ガチャ366回目:作戦会議

 カスミ達が落ち着くのを待つべきかとも思ったが、作戦会議をすると伝えると全員瞬時に切り替えた。彼女達は何だかんだで『Bランク冒険者』だし、そういうところはしっかりしてるよなぁ。


「それじゃ、さっき説明した通りこのまま進むと3種の強化体が一度に出現する。『チャンピオンゴブリン』と『ビッグキラーハイブ』と『リザードマンハンター』だ。この内『ビッグキラーハイブ』の挙動がわからないのでパターンを分けるが、ひとまずカスミ達には『チャンピオンゴブリン』の対処を頼みたい。特殊能力は奴の叫び声に『目眩』の状態異常があるくらいで、他はただのちょっと強くてちょっとデカいだけのゴブリンだ。アキ、彼女達にあいつの録画データを」

「おっけー」

「そんで『リザードマンハンター』は俺が対処する。素早く処理出来るのは俺だけだし、アイラはちょっと相性が悪いしな」


 暗殺者vs暗殺者の構図になるのだが、地力ではアイラの圧勝とは言え、長引く可能性があるからな。


「承知しました」

「『ビッグキラーハイブ』はなぁ……。最初からアクティブの場合は1ウェーブ目の蜂の群れが出てくるし、非アクティブの場合はただの置き物になるわけだが」

「イリスが内部から破壊するにも、昨日はそれなりに時間がかかってたわよね」

『プルル。プルルン』


 昨日の実験中、強化体の『ビッグキラーハイブ』を破壊する際、イリスならどの程度時間が掛かるのか実験をした。結果としては、通常の『ビッグキラーハイブ』のように内部から膨張して破壊する作戦は失敗した。いくら内部が柔らかくとも限度があるらしかった。けど、内側が弱点なのは間違いないようで、イリスは外部から邪魔をされることなく、最後まで捕食を繰り返して『ビッグキラーハイブ』を煙に変えていた。

 時間としては5分ほど。内部から徐々に崩壊していたこともあってか、第一ウェーブの蜂と戦闘中に突然増援が増えて驚いたが、蜂蜜効果もあって少なくて助かったな。

 ちなみにエンキの場合は、パイルバンカーが3発ほど必要そうであり、蜂からの邪魔を考慮するとこちらは安定性に欠けるという結論に至った。


「今回は巻きで行くってさ」

「無理はしないでねイリスちゃん」

『プルン』

「まあ置き物なら俺の戦闘が終わるまで待っててくれ。もし最初から蜂もセットならイリスは全力破壊しつつ、他全員は身を守ることを最優先に。カスミ達の方にも流れて行かないか、気を配ってやってくれ」

「「「「はい!」」」」


 作戦としてはこんなところか。

 カスミ達も動画とステータスを見比べつつ作戦を立ててるようだし、任せてしまって大丈夫かな。そうして見守っていると、何かを思い出したのかハルがこちらを見た。


「お兄様、1つ確認したいことがあるのですが」

「どうした?」

「お兄様は第四層でも同じように強化体との連戦をされたんですよね。その際、出現したゴブリンの強化体は弱体化の煽りを受けていましたか?」

「あー……。そういえばどうだっけな」


 ガダガを倒した後だったから弱体化の効果期間に攻め入ったのは間違いないが、実際にどうだったかまるで覚えてないぞ。

 というかあの時、俺って戦ってたっけ?


「あの時ご主人様は戦っていませんでしたから、覚えていなくて当然かと」

「そっか。皆に任せて俺は観戦してたんだっけ」

「はい。私も戦いの最中ステータスを再確認しようとは思っていませんでしたから、この目で見た訳ではありませんが……。記憶が定かであれば、弱体化は受けていなかったように思います」

「2人もそう思う?」

「うん。ちゃんと元のステータス通りだった気がする」

「はい、弱くなっていたようには思えませんでした」

「そっか」


 この場に現れる連中は、2回目のガダガのように、のような存在だから、実物みたいに生のステータスは変動しないってことなんだろうか?


「分かりました。参考にさせていただきます」

「準備は出来ましたか?」

「はい、お待たせしました。いつでも行けます!」

「お兄ちゃん、私達も出来るってところを見せてあげるね!」

「おう。んじゃアヤネ、彼女達の戦闘記録を映像に残しておいてくれるか」

「はいですわ!」


 さすがに『リザードマンハンター』に集中したいし、『ビッグキラーハイブ』の挙動もあるから最初から見守ってやる余裕はないだろうしな。


「レンカ、あんたが今出せるベストの動きをするのよ。それ次第で今後の方針を決めるから」

「わかった!!」


 アキとレンカがハイタッチを決め。


「ハル、期待していますよ」

「はい、アイラ先輩!」


 アイラとハルはいつの間にか関係が構築されているし。


「イリーナ、全員の能力が増えたとしても『SP』はまだ割り振り出来ていないでしょうし、今まで通り落ち着いて戦うのですわよ」

「はい、アヤネ様!」


 アヤネとイリーナは独特な空気が流れてるし。


「イズミちゃん、頑張ってね」

「はーい、頑張りまーす☆」


 マキとイズミは良い感じに先輩後輩って感じだった。


「ねえお兄ちゃん、私達には何か無いの?」

「ん? まあ、ほどほどに頑張れ」

「もう、なによそれー」

「はい兄上。ほどほどに頑張ります」

「ぶー」


 気負い過ぎるのも良くないし、発破をかけるのも俺のキャラじゃない。それにこの2人なら、安心して見てられるだろうし、あれこれと言わなくても大丈夫だろうしな。


「よし。それじゃ行こうか」


 何もない草原を真っ直ぐに進むと、いつもの煙が現れた。


「チーム『疾風迅雷』。戦闘準備!」

「「「「「了解!」」」」」


 気合は十分みたいだな。


「……フルブースト!」


 俺もたまには本気を出すか。『リザードマンハンター』に時間をかけてる暇はないからな。速攻で叩き潰してやる。

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