第七章 新たな仲間

ガチャ173回目:休暇明け

 朝。食事を終え、ゆっくりとした時間を過ごしていると、端末に着信音が鳴った。

 開いてみるとシュウさんからのメッセージが届いていた。


『やあ。そろそろ旅行から帰ってくる頃合いだと思って連絡したよ。君の言っていた通り、とても楽しめる内容だったよ。あまりの面白さに、初心者ダンジョンとハートダンジョン2回ずつ動画を見ちゃったくらいさ! 本当に心が躍ったよ、ありがとう! それで動画を見ていて思ったんだけど、全部湧きポイントでそのまま連続狩りをしていたよね。確認なんだけど、最初のレアモンスターは別のところで狩りをしていても、必ず定められた出現ポイントに出現するんだよね。なら、レアⅡはどうなんだろう。ふとそれが気になってね。もう確認済みだったらすまない、忘れてくれ。楽しい時間をありがとう、心から感謝しているよ。またダンジョン内であったらよろしく頼むよ』


「あ゛っ……」

 

 全文を読み終えた俺は衝撃を受けていた。


「そういえばそうだった……!」


 最初のレアモンスターの煙が移動する事だけ考えていたけど、レアモンスターの出現場所の半数ほどがモンスター出現の中心地だ。普通なら、そこから引き離して戦いを始めるものだろう。だから、レアⅡの出現条件を満たしたとしても、『甲殻騎士』なんかのその場湧きを除けば連戦は起きずに、煙が定位置に移動してから出現するのかもしれない。

 ああ、しまったな。俺は構わずその場で連戦していたから、その辺りの検証がまるで出来ていなかった。失念してた……!


「そうだよな。レアモンスター出現地点が安全地帯じゃない『ボスウルフ』や『キングゴブリン』は、引き離して戦うのが正解だよな……。ああ、参ったな。言われるまで気付かないなんて、間抜けもいいところだ」

「ショウタさん、どうされたんですか?」


 その声に顔を向けると、いつの間にやらマキが隣に座っていて、見惚れるような微笑みでこちらを見ていた。旅行から帰って以降……。いや、旅行の途中から彼女の仕草一つ一つに妙な色気を感じるんだよな。たぶん、今までも彼女は可愛くて綺麗だったけど、俺が意識するようになった事で余計にそう見えてるだけなのかもしれないけど。


「どうしました?」

「あ、いや。何でもないよ。それよりシュウさんからメッセージが来てね。ほら、これ」


 マキに端末を見せていると、アキが後ろから近付いてきてるのがわかった。


「アキ、脅かしは効かないよ」

「ちぇー。もうバレたのー? ショウタ君成長早すぎでしょ。揶揄い甲斐がないわねー」

「大事な人の気配くらい読めないとね」

「……にひ」


 俺達は昨日まで、三泊四日の旅行に行ってきた。

 何が待っていて、どんなところに行くのか直前まで解らなかったけど、蓋を開けてみれば温泉旅館での湯治が目的だったらしい。なんだか凄そうな効能がツラツラと並べられた温泉に浸かって、身も心も癒すことが彼女達の主題の1つだったらしい。

 まあ、目的は当然他にもあって、その内の1つが俺の修業だった。なんでも早乙女家と宝条院家、両家がお世話になってる武術の本山が近くにあるとの事で、門を叩くことになったのだ。数日通う程度じゃ付け焼刃にもならなさそう。というのが最初に感じた事だったんだけど、俺の持っているスキルの内『知覚強化』『身体超強化Lv2』『体術Lv9』『格闘術Lv2』『剣術Lv5』『槍術Lv8』『弓術Lv2』が仕事をしてくれたらしい。どんどんと武術の基礎や技術を瞬く間に吸収していった。

 最終日には目を瞑り、『予知』スキル無しで、気配だけを読んで攻撃を回避する曲芸染みた技を学ばせてもらい、大体のコツは掴むことが出来た。そのおかげか、モンスターに関してはまだダンジョンに潜ってないので何とも言えないが、近くにいる彼女達の気配なら読めるようになっていた。


「ショウタさん。さっき、私の事は気付いていませんでしたよね?」

「うっ!? それはその、考え事してたから……」

「まだまだ修行不足です。精進してください」

「はい……」


 まあ、色々と考え込むクセは抜けて無いから、時折彼女達の気配を見失う事は多々あるんだよね。

 反省している内に、端末はアキの手元に収まっていた。内容を見た彼女も頬を掻く。


「あー、確かにそうかも。公開した動画の中で、その場湧きのレアモンスターは『ハートダンジョン』の第二層だけ。『初心者ダンジョン』のモンスターはどれも移動してから出現するのよね。盲点だったわ」

「陣地の外に連れて行ったら、また戻って湧いてくれる。もしそうだとしたら、『ストーンゴーレム』も警戒の度合いを下げても良いかもしれないんだよね。まあそこは、また今度確認するよ。丁度強化体の『ストーンゴーレム』を倒したいと思ってたところだしね」

「ごめんねショウタ君。思いつかなくて」

「気にしないで良いよ。むしろ自分で思いつかなかったことがちょっと悔しくもあるんだ」

「ふふ、ショウタさんらしいですね」

「そうかな?」

「そうよ」

「そうですよ」


 そして誰からともなく笑いだす。本当にこの数日は、ちょっと道場での研鑽や夜の時間が刺激的だったりもしたけど、心安らぐ時間を過ごせた。そしてその締めくくりとして、今夜は宝条院家の歓迎会だ。

 どんな出会いが待ってるんだろうな。


「あ、そういえばなんだけど」

「ショウタさんの礼装なら、ちゃんと用意してますよ」

「ほんと? 助かるー」


 成長してるのは俺だけではないらしい。マキも、アイラの様に俺の心が読め始めたらしい。

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