ガチャ437回目:心の距離
「アイラ、宝箱」
「はい、こちらに」
アイラがテーブルに置いたのは『アメジストの宝箱』だった。
まあ、あんな連戦の後にドロップする宝箱だもんな。エメラルドより格上のアメジストが来てくれてほっとした。
「それじゃ早速」
全員でサングラスを着用し、宝箱を開封するとそこにあったのは暗闇ではなく……。
「腕輪か? しかもハート型の刻印まで……」
こんなのがドロップしたら、ここは正真正銘の『ハートダンジョン』になるじゃないか。1個しかないみたいだが、とりあえず手に取って確認するか。
「『真鑑定』『真理の眼』」
名前:心のバングル
品格:≪遺産≫レガシー
種別:アクセサリー
説明:装備する事で効果発動。他者がこのバングルに触れると、着用者に対する心の距離が数値化されて表示される。
0~9:興味なし
10~19;顔見知り
20~39:友人
40~59:友愛
60~69:親愛
70~99:愛
100:一心同体
「うっわ……」
中々に怖いアイテムが出たな。
本当の愛が数値化されて試されるなんて、こんなのが世に出たらトラブルしか生まないだろ。それに、愛の幅が他と比べて割と広いのもまた怖い。
まあ、出てしまった以上試さずにはいられないし、彼女達はこれが気になって仕方がない様子だ。とりあえず装着するとして、だ。
「エス」
「え、このタイミングで僕かい?」
「お前くらいの立ち位置が丁度良いんだよ」
そう言って彼に向かって腕を突きだすと、彼は渋々といった様子で『心のバングル』に手を触れた。
すると、軽快な音と共に俺達の間に数字が浮かび上がった。
『56』
「なんだよエス、俺に友愛の情を感じてたのか。しかも結構高いし」
「……まあ、仮にも義兄だしね。しかしこれは、少々気恥ずかしいかな……」
「そう言うなって。俺は嬉しいぞ」
「あとで兄さんのも……。いや、それを知るのも赤面ものだね?」
エスがいたたまれない様子で離れると、同時に数字も消えた。
恐らく、触れている間しか効果が発揮されないんだろうな。彼女達は目をぎらつかせているが、誰が前に出るかで迷っているのか互いに視線で会話しているようだった。
俺は誰からでも良いんだが……。
「もうちょっと時間かかりそうだし、エンキ達おいでー」
『ゴゴ!』
エンキがバングルに触れると、ファンファーレが鳴り響いた。
『100』
まあ、そりゃそうか。
でも、実際に数値として出ると嬉しいもんだな。
『ゴ!』
「ああ、ありがとなエンキ」
『ポポ!』
エンリルが腕に飛び乗り、バングルに乗っかる。
再びファンファーレが鳴り響き、数字が表示された。
『100』
この音、数値によって変わってくるんだろうな。
興味無しとかだったらどんな残念風味の音が鳴るんだ? ハズレみたいな音か。……下手すると鳴らないかもな。そうして今度は実験的にセレンとイリスに同時にバングルに触れてもらう。すると、2つの数字が出現してくれた。
だが、セレンが100なのに対してイリスは95だった。
『プル?』
「まあ、イリスとは意思の疎通が完璧じゃないしな。それでもこの数値は嬉しいぞ」
『プルル』
「というわけで、いつまでも見つめ合ってないで同時にやっていくぞ。アヤネ、アイラ、アキ、マキ」
呼ばれた彼女達はこくりと頷き、俺のバングルへと手を伸ばした。
◇◇◇◇◇◇◇◇
結果的に、俺達の間でトラブルは起きることは無さそうだった。
内容は以下。
アヤネ:99
アイラ:99
アキ:99
マキ:99
カスミ:92
ハル:84
ハヅキ:86
レンカ:77
イリーナ:78
イズミ:88
ミスティ:62
程度の差はあれど、うちの初期メンバーは皆、愛情がカンストしてるなぁ。
カスミが結構高いのは意外ではあったが、ミスティがこのくらいの数値なのは違和感なかったし。レンカとイリーナのカップルがこの数値なのもなんとなく想像通りではあった。
しっかし、こんなものが『アメジストの宝箱』から出るなんてな。とんだ爆弾じゃないか。アイテムの存在自体に辟易していると、さっきから笑顔が張り付いて取れないでいるアイラがやって来た。
「ご主人様。このアイテムの是非はともかくとして、出土したこと自体は報告して然るべきかと。御利益とは少し異なりますが、ダンジョン側もそう意図して生まれたものという後押しになりますし。そうなればこのダンジョンの知名度は鰻登りかと」
「じゃあこれ、寄贈しちゃう?」
「関係を壊すことになりかねないので、そこは慎重に行くべきかと」
「本心なら良くない?」
最初は怖いと思ってたけど、あの数値を見た以上、問題ないような気がして来ていた。俺達がこうだったんなら、真実の愛を交わし合っている2人なら問題ないんじゃないかな?
それに、相手が自分の事をどの程度想っているかを知りたいと思うのは普通のことだし、それを試すのは片思いじゃなくて一応は両想いのはずのカップルのはずだ。滅多なことは起きないだろ。たぶん。
起きたとしても、そんなに低い数値なら逆に拗れる前に終われてよかったと考えるべきかもな。
「……ご主人様がそう判断されるのでしたら。ですが、寄贈する前に試していただくことがあります」
「……わかってるよ」
その後、俺はバングルを装着したメンバー全員と触れ合いをするのだった。
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