ガチャ203回目:蛇種のレアモンスター
俺は『魔力』が尽きたあとの強制徴収が起きてしまった場合の懸念点を皆に話す。そして満場一致で、詳細が分かるまでゴーレムはこれ以上増やさない事となった。
「旦那様。せっかくアップグレードしてくださいましたけど、リヴァちゃん達のコアを元に戻したりは出来ないでしょうか」
「一方通行かは分からないけど、試してみる他ないか。幸い、彼らにはスキルを与えなかったから、スキル容量的には戻しても問題はないはず」
「もしくは、『魔力超回復』のレベルを上げる事ですね」
「そう都合よく出るかね。……いや、今までも結構都合よく出てきたけど、結果論だしな」
「ショウタさん、良いものが出るようにお祈りしてみますか?」
「こういう時こそ、ショウタ君の『運』が光るときでしょー」
「はは、その為にもまずはレベルを上げないとな。ここのレアモンスターは発見報告がないんだよね?」
「はい、ありません。第三層はほとんどの冒険者にとって通り道という認識ですから」
折角用意されてるのに、無視していくなんて勿体ない。
まるで見向きもされず存在しないような扱いに、『アンラッキーホール』のスライム達を思い出す。こういう時こそ、何かしらの掘り出し物が見つかるんじゃないか?
「じゃ、まずは蛇退治からだな」
起き上がり、マップを開く。
すると、進捗としては最初の蛇エリアの内40%ほどが明るくなっており、いつの間にか境界線にいた。さっきから揺れないなと思ってたけど、到着して待機してくれてたのか。
「……あ、見渡す余裕が無くて気付かなかったけど、もう宝箱あるじゃん」
「え、ほんと?」
改めて見れば先ほどの道程に2つほど緑の反応がある。今明るくした場所なんて、第三層全体で見ればまだ数%くらいしかないはずだ。だというのにもう2つも反応があるのか。
一般の冒険者もそれなりの頻度で見つけてるっていうし、割と楽しいエリアかもしれないな。
だったら尚更、頭痛なんて気にしてる暇はないよな! ……せめて今日だけは回避不可だし、弱音は吐かないようにしよう。
「エンキ、ここまでの道中で蛇は何体倒した?」
『ゴゴ? ゴゴー……ゴ!』
俺達の目の前に砂が集まり、『79』という数字が浮かんだ。
……器用だな。
「よし、奥に向かいつつあと21匹倒して行こう。頼むぞエンキ、お前が頼りだ」
『ゴゴー!』
◇◇◇◇◇◇◇◇
そうして再びエンキの頭上で『鷹の目』を使い、極力視点を動かさないようにしつつマップ埋めを進めた。今度は、レアモンスターと戦う事が確定しているので、鎧を着用済みだ。
そうしているうちにエンキの足元から煙がもくもくと吹き上がり、塊となる現象を目視した。
「煙が出た。俺は先に行くから、エンキは追いかけてくれ」
『ゴ!』
「あ、ちょ、ショウタ君!?」
エンキから飛び降りた俺は、制止の声を振り切り移動する煙を追う。マップを開けば、向かう先としては蛇エリアの奥地、ダンジョン壁が設置されているマップ端の方だった。通常モンスターはレアモンスターの煙を嫌う傾向がある為、煙を追う最中にエンカウントする事なく目的地へと辿り着いた。
「うわ、ジメジメしてる……」
そこは木々の中に隠れるように存在していた沼地だった。たいして広くはないし、底も浅そうだ。……いや、規模としては溜め池くらいはあるかもしれない。不用意に踏み込めば足が泥に取られてしまいそうだ。
そんな池の中央付近に煙が集まっている。煙はゆっくりと膨張し、中から何かがニュルンと落ちた。目を凝らしてみれば、一際大きな蛇が池の中を泳いでいる。
「あれがレアモンスター……?」
俺が呟くと、奴もこちらに気が付いたのか池から顔を出す。
「ぐっ!?」
奴と目が合った瞬間、身体が強張り、痺れて動けなくなる。『スタン』でも『魅了』でも『眩暈』でもない。新手の状態異常か!
だが、意識が途切れたわけではない。首から下が動かせないだけで、スキルも魔法も行使する事に問題はなさそうだった。
「『真鑑定』」
*****
名前:オロチ
レベル:45
腕力:600
器用:800
頑丈:450
俊敏:50
魔力:100
知力:100
運:なし
装備:なし
スキル:震天動地、水流操作Lv1
ドロップ:オロチの皮、オロチの霊丹
魔石:大
*****
「『震天動地』……? いや、違うな。この状態異常は特殊な固有スキルか」
『シュルルル』
『オロチ』は爛々と瞳を輝かせている。恐らくあの目がこの状態を引き起こしているんだろう。奴は舌なめずりをしながら、ゆっくりとこちらへと向かってくる……。
奴の全長は、目算10メートル以上。顔の大きさからして、人間も丸のみに出来そうな巨大な口は持っている。その面構えは、凶悪と言って差し支えないだろう。
今まで迷い込んだ冒険者も、コレにやられて行方不明となったのかもしれない。初見殺しとは酷い事をする。
1人だった場合の解決策は魔法でぶっ飛ばすくらいしか思いつかないが、せっかくの相手だ。動画で情報を残す為にも、ひとまず無力化ないし、攻撃を回避する他ない。
「『金剛外装Ⅲ』」
『シュルッ? シャアア!』
俺の周りに黄金の膜が現れ、『オロチ』は警戒するように叫ぶ。動いて避けることは出来ないが、耐え忍ぶことは出来る。少し待っていれば仲間達が駆けつけてくれるはずだ。
今はただ、彼女達が来るまでの時間さえ稼げればいい。
『シャアッ! シャアアァ!!』
『ガンッ! ガンッ!』
「無駄無駄」
『オロチ』は俺に食らいつこうと何度も牙を立てるが、その度『金剛外装』に弾かれのた打ち回っている。にしても初手から状態異常か。まだ第三層だっていうのに、搦め手で来られるとたまったもんじゃないな。
『ゴゴ!』
背後から巨大な質量が迫っているであろう足音と一緒に、エンキの声が聞こえた。大切な気配も近くに感じる。
「『サークル・キュアリカバリー』!」
そうして俺の身体を光が包んだ。
「旦那様、お待たせしましたわ!」
「お。身体が、動く」
『シュルル……』
新手の登場に、『オロチ』の視線が仲間達へと向いた。
「させるか!」
『シャ!?』
動けるようになった俺は、『オロチ』の首根っこを掴み、仰向けにして地面に叩きつけた。強い力でジタバタともがき、胴体が絡みついてくるが、俺の方が力も耐久も上だ。絶対に逃がしはしない。
『シャアアアッ!』
「これでお得意の睨みは使えない。さっきはよくもやってくれたな、蛇野郎。反撃の時間だ!」
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