ガチャ484回目:エネルギー変換

「さて、新たに出現したであろう緑のモンスターも気にはなるが、まずはアイテムの確認だな。アイラ、さっきのアイテム出して」

「畏まりました」


『ガシャン』


 アイラが取り出したのは先程のガチャで出現した『魔石変換器』。高さ1メートルほどはある、蓋の無い寸胴鍋みたいな、メタリックな入れ物だった。容器の下部にはいくつかのボタンやパネル、コインの嵌め込み穴のようなものがあり、なんというか携帯コンロと鍋が一体化したような感じだった。

 水筒の時もカプセルから出て良い大きさじゃないなと思ったが、今回はソレの比じゃないよなぁ。


「『真鑑定』『真理の眼』」


 名称:魔石変換器

 品格:≪伝説≫レジェンダリー

 種類:アーティファクト

 説明:ダンジョン産アイテムを取り込む事で魔素エネルギーを抽出し、魔石に再変換できる専用アイテム。初期能力では小魔石のみ生成可能だが、専用コインをスロットに納める事で、対応した魔石が生成可能になる。高位の魔石ほど内包される魔素の量・純度が高くなる為、必要エネルギーは相対的に多くなる。


「なるほど?」


 とりあえず専用スロットと思われるコインの嵌め込み穴に、ガチャから一緒に出てきたアイテムを1枚ずつ嵌め込んでいく。すると、コインそのものがスイッチ代わりとなるようで、必要となるエネルギー値が表示された。


「えーっと……小魔石が1千。中魔石が5千。大魔石が8万。特大魔石が60万。極大魔石が400万。魔煌石:中が1500万エネルギーが必要、と」


 実際の内包魔素はこの数値通りではなくて、説明にもある様に純度を高めるために余剰に確保して、凝縮するために使っていそうだな。

 にしても、変換器ねぇ……。


「特段魔石が欲しいってわけじゃないからなぁ。便利なアイテムではあるんだろうけど、俺としてはどちらかというと……。うん、専用のゴミ箱だな」

「ぷふっ、ゴミ箱……」

「ん。これをゴミ箱と言ってのけるショウタ、感性が独特」

「不要なアイテムを魔石に還元してくれるんだろう? なら十分に使える代物じゃないかな? 不要な物って、結構扱いに困るものだよ」

「そうですね。例えば先ほどのハズレバナナ……。4本セットのロシアンバナナですが、これの処分には困っていたところです。今後もご主人様の力で無数のドロップが集まるでしょうし、全てを協会に卸すのも難しいでしょう。それに、鞄は無限にアイテムが詰め込めるわけではありませんし。有用に処分できる手段があることは良いことです」

「まあ、アイラがそう言うならそうかもな。実際、前回の『ハートダンジョン』では素材が溢れそうになってたみたいだし、鞄も1つカスミ達に貸してるしな。とりあえず、ロシアンバナナの1房をまとめて入れてみるか」


 見た目が寸胴鍋のような『魔石変換器』にバナナを放り込むと、ドロリと融解するかのように溶けて消えていった。割とホラーな光景だが、生き物が入っちゃったらどうなるんだろうか?

 一応ダンジョン産のアイテムと明記はされてるけど、ダンジョン製のものなら何でも取り込みそうな雰囲気もあるよな……。


「エンキ達は間違っても入っちゃだめだぞ」

『ゴゴ~』

『ポ!』

『~~』

『プルル』


 彼らに注意するよう促していると、バナナはきちんとエネルギーに還元されたのか、『魔石変換器』の少し上に吸収量が。下部のパネルには現在の内包エネルギー値が表示された。


【エネルギー値 +3200】

【エネルギー残量:3200】


「おお? 結構あるな」

「1本800と思えば、小魔石より若干少ないくらいですが……。それでも捨てられることを思えばこの還元は大きいですね」

「では全部入れてしまいましょう。私達は食べないですし、腐らせちゃうだけですから」

「そうねー。というかハズレじゃない方のレッドバナナも放り込んじゃってもいいかもね。だってそんなに美味しくないみたいだし、今なら美味しいって噂の緑のバナナが取り放題なんでしょ?」

「それなら旦那様、黄色のバナナも入れてしまいますか?」

「あー、ちょっと待って。とりあえず視るだけ視るから」


 名称:イエローバナナ

 品格:≪通常≫ノーマル

 種類:食材

 説明:皮が黄色の品種のバナナ。甘くて美味しい。


 ……うん、普通だ。

 特筆すべきことは何も書かれてない。しかも、エスの言う通りこっちにはハズレが存在しないらしく、全てのドロップが1房5本あるようだった。

 まあ、普通のバナナに近い味なら、あえて今喰う必要はないよなぁ。


「イリス、食っても良いぞ?」

『プル? プル~ン』


 じゃあ1房だけ。そんなニュアンスが聞こえて来た。

 1本じゃなくて丸ごとな辺りがイリスだよなぁ。


『プルプル』


 もきゅもきゅとバナナを食べると、イリスは満足気に跳ねた。


『プル!』

「そうか、美味かったか。んじゃ、イリスも満足したみたいだし、イエローバナナも全投入で」

「かしこまですわ!」


 そうして俺達はどんどんバナナを放り込んで行った。どうやら際限なく詰め込んでも、で放り込んだ物は溢れたとしても重力に逆らうようで、勝手に零れ落ちたりしないようだった。人間の意志を汲み取る当たり『伝説レジェンダリー』だなぁと感じてしまう。

 結果は以下。

 レッドバナナ、1本1000エネルギー。5本×69。

 ロシアンバナナ、1本800エネルギー。4本×30。

 イエローバナナ、1本1500エネルギー。5本×119。


 34万5千+9万6千+89万2500=133万3500エネルギーとなった。


「おー。倉庫の肥やしになる所だったものが、特大魔石が約2個分か。そう考えると有用かもな」

「有用なのはショウタ君のドロップ率が大前提だけどね」

「ん。あんな大量のイエローバナナとレッドバナナ、市場でもそうそう見ない」

「わたくし、美味しいと評判のグリーンバナナがとっても気になりますわ!」

「そうですね。味が良ければ今後のデザートの主役級になりそうですっ!」

「両方の意味で美味しいのなら、乱獲もありですね」


 ロシアン、通常のレッド、イエローとエネルギー値は増加して行ったからなぁ。となると、素材は強い素体であるほど高エネルギーを内包していて、食材は味が良いほど高レートになると考えるべきだろうか。他のダンジョンで言うところのオーク肉や、ザリガニ肉とか。

 結果的に、ダンジョン探索の楽しみが増すガチャ結果となったな。今の段階でももう1回ガチャを回せるところではあるが……。緑のエテモンキーシリーズのレアⅡがいるかを確認してからでも遅くはないか。

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