ガチャ487回目:ソロとチーム

 ミスティがマップをツンツンしながら聞いて来た。


「ん。この反応ないのがそうなの?」

「たぶんな。見たことないから誰かもわからん」

「ふむ……。兄さん、この能力だけど、写真を見ることでも効果あるのかい?」

「写真? ……いや、試したことはないな」


 流石に優秀なうちの彼女達も、俺が誰と出会って誰と話したかは把握していたとしても、誰を視界に入れたかまでは把握しきれていないだろうから、試してすらいなかった。


「ん。他所のダンジョン所属の誰かが、ショウタの存在と強さを知って唾をつけに来たのかもしれない」

「普通にこのダンジョンを攻略しに来たとか、例の告知を受けてバナナを取りに来たとかじゃなく?」

「通知の知らせを受けて来たにしては、来るのが速すぎる。それに、グリーンバナナは確かに高価ではあるが、強いオーラ持ちが自分から狩りに来ることはほとんどないよ。買えばいいだけだからね。そして攻略目的の来訪であったなら、誰もが進み方を把握している現状、一階層に留まり続ける意味もない。普通なら10分と経たずに次の階層へ行ってるはずだ。間違いなく、彼らの目的は兄さんだろう」

「そうなのか」


 エスの言い方からして、ここの階層は方法さえ分かっていれば移動するのは楽ちんみたいだな。いまだに俺はソレを見つけれてないけど。


「ところで兄さん。そのオーラってどのくらいなんだい?」

「いや、俺も覚えたばかりだし違いがよく分からんな。まあうちの彼女達よりは低いかなーって感じ」

「なるほど。となると……」


 エスはブツブツと何かを呟きながら手持ちの端末をいじり始めたが、これは暫くかかりそうだな。一旦、外野のことは忘れてこのまま進めるか。


「それじゃあミスティ、狩っていいぞ」

「ん!」


 そうしてミスティは目を輝かせながら銃をぶっ放して敵を煙に変えていく。一見見境なく乱射しているような雰囲気を感じさせるが、彼女の攻撃は全て相手の眉間に吸い込まれて行っていた。

 昨日模擬戦をしたことで分かったことだが、ミスティは狙った場所を絶対に外さない正確無比な命中力を持っている。だからこそ、受けるこちらとしてもミスティの攻撃は直線的で、わかりやすかったので防御もやりやすかったのだが。

 遠距離使いが攻撃のラインを予測されるって結構致命的ではあるんだけど、あれは模擬戦だったからわざとやっていたんだろうか? それとも今までそれで苦労なく倒せてこれたから、フェイントというか、駆け引きが苦手なのか……?


「ミスティ、ちょっと良いか?」

「ん。なに?」


 気になったので、1つ目の森を殲滅したタイミングで聞いてみる事にした。


「ミスティって敵の急所を的確に撃ち抜けるよな。昨日の模擬戦でも、人体の致命傷になりうる箇所や死角を積極的に突いて来てたし、こういうのって百発百中だったりする?」

「ん。武器を手にしてすぐの頃はできなかったけど、スキルを獲得してからは段々慣れて来て、今は動いてる相手でもほとんど外さない」

「その例外の相手は、高レベルの相手か?」

「ん。高レベルで、理性的なモンスターは逆になかなか当たらない。でも1度でも当たれば畳みかけられるから、そんなに問題じゃない」

「うん、なるほどな。問題しかないな」

「ん?」


 ミスティはこてんと首を傾げた。


「理性的な相手ってのは、大体は人型だな?」

「ん。そう」

「……俺の模擬戦の時も、急所や死角は狙っていたが、それ以外の部位やは狙わなかったよな。それはなぜだ? 今まで通り戦ってただけで、特に必要ないと思ってたからか?」

「ん? ……そう、かも?」


 弱い相手はワンパンだろうし、強い相手は初弾なんかを避けることはできても、最終的に一度でも当たれば超高威力の弾丸によって体力と機動力を奪われ、あとは蜂の巣にされるだけ。

 なまじ、『幻想ファンタズマ』武器のケルベロスと、万能スキルの『銃器マスタリーLvEX』のおかげで、攻撃力だけはずば抜けてあるからな。火力によるごり押しで今まで切り抜けてこれたんだろう。

 まあミスティには、模擬戦で見せた武技スキルみたいに、高威力かつ相手を追尾する技もある訳だが……。あれも祈りの時間があったからな。あの動作はパフォーマンスではなく、実際に溜めの時間が必要なんだろう。となると、彼女の攻撃が強敵に対して有用なのは武技スキルだけという話になる訳で、そうしたら通常攻撃はむしろ邪魔にすらなりかねない。

 当たるまで撃てば問題なかったのは今までの話。これからは、俺達が共に行動するのだ。ミスティだけが前線で戦うのではなく、俺やエンキが前に出た状態で戦う。敵の回避行動だけでなく、前線に立つ俺達の動きもある程度予想しながら戦う必要がある訳だ。

 ミスティの攻撃は一発一発が馬鹿に出来ない威力があるし、それがたまたま外装が剥がれた瞬間の味方に当たってしまえば目も当てられない。

 狙った場所は外さない集中力と命中率はあれど、相手の行動を念頭に置かない射撃ほどフレンドリーファイアを引き起こす要因になりかねないのだ。

 厳しい言い方をしてしまうと、いつまでもソロ気分でいられては困るわけだ。


 俺はその懸念を全て彼女に話し、思ってることを伝えた。


「今の戦い方を続けるようだと、ミスティは雑魚狩り要員になるだろうな」

「え。困る。やだ」


 ミスティが捨てられたかのようにしがみついてきた。


「うん。でもそれは今のままだったらの話だ。そしてこういう時に頼りになるのがアイラ先生だ」

「お任せください。早速ですが、ミスティ様には射撃に必須な、『後の先』を覚えて頂きましょうか」

「ん。頑張る。教えてアイラ」


 そうしてアイラのスパルタ教室が始まり、ミスティはそれに必死について行く。時折外装を纏ったエンキやエンリルも加わり、ミスティはアイラから課せられた課題をこなしつつグリーンエテモンキーを討伐して行く。

 そして100匹討伐はゆっくりと進み、最後には煙が密集し、レアモンスターが現れた。


『ヴキキー!』


*****

名前:グリーンマントヒヒ

レベル:80

腕力:1000

器用:750

頑丈:900

俊敏:700

魔力:300

知力:300

運:なし


ブーストスキル】剛力Ⅲ、怪力Ⅲ、鉄壁Ⅲ、城壁Ⅲ

パッシブスキル】身体強化Lv2、精力増強Lv2

アーツスキル】木登りⅢ、鼓舞

スペシャルスキル】威圧

★【エクススキル】フェロモン、弁天尾


装備:なし

ドロップ:緑色に輝く香油

魔石:大

*****


「……あれ? 強化体じゃ、ない?」


 登場したのは普通のレアモンスターという展開に混乱するが、このまま放っておいても害しかない。なのでそのままミスティに、修行の一環として倒してもらったが……。


【レベルアップ】

【レベルが18から106に上昇しました】


 レアⅡは出現せず、即座に煙は霧散して消えていってしまった。

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