きさ的にも、どう考えてもキングサイズのベッドは異質だったが、ここなら特に違和感もないくらいに広々としていた。
むしろ、何人と戦うことを想定しているのか、キングベッドが連結されていた。しかも複数。言い出しっぺはきっとアイラだろうけど、流石の俺もどん引きである。
まだ見れてない部屋は無数にあるし、きっとそれらはカスミ達の為に用意された場所なのだろう。探検はまた今度にして、休むとしようか。日本に帰って来たばかりだから、時差ボケも直さないとな。
「エス、今日はもう遅いし、シルヴィと一緒に泊まってけ」
「ああ、ありがとう兄さん。お言葉に甘えさせてもらうよ」
「お兄さんありがとう!」
さーて、明日から何しようかなー。
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