ガチャ306回目:悪食

「ただいまー」

「「「おかえりなさいっ!!」」」

「おかえりなさいませ、ご主人様」

『ゴゴー』

『ポポ』

『プルル』

『~~』


 アヤネ、マキの順に飛びついて来て、遅れてアキもくっついてくる。

 エンキ達は足元でわちゃわちゃしてるし、アイラは少し離れた場所で静かに立っていた。……ふむ、アイラもちょっとホッとしてるっぽいな。何かあったか?


「心配かけた?」

「心配しました!」

「ショウタ君、全然戻ってこないんだもん!」

「前回のように1時間経っても戻らなかったので、こちらは気が気じゃありませんでしたわ……」

「え、1時間!?」

「はい、ご主人様。正確に言うと、1時間と43分です」

「マジか。体感30分くらいだったんだけど……」

「ちなみにエンキ達は微塵も心配した様子はなく、のんびりしておりました」

「そうなのか?」

『ゴゴ。ゴゴ』

『ポポ~』

「繋がりが残ってるから無事はわかっていた、と」


 なるほどな。


「しかし、今回もご主人様の体感時間が大幅にずれましたか。お渡ししていた時計はどうでしたか?」

「こっちは、俺の体感時間と大体一致してるな」


 アイラの時計と合わせてみても、やはり1時間以上の差が起きていた。


「なるほど。管理者の部屋は、時間の流れがおかしいのは確定ですね」

「かもなー。でも、そんなのは些細な事だ。今回の突入で、とんでもない情報を手に入れたよ」


 俺は皆に、中で知った情報を伝えた。


「『楔システム』ですか。なるほど、これが『コアホルダー』で得られる第二のメリットですか」

「では、日本各地で『コアホルダー』になれば、今後この国にダンジョンは現れないということですの?」

「ん-、まあ点と点を結んだ中では、という話だから、少しでも外れたら出て来るんじゃない? 今回みたいな、海のど真ん中に出てきたのも制圧して行けば、話は変わって来るだろうけど」

「陣地をどんどん広げていく感じですわね!」


 陣取りゲームか。言い得て妙だな。

 誰かと争う訳では無いだろうけど……。


「順調にいけば、次は『初心者ダンジョン』よね? 『アンラッキーホール』とは距離が近すぎるから、出来上がる境界線も凄く尖った三角形になりそうね……」

「でも無駄にはならないと思います。点の数が増えれば増えるほど、境界に出来るエリアも広がるという事ですから」

「まーねー」

「ご主人様。その境界線について、他に情報は無かったのですか?」

「ああ、一応何を聞いてきたかはあとで擦り合わせるとして……。結論としてはレベル不足だってさ。既に出現してる未管理のダンジョンを囲う事は出来るのかとか、境界線にモンスターを弾く能力はあるかとか、知りたかったんだがなー……」

「ああもう、凄い気になるわね! でもショウタ君の管理者レベルも3間近だし、焦る必要はないか」

「そうだね。第五層の難易度次第だけど、第三層ほど面倒って事は無いだろうし。なんとかなるでしょ」


 そういうと、アキとマキが顔を見合わせ、はにかんだ。

 2人は第五層の詳細も知ってるけど、俺が求めてないから口を噤んでくれてるんだよね。彼女達の反応は気になるけど、あんまり詮索して自分からネタバレをしたくはないから、見なかった事にしよう。

 まあ黙っているってことは、命の危険はないんだろうし。


「ところで、魚狩りの方はどうなったの?」

「はい。あまりに暇でしたので、イリスとエンリル、セレンの3人がローラー作戦を開始しまして、私がそれについて行きました。結果としては討伐数486匹。道中レアモンスターの『グレイトシャーク』が2体、『レアⅡ』の『テラーシャーク』が2体。強化体の『グレイトシャーク』が2体出現しました。スキルとしてはこちらになります」


『水泳Lv2』2個。

『水泳Lv4』2個。

『水泳Lv5』2個。

『悪食Lv2』2個。

『悪食Lv4』2個。

『悪食Lv5』2個。

『暗殺術Lv3』2個。

『暗殺術Lv5』2個。

『恐怖耐性Lv1』2個。

『恐怖耐性Lv2』2個。


 『レアⅡ』2、強化体が2。ということは、ここの第一階層は全域がレアモンスターの出現判定がある訳か。


「また『水泳』か。でも『暗殺術』と『恐怖耐性』は助かるな」

「海底のダンジョンが出現し始めましたから、今までは見向きもされなかった『水泳』は需要があるかと」

「なるほど。じゃあ余ってるのも併せてオークション行きで。セレンも『濁流操作』があれば『水泳』はいらないよな?」

『~~』

「いらないって」

「畏まりました」

「てか、『グレイトシャーク』はちゃんと『レアⅡ』に進化できるけど、スタンピードじゃ変化しなかったんだよな? となると、やっぱ『クラーケン』が特殊だったのか」

「かもしれませんね」


 もしくは、『ダンジョンボス』に変化するタイプだけが進化の煙を出すのかもしれないな。


「さて、まずは『悪食』からチェックだな」


 名前:悪食

 品格:≪希少≫レア

 種別:スペシャルスキル

 説明:本来消化できない物でも体内で分解し、エネルギーとして吸収できるようになる。また、スキルによって食べる事が可能となった物を捕食した際、噛み砕く力に補正がかかる。レベルに応じて対象が増える。


「……やべースキルじゃん」

「なんでも……ですの?」

「メリットの面だけで言えば、毒とかもエネルギーに変換出来ちゃいそうですけど……」

「文面からして、これがLvMAXになれば、木とか石とかの自然物も食べられるようになるかもしれないわね」

「最悪、コンクリートなんかの人工物すらバリバリ食べれてしまうかもしれませんね」


 表記的にゴムでも食べれちゃいそうだな。


『プルル?』

「イリスがどう思うかはしらないけど、流石に無機物まで食べたいとは思わんな……」

『プルル、プルル!』

「そんなものは食べたくないけど、モンスターは美味しかった?」

『プルルン』

「そうか」


 まあ、流石にこれを覚える訳にはいかんし、封印確定だな。

 いや、一応調査はするべきか。


「オークションにはどうされますか?」

「捕食対象がモンスターだけならまだしも、人間も含まれていたら厄介だからな……。意図せず食人鬼が誕生したら嫌だし、全部まとめて研究所送りが妥当かな」

「承知しました。このスキルに関しては、すでに一定数市場に出回ってはいますが、スキルレベルがMAXに到達している者はいないと思われます。ですので、安全のためにも最優先で調査をしてもらいましょう」

「だね」


 それじゃ次に『暗殺術』だな。


「アイラは『暗殺術Lv3』1個。これでLvMAXだよね?」

「はい」

「じゃあ『体術LvMAX』と『圧縮』して『暗殺の極意』にしてしまおう。それから『暗殺術Lv5』2個をイリスが覚えて」

『プル』

「余ったLv3は……とりあえずキープで」

「畏まりました」


 残るは……。


「『恐怖耐性』か。ついさっき食らった『恐慌の魔眼』も、これに助けられたからな。皆も覚えておいて損はないな。アヤネとマキがLv2、アイラとアキがLv1で」


 前者2人は怖がりなところがあるからな。そう思っていると、2人は使用を躊躇っているようだった。


「どしたの?」

「人間的感情が無くなってしまわないか、ちょっと怖いです」

「あー」

「それにこれを取得すると、怖い事が起きても旦那様に甘えられない気がしますわ」

「うん?」

「あ、それあたしも思った」

「私も……」

「んんー……」


 言いたいことはわかる。まあ、怖いはずの事を怖がれないって、前に聞いた『勇猛』に近いところがあるよな。そしてアヤネが口にした悩みは、『恐怖耐性』を持ってたら、甘える理由が減ってしまいそうで怖いのか。


「たぶん大丈夫だと思うよ。個人的な所感だけど、意識的にオンオフできるっぽいし。戦闘中以外は切ってても良いんじゃないか?」

「そうなんですか?」

「じゃあ……甘えてもいいんですの?」

「良いよ。むしろアヤネが甘えてこないとか寂しいだろ」

「えへへ、はいですわ!」


 順番に甘やかした後、俺達はダンジョンコアが言っていたワープポータルへと向かうのだった。

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