ガチャ233回目:危険なスキル達
「なんか、精神的にどっと疲れたな」
「あんなモンスターもいるんですのね……」
「思い出すだけで、また臭ってきそうだわ」
俺達は速足で拠点のキャンプへと戻ってきた。
お昼時にはまだ少し早いし体力もあり余っているが、今回相手したレアモンスターは今までと毛色が違っていたせいか、別の意味で疲れていた。それに、『レアⅢ』がいないという確認が取れたのも大きい。
区切りとしては丁度良いだろう。俺とアキとアヤネは、だらけるように寝転がっていた。
「シャワーを浴びれてスッキリですわ~」
「まあ皆で確認しあったとしても、不安は残るしなー」
「シャワーは今朝も浴びたけど、やっぱりダンジョンで使えるって大きいわよね。魔法さまさまだわ」
実を言うと昨晩の簡易修行後を含め、もう既に計3回もシャワーを浴びていた。
このテントがキャンプ地の角に存在していて、周囲から死角になっていること。そして防音と防臭の結界を使っている為、テントのデッドスペースを活用すれば周囲からバレることなくシャワーが浴びれるのだ。
ちなみに、見張り役はエンキで十分だし、今更意識するような相手でもないので全員同時に利用している。魔法のおかげで水には困らないとはいえ、お湯の用意も楽ではないしな。
ちなみに、アイラが持ってきた道具の中に、魔石を用いて水を沸かせてお湯に変えるものがあったので、それを活用している。ほんとに何でも入ってるな、アイラの鞄は。
彼女的には、湯船も用意したかったらしいのだが、それは容量的にカツカツだった為諦めたらしい。
今回新たに大容量の巾着袋を得た事だし、きっと次に潜るころには用意を済ませて来るんだろうけど。
「んー……。このまま行けば今日中にここのトロフィーは揃うだろうし、明日は隠されてる宝箱を探して鍵をゲットして……。それが終わったら帰る訳だけど、またちょっと休暇を入れようか」
「賛成ですわ~」
「あら、珍しい。ショウタ君から休みを提案してくれるなんて。今まではちょっと渋ってたじゃない」
「休み癖がついたとは思いたくは無いけどね。でもやっぱり、スライムだけを単調に叩いていた頃と、毎日が強敵・難敵と戦う今とじゃ、一日に積み重なる疲労は比じゃない事に気付かされたからな」
それに、昨日のゴブリンの告知もあってしばらくはこのダンジョンは混みあう事だろう。少し距離を置くのも良いかもしれない。ま、休暇が終わったら今度こそ第三層の探索を再開するつもりだけどな。
「あー……。でもやっぱり、第三層の事を考えると、まだちょっと不安が残るな」
「あら、ショウタ君もようやく危機感を覚える相手が出来たのね」
アキがこちらに寝返りを打って、耳元でクスリと笑う。
「くすぐったいって」
「んふふ。ごめんね」
「でも真面目な話、強くなってもアレの視線を回避する方法が浮かばないんだよな。治療方法を得たとはいえ、ミスれば即座に戦闘不能になるんじゃなー。結局、目を瞑って戦うしかない訳で……」
「ショウタ君にはまだ、視界を封じての戦いは厳しそうだもんねー」
「でも旦那様も、『知覚強化』で他の五感は優れているはずですわ。慣れれば視界がなくてもある程度戦えるようになると思いますの」
「そういえば、あたしやマキの持ってる感知スキルも取得したんだったわね。なら、やりようはあると思うわよ」
「……そうか。ならもう一度、道場に行ってみるのもいいのかな」
「ショウタ君はもう門下生だもの。遠慮する必要はないわよ」
「……考えとく」
そんな風に今後の事を考えていると、昼食の準備をしていたマキとアイラがやってきた。
「ただいま戻りました」
「ああ、どうだった? 食材の方は」
「残念ながら、すぐに食べるには臭いがつきすぎておりましたので、消臭と香りづけのハーブに漬け込む事にしました。ただ、漬け込む関係上、早くても夕食の方に回すことになるかと思いますが」
「でも、必ず美味しく仕上げてみせます。楽しみにしていて下さいね」
「……いや、うん。楽しみにしてはいるけど、その肉も滋養強壮に良いってフレーズなんだろ? 昼食用に調理する前提で考えないでくんない?」
「ふふ。それはさておき」
さておくのか。
「得たスキルについて考えましょうか。ご主人様もこの後ガチャを回されるのですよね」
「ああ。頼む」
アイラが目の前にスキルを並べた。今回の『ハイ・オーク』『オークキング』で得たスキルは以下だ。
『鉄壁』『鉄壁Ⅱ』『城壁』『城壁Ⅱ』『金剛体』『精力増強Lv1』『精力増強Lv3』『ウォークライ』『ウォークライⅡ』『風塵操作Lv2』『悪臭』。
全て2個ずつ。
「うーん……。いつものパッシブスキルは置いといて、『金剛体』をまず、アキとアヤネに」
「はいですわ」
「おっけー」
「『ウォークライ』は……なんだ?」
そういえば聞いてなかったな。
「声を上げて活力を入れる事で、自分自身と周囲の味方のステータスを、一時的に増強させるスキルです」
「パッシブ枠か。でも『真鑑定』で見たらアーツ枠だったな」
「味方を鼓舞するって、ある意味技術がいるからじゃない?」
「そういうもんか。じゃあ『ウォークライⅡ』を俺とアイラ。無印は……午後に『レアⅡ』が湧くかもしれないしキープで」
「承知しました」
「『風塵操作』は、1つは俺が取得して、もう1つは試したいことがあるからキープで。んで、問題の『精力増強』と『悪臭』だけど……」
名前:精力増強
品格:≪希少≫レア
種別:パッシブスキル
説明:自身の性欲・精力をレベル値分上昇させる。ON/OFF可能。1度ONにすると発散しきるまで効果は継続される。またレベルに応じて、生殖活動で損耗する体力の消費が緩和される。
名前:悪臭
品格:≪固有≫ユニーク
種別:スペシャルスキル
説明:現在の自身が放てる最も醜悪な臭いを周囲に撒き散らす。一度発動すると魔力が尽きるまで操作不可。
俺は読んだ内容をすべて口頭で説明した上で、方針を口にした。
「『悪臭』は封印で」
「「「「異議なし!」」」」
満場一致で可決した。
これは世に出してはならないスキルだ。
「てか、使い道がマジで分からない。持ち続けるのも嫌だし、オークションに流すわけにもいかない。一度発動したら無効に出来ないあたりが厄介すぎる。支部長達に判断を任せるのが無難か?」
「研究所に行くのがオチかと思いますが、『危険指定アイテム』に分類してもらう為にもそれが最善でしょう」
「そうですね。お母さんも渡されて困るでしょうけど、そこは我慢してもらいましょう」
「俺、嫌われたりしない?」
「大丈夫よ。お母さん、ショウタ君から貰ったゴーレムで滅茶苦茶機嫌良いから」
そういえば、ミキ支部長とアキマキ姉妹とで、ゴーレムの写真交換会なるものが実施されてるとかいないとか。愛されてるなぁ。まあ、俺もエンキは子供みたいで可愛がってるけど。
「んで、『精力増強』だけど……。これさあ、最初の設定がONかOFFかが問題だよな。そこんとこどうなの?」
「えっと……。どうなんでしょうか」
「ごめん。そこはちょっとわかんないや」
「うーん、個人的にはONな気がするんだよね。『ハイ・オーク』は湧いた瞬間から目がギラついてたし、『オークキング』もそんな感じがしたでしょ。女性最優先なところは『ジェネラルゴブリン』以上の執念を感じたし、あれは種族特性以上にスキルが有効になってた感が強い。だから……こいつも保留で。危ないから『圧縮』もなし」
「残念ですが……承知しました。今夜はLv1から試してみましょう」
「安全第一ですわ!」
「使わない選択肢はないの?」
「ご主人様が干からびるのは忍びないですから」
「……」
加減をするという選択肢も、ないらしい。
まあ、4人も娶るって話なんだから、そこは俺が頑張るべきところだよな。うん。
でも、レベルが高いほど体力の消耗が抑えられるんだよな……? そう考えると、翌日に響かないようにするには高レベルの方が望ましいけど、反面高レベルになるほど精力も増すという事は、消費しきらないと眠れないなんてことになりかねない訳で……。
ううん、悩ましいな。
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