ガチャ456回目:デートウィーク⑧

【休暇十六日目】


 俺達はホテルの一室に集まっていた。


「んじゃ、これから俺の秘密を話そうと思う。けど、期待してるところ悪いけど、聞いていて面白い話じゃない。それでも構わないか?」

「聞かせて。お兄ちゃんに何があったのかきちんと知っておきたいの」

「他の皆も、それで良いか?」


 全員がこくりと頷くのを確認し、俺は『レベルガチャ』を起動した。まずはそれを全員に認識させ、そして俺がどのようにして『レベルガチャ』を得たのかの過程の説明と、その能力の存在を説明し、実際に使ってみせた。といっても『鑑定』が使えるのはイズミだけではあったが、明らかにオーラが目減りしたことは彼女達は皆感じ取れたようだった。


*****


名前:天地 翔太

年齢:21

レベル:22

腕力:32894(+16422)(+16447)

器用:32902(+16426)(+16451)

頑丈:32690(+16320)(+16345)

俊敏:31990(+15970)(+15995)

魔力:33338(+16646)(+16669)

知力:33680(+16817)(+16840)


運:21710


*****


『39/50』


 よし、あと11だな。


「カスミ、おいで」

「うん……」


 声も出さずに泣き始めたカスミを宥めつつ、彼女達の質問に答えていく。


「じゃあ、お兄様のオーラがちょこちょこ減ったり増えたりしてたのも?」

「そうだよ。『充電』してレベルを下げて、低レベル補正で爆上がりしてを繰り返してたんだ」

「兄上、その『充電』とやらの機能は、いつから行われているのですか?」

「『初心者ダンジョン』でハヅキ達が合流する直前からだね」

「つまり、お兄様は私達が合流してから通算3900レベル分の経験値をこのスキルに捧げたんですね」

「そうなるね」


 そう思うと途方もない数字だな。


「それで、お兄さんのステータスって今どれくらいなの?」

「スキルの全容も気になりますわ……!」

「あー、そうだな。アイラ」

「はい、こちらをどうぞ」


 『充電』直後からリアルタイムでステータスを書き起こしていたアイラが、皆にそれを見せる。


「ひょえ~……」

「『外典魔法』に『聖魔法』に『時空魔法』。凄まじいラインナップですわ……!」

「お兄様、半分くらい人間辞めてない?」

「怖くなったか?」

「ううん、全然。むしろどこまで行き着くのか興味を持ったかも☆」


 俺、珍獣扱いされてる?


「それよりも覚えるのが大変かも。アイラさん、ちょっと時間貰っても良いですか?」

「構いませんよ。ですが決してメモには残さないように」

「かしこまっ☆」

「……? 覚えるって、なんで?」

「お兄様をサポートするためよ。あたし達はこっちのダンジョンで活動するわけだけど、当然こっちでしか見つからないスキルもきっと出てくるわ。もしも未知のスキルが出たら、お兄様に送るつもり☆」

「それはありがたいけど……。有用そうなスキルならイズミ達が優先して使ってくれよ?」

「勿論よ。お兄様の心配にならないよう、安心安全な冒険者生活を心がけるわ」

「まあ、イズミが監督してるなら大丈夫か。任せたぞ」

「はーい☆」

「んー? なんだかイズミちゃん、以前よりもお兄さんとすごく仲良くなってない?」

「信頼しあってますわね」

「にひー☆」


 そうして戯れ合うも、彼女達の視線は俺の腕の中へと向けられた。


「ほら、カスミ。皆が心配してるぞ」

「……ねえお兄ちゃん。聞きたい事があるの。お兄ちゃん、ずっと笑ってくれてるけど、こっちに帰ってくるの、本当は辛かったんじゃないかって。……教えて?」

「んー。辛いかで言うと、別にそこまでじゃないかな。割と吹っ切れてるところはあるし、むしろあれがあったからこそ、ここに至るまでの原動力となったわけだし」

「嫌な記憶とか、フラッシュバックしたりしなかった?」

「しないと言えば嘘になるけど、乗り越えられるくらいには強くなったし、今が幸せだからな。それに今回のデート中、実は昔俺をボロクソに扱ってた連中と街ですれ違うことが何度かあったんだ。けど俺の知名度とオーラの影響か、誰もが気まずそうに視線を外したりして来たからな。正直それだけでもスッとしたんだよな」

「そうなんだ。全然気付かなかったや」

「だから、カスミもこれ以上気に病むな。弱かった頃の俺はもう過去の事で、今が楽しくて仕方がないんだから」

「……わかった。でもそれはそれとして、もう少しこのままでいたいかな」


 カスミは見せつけるように首元にしがみつくと、再び俺の胸元に顔を埋めた。それと同時に義妹達からブーイングが起き、ポジションの争奪戦が始まった。

 アキ・マキ・アヤネ・アイラの4人は、話し合いとお互いの相性の結果、場所の取り合いはほぼほぼ起きたりしなかったけど、彼女達は6人もいるもんなぁ。

 まあ、これは本気の喧嘩じゃなくて、遊びの一環みたいな雰囲気があるし、安心して見ていられるんだが。


 今日はこの後、初日同様彼女達の親も集まって盛大に打ち上げするみたいだし、楽しみだ。それにしても、彼女達とも明日でお別れか。せっかくだし、何かプレゼントしておきたいな。アイラ達と相談するか。

 ……あっ。そういえば増強アイテム、渡してなかったな。

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