ガチャ209回目:ブリーフィング

 状態異常の実証見分があまりにも衝撃的過ぎて、連休しないとやってられないくらい、ナイーブな気持ちにさせられた訳だけど……。ここ最近、休んでばかりな気がする。前回の旅行で、休み癖とかついてたりしないよな? ちょっと不安だ。

 まあでも、あの研修は必要な事だとわかってるから、あまり引きずると彼女達にも心配をかける。気にしすぎないようにしないとな。


 この休日、名目上は『石化』の後遺症チェックも兼ねていたらしく、俺は心と身体両方を休める事に専念するように言われていた。気も病んでいたのでその通りにしていたのだが、逆に俺以外の4人は一緒に休みもしたがそれなりに動いていたらしい。

 なんと、俺の状態異常研修で参加できずにボイコットしてしまったエンキの取材について、対応をしてくれていたようだった。リビングでぼーっとしてたら、TVに彼女達が生放送で映るんだもん。流石に仰天したわ。

 ……本当に、皆には頭が上がらない。


 ちなみにリヴァちゃん達ゴーレムのコアは全て無印へと交換することに成功し、『魔力』の消費は無事に回復の方が上回ってくれたようで、『鷹の目』などのスキルを使用しても気持ち悪くなるような現象は無くなった。そして簡単にコアの入れ替えが出来る事が判明したため、この休日は休みながらも彼女達とコアを入れ替えた時に起きる差異を検証することにした。

 大まかな違いとしては基本的な強さ。……人間的に言うとステータスが変動することが分かった。判明したのは『腕力』『器用』『頑丈』『俊敏』の4つだ。『魔力』はコアのナンバー次第で最大値が変わるので検証はするまでもなかったのと、魔法スキルは1つも余っていない為『知力』周りの検証は出来なかった。でもたぶん、こっちも上がってそうな気はするけど。


 とりあえず、エンキの強さは上位のスキルを取り込んだり、コアのレベルを上げたりしない限りは成長したりはしないという事が分かったのは大きい。先日試せずにいた、無印のコアを100個集めて『圧縮』。なんて真似も成果はなかったし、その内『Ⅴ』以上のコアを自力で手に入れる必要がありそうだ。


『ゴ! ゴ!』


 手のひらサイズになったエンキが、目の前にある机の上で大きく手ぶりしている。


「ん? どうしたエンキ」

「もう、ショウタさん。聞いてませんでしたね?」

「え、あ。ごめん」


 おっとそうだ。ここはいつもの会議室で、今から第四層についての説明があるんだった。


「では改めて。第四層で出現する通常モンスターは2種類。ゴブリンとオークです。ゴブリンは『上級ダンジョン』と近い性質で、複数の種類が出現します。あちらでは『ファイターゴブリン』『レンジャーゴブリン』『アーチャーゴブリン』『ヒーラーゴブリン』『メイジゴブリン』『ナイトゴブリン』『ジェネラルゴブリン』の7種類でしたが、こちらは『ファイターゴブリン』『レンジャーゴブリン』『ナイトゴブリン』『ジェネラルゴブリン』の4種類です」

「あれ? 『ヒーラーゴブリン』がいるんじゃないの?」


 『回復魔法』を落とす奴がいるって聞いてたけど……。


「はい、通常モンスターではありません。落とすのはゴブリンのレアモンスターの取り巻きです」

「取り巻き……お供がいるのか。召喚されて?」

「いいえ、セットで湧きます」

「ほぉー!」


 それは新しい。今までのレアモンスターは皆ソロで湧いて、必要なら後から召喚させて来るタイプだったけど、最初から複数で出てくることもあるのか。


「ああ、やっぱりテンション上がった」

「やはり旦那様にはコレが一番効きますわね」

「元気になって下さりなによりです」

『ゴ』


 彼女達は俺の反応に笑っていたが、俺はそれに気付かず続きを促した。


「それで、オークの方は?」

「オークの方もレアモンスターの発見報告はありますが、特筆すべき点はないですね。あるとすれば、第四層のレアモンスターは二種類ともレベルが低いという点です。第二層の平均レベルより少し高い程度ではありますが、第三層に出現した『オロチ』の方が手強いですね」

「あれ? じゃあもしかして第三層の方がレアモンスター的視点でも難易度が高いってこと?」

「不思議ですよね。普通は、ダンジョンに潜るほど敵の強さもフィールドの手強さも増していくはずなのに、『初心者ダンジョン』の第三層だけはちょっと異常なんです。強さも、様相も」

「へぇ……。それは気になるが、まずは第四層を攻略してからだな。モンスターについてはわかった。他に気を付ける点は?」

「はい。第四層までの道のりは長くて、片道1時間半は掛る点です。それもこれも、第三層が原因ですが。道が険しくて、尚且つショートカットしようものなら内側は3種のモンスターが入り乱れる魔境です。誰もが大人しく境界線を通って行くしかないんです」

「ふむ……」


 となると、狩れる時間は4、5時間くらいか。行きをダッシュで駆け抜けたとしても、ほんの少ししか増えないのなら体力は温存した方が良いよな。


「ですので、他のチームと同様に私達もキャンプをします」

「え、キャンプ?」

「はい。キャンプ用品は前回の『ハートダンジョン』で使ったものがありますし、食材の仕入れも完璧です。まずはお試しで二泊三日から始めましょう」


 キャンプか……。たしか、シュウさんも同じような感じでやってるって話だったよな。もしかしたら、狩場で会えるかもな。


「勿論、旦那様も同じテントですわ」

「いや、何が勿論なのさ。ダンジョンなんだから分別を持って別々で――」

「見張りの必要がありますので、分けて寝るなど負担が増えるだけですので却下です」

「大丈夫よ、何もせずに寝るだけなんだからー」

「……ほんとに?」

「……ほんとよ?」


 ならこっちを見て言ってくれ。


『ゴゴ!』

「見張りは任せてくれ。ですって」

「ああ、頼りにしてるよエンキ」

『ゴ!』


 本来なら交代で見張りを立てる必要があるんだろうけど、エンキ達ゴーレムは睡眠をする必要がないみたいなんだよな。一応非活動状態の時は省エネモードというか、消費を抑えて動かなくなることも出来るんだけど……。

 でも、戦闘をせずに座ってるだけなら、一晩で『魔力』が尽きる心配はなさそうだな。にしても、ダンジョンでお泊りかぁ。考えたこと無かったな。今からちょっと楽しみだ。

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