ガチャ278回目:山のトロフィー
俺はガチャで得たスキルの事を皆に共有し、『神殺し』に沸き立つ彼女達を落ち着かせ、一旦この場で休憩を取る事にした。レアモンスター出現の場所での休憩って、中々豪胆ではあるのだが、出現方法がモンスターを倒すしかなく、またこの階層には今のところ俺たち以外は入口と出口付近にいるくらいのものだ。
それもあの、直近の告知の影響だとは思うけど、少なくともすぐにこのクマ地帯にやってくる気配はない。まあもし通常のレアが出たところで、俺が眠りこけててもエンキ達なら撃退してくれるだろうしな。
「ねえねえショウタ君、この最後のシーンなんだけどさ」
「うんうん」
そうして昼食を取りながら、『カムイ』戦の動画を振り返りつつ、彼女達の疑問に答えていく。
「このショウタ君が二人いるかのように見えるこれは何?」
「ああ、これは1個前のガチャで出た『ダブル』のスキルだよ。俺と全く同じ動きをする分身を呼び出せるんだ」
「へぇー!」
「まるで忍者ですわ!」
「『ダブル』……なるほど、Doppelの方でしたか。『スペシャルスキル』かつ『SUR』というのも納得です」
「とってもとっても格好良かったです……!」
「はは、ありがとう。ただ効果時間が短くてさ、数秒しか維持できないんだよね」
マキはこの食事中、何度も思い出してはうっとりとしていた。何かが彼女の琴線に触れたのかな。まあちょっと気恥ずかしいけど、こんなに熱量を持って褒められるのは嬉しいし、大事な人からなら尚更だ。
「それで、この後の予定は如何されますか?」
「まずは例の通知の件の確認……と言いたいところだけど、折角天辺に登ったんだ。エンリルの目を借りて、まずは山全域のマップ情報を更新しておきたい」
「一番高い所にいるもんねー。雲が邪魔で下が見えないけど」
「先ほどのクマ狩りで山をぐるりと回りましたが、制覇率はどのくらいですの?」
「うーん……全体で8割くらいかな。山の天辺とその周辺はほぼ埋まってるけど、ヘビとイノシシの混合地帯が全然だ」
『ポ、ポポ!』
エンリルは少し距離があるけど任せてほしいと胸を張った。
「その後はマップでクマのレアが湧きそうな場所を探して、そして強化体を討伐して、例の祭壇を調べてカギを取れたら撤退、かな」
「承知しました」
「じゃ、あたし達は動画の編集しておくねー」
「格好良く仕上げますから楽しみにしていて下さいっ!」
「ああ。んじゃ、頼むぞエンリル」
『ポ~』
エンリルと視界を繋げると、彼はテントから飛び出して大空へと飛び立った。
マップを制覇するのには今しばらく時間がかかるし、その間目を閉じて、俺は身体を休めることに専念しよう。
イリスを枕に……と思ったが、それでは寝落ちしてしまいそうなので、クッション代わりにもたれかかって休む事にした。うーん、人を駄目にするクッションだなぁ、イリスは。
『プルプル』
◇◇◇◇◇◇◇◇
1時間後。
動画の編集も終わるころにはマップの全域が見通せる状態となり、第三層のマップ情報もコンプリートすることが出来た。そこで気付いた事だが、どうやら安全エリアから山側には宝箱が存在しないらしい。逆にヘビやイノシシの単一ゾーンには宝箱が馬鹿みたいにある。この情報は協会に流すべきか悩ましいな。
そんな事を思いつつも、エンリルには追加でクマの出没エリアを余分にぐるりと回ってきてもらった。だが、エンリルの視点から見下ろそうと、マップで確認しようとも、レアモンスターの出現場所となり得そうな場所はここ以外にはなかった。また、例の祭壇の洞窟も、最初に見かけた場所からは動いておらず、類似の洞窟なども見当たらなかった。
となると……。
「このダンジョンを作った奴は、中々良い性格してるよ」
「旦那様?」
「何かわかったの?」
「確証はないけど……とりあえずもう一度この周辺でクマを100体狩ろう。そうすれば答えは出てくるはずだ」
『ゴゴ!』
『プルル』
そうして宣言通り山の中腹辺りでクマを乱獲し、出現した煙は山の頂上を目指して登って行った。
それを追いかけて頂上に辿り着くと、ソレはいた。
*****
名前:ベルクベア
レベル:168
腕力:1080(-270)
器用:1080(-270)
頑丈:840(-210)
俊敏:480(-120)
魔力:120(-30)
知力:240(-60)
運:なし
【
【
【
【
【
装備:なし
ドロップ:ベルクベアの蜂蜜、ベルクベアの毛皮、ランダムボックス、ベルクベアのトロフィー
魔石:極大
*****
「やはりか」
想像通りというかなんというか。
1カ所しか出現場所が存在しないのなら、2回目はそのまま強化体になる。予想通りとはいえ、隠し場所も存在せず答えに辿り着けて、正直半分ほっとしていて、半分残念な気持ちがあった。
まあでも、これ以上探す場所は無かったから、出て来てくれて良かったかな。あと、こいつも例に漏れずきっかりと2割分の弱体化を食らってるな。
「『カムイ』に比べれば弱いし、弱体化もしてる。今度こそ3人だけで倒せるか、リベンジしてみるか?」
『ゴ!』
皆からやる気が感じられる。
なら、ここは任せてみるか。
「よし、行ってこい!」
『ゴ! ゴゴ!!』
『ポポポ!』
『プルルル』
◇◇◇◇◇◇◇◇
結果は言うまでもないが、エンキ達が勝った。
彼らの勝利の決め手となったのは、相手には魔法系の耐性がなく、エンリルの風が目眩ましではなく、しっかりと攻撃として通っていた事。そしてエンキのスキルを『盾術Lv2』から『格闘術Lv5』に入れ替えたのが要因だろう。
力は互角、技術も競り合っている。1対1ならいい勝負になるのだろうが、3対1なのだ。上空からは致命的なカマイタチが降り注ぎ、両脚はがっちりと粘体に掴まれ、技術を得たエンキの重い一撃が何度もクリーンヒットする。
大怪獣決戦は、5分ともたずに決着となったのだった。
【ベルクベアのトロフィーを獲得しました】
【レベルアップ】
【レベルが38から248に上昇しました】
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