ガチャ219回目:オークの集団
煙が霧散し、ドロップアイテムが撒き散らされる中、俺は表示されたメッセージに驚き固まっていた。
『ユニークボス』の表記があった以上、『ダンジョンボス』と似て非なる存在であることは予想していたが……。まさかこんな結果になるなんてな。さて、となるとこの情報、どう伝えた物か……。
「ショウタさん!」
「旦那様!」
そう思案していると、マキとアヤネが駆け寄って来ていた。
振り返ってみれば、集落を覆っていた光は消え失せ、遅れてアキとアイラ。それからエンキもやって来た。
「ショウタ君、頑張ったね。お疲れ様」
「ご主人様、見事な戦いぶりでした」
「うん、ありがと」
あいつが消えたことで、俺のステータスは元通りになったみたいだ。『腕力』はいつも通り、出力可能な限界値は薄っすらとしか掴めないし、『器用』や『俊敏』も、振り幅が大きすぎて自分の立ち位置がわからなくなる。
けど、この戦いをする前と比べれば、だいぶマシになったと思う。今ならアキと一緒に、スキル込みで全力で走っても、負ける気はしないかな。
「ショウタ君、また強くなった?」
そう聞かれてドキリとする。俺は何でもないように答えた。
「レベルが190くらいにまで上がったからかな」
「ううん、そうじゃなくて。力の制御力が増した感じがする。ふふ、君はどんどん成長するわね」
「はぁ。アキには敵わないなぁ……」
察しが良すぎるよ。
「ご主人様の成長はとても喜ばしいところですが、重要な件をお伺いします。先ほどのメッセージの件です」
「えっ?」
「あ、それ聞いちゃう?」
「あちらの皆さまも気になって仕方がないようですので、事実確認を済ませておかねば」
「まあ、そうよね~」
二人がちらりと観客の方に向けられた。俺も釣られて彼らの様子を見ると、その目からは尊敬と共に隠し切れない興奮の色が見え隠れした。
「も、もしかして……。皆にもあのメッセージ、表示されてた?」
「はい」
「ばっちり表示されたわ。野次馬の反応からしても、少なくともこのエリア周辺。あの内容からして、最悪このダンジョンにいる人全員に表示されたかもしれないわね」
「うへぇ……」
『ダンジョンコア』が世界に発信するかどうかを聞いてきたことがあったから、ダンジョン側にはそういう手段がある事は知ってはいたけど……。まさか覚悟無しに流されることになるとは……。
ちょっと反応が怖いな。
「本当にダンジョン限定で表示されたのかな……。世界中に発信されてたら困るんだけど」
「それは外と連絡を取ってみない事には分からないかと。幸い、キャンプには連絡用の黒柱が設置されていますし、メッセージのやり取りをするくらいは可能かと」
「じゃあ、お腹も空いて来たし、休憩がてら一度キャンプに戻ろう。アイラ、ドロップアイテムの回収を頼む」
「承知しました。想定内でしたが装備品のドロップが多く、この戦いで鞄がパンパンになってしまったところです。丁度良いですね」
「ほーら、マキもアヤネも。いつまでもショウタ君に抱き着いてないで、離れなさい」
「……はい」
「はいですわ……」
二人は、名残惜しそうな様子で俺から離れた。
彼女達も俺が普段から満足に力を振るえていないことは知ってるから、強敵相手に強制的なタイマンを強いられて、心配を掛けちゃったよな。アキやアイラは表には出さないけど心配はしてくれてただろうし、俺も早く全力を安定して出せるように頑張らないと。
◇◇◇◇◇◇◇◇
その後、シュウさんや観客の冒険者に揉みくちゃにされながらもキャンプに向かって第四層を横断する。当然、ただ移動するのは勿体なかったので、『鷹の目』を起動させながらだったが。
ただ、『魔力超回復Lv2』になり回復量が増した今でも、『鷹の目』の視点移動は維持費の方が高いようだった。なので俺はマキとアヤネ、2人と手を繋ぎながら、目を瞑ってゆっくり進むことにした。
このまま順調に進めば、第四層は3割近くを埋められそうだ。……うん、マップの空白が徐々に三角形のような形で埋められていくな。あとはもう半分と、中身の塗りつぶしくらいか。第三層に比べて、ここは本当に楽だな。
そんなことを考えていると、道中オークの集団とエンカウントした。
『フゴゴ!』
『プギィ!』
どうやら連中もゴブリン同様集落をつくっていて、それを中心にコロニーを形成しているらしい。午後もゴブリンを連続で狩って『強化体』を呼び出したかったので、露払いは観客と仲間達に任せることにした。
俺はエンキと2人でお休みだ。
「連続狩りの為に手を出さないってのは今に始まった事じゃないけど」
『ゴ』
「こうも集団で襲い掛かられると、それなりの待ち時間が発生して暇だなぁ」
『ゴ』
どうにもオークの拠点が目視できるほどに近い位置を通った為か、その数は30くらいいた。マップで見れば集落の中やその周辺を含めると100を優に超える数が生息しているようだ。これは、レア湧かせも楽できそうだな。
数が多く、俺が手を出せない状況とはいえ、ここに集まったのは『初心者ダンジョン』でもそれなりのベテランのチーム。それが6つくらい重なった、一時的な連合状態なのだ。
負ける心配はなさそうだ。
暇を持て余した俺は、オークのステータスでも視ることにした。
*****
名前:オーク
レベル:16
腕力:190
器用:80
頑丈:230
俊敏:60
魔力:50
知力:30
運:なし
装備:オークソード
スキル:なし
ドロップ:オーク肉
魔石:小
*****
「オーク肉……。あれの肉か……」
オークは読んで字のごとく、二足歩行の豚といった風貌だった。だが体躯はどれも2メートル近くはあるし、剣を片手に叫びながら突っ込んでくる猪武者だった。ゴブリンと違って知性も連携もあったもんじゃないが、あんな奴が落とす肉……!? 豚肉と考えるにしても、見た目がアレだぞ。果たして食えるのか?
「夕食に何度か、お出ししたことがありますよ」
いつの間にか横にいたアイラから、衝撃の事実が齎される。
「マジで?」
「マジです」
これもまた、知らぬが仏か。
「ちなみになんで夕食限定?」
「滋養強壮に優れるからです」
「ああ、そういう……」
これはお肉がドロップしようものなら、今晩の献立にでも使われるんだろうな。
そんな気がした。
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