ガチャ135回目:半分の欠片

 アヤネと手を繋いでの探索ということもあって、効率面では目も当てられない状態だったが、彼女が楽しそうだったので良しとしよう。

 そんな中、30分ほどウロウロしてようやくマップに緑のアイコンが表示され、東側と同じような岩陰を発見。そのまま3人で中に突入すると、レリーフが違うだけで他は同じの、鍵穴の無い錠前で封をされた宝箱が鎮座してあった。

 レリーフは、やはり先ほど戦った『人面魚人』のものが彫られている。


「レリーフになるとキモさよりもシュールさが勝つな……。『真鑑定』っと」

「一応、カメラを回して映像に残しておきますわね」

「頼む」

「ご主人様、これも同じく視えますか?」

「ああ」


 名前:810-2-2

 説明:810ダンジョン第二層配置の??? 対応する虚像を捧げよ


「第一層には予備番号のようなものはありませんでしたわ。階層ごとにその数が増していくのでしょうか?」

「いや、出現するモンスターの種類次第だと思う。今のところ俺が知っている4つのダンジョンは、ほとんどの場合第一層は一種類しかいないけど、『初心者ダンジョン』の第二層は4種類いるしな。あと『初心者ダンジョン』だけど、あそこの第一層もちょっと問題があるんだよな。アヤネも見たかもしれないけど、あそこには、極稀にキラーラビットがいるんだよ。あれが本当にどうしたものかと、悩みの種なんだよな……」

「ご主人様が懸念されているのは、あそこの第一層で、キラーラビットのレアモンスター枠が設定されているかどうか、ということですね」

「ああ。更に最悪を想定した場合、湧きポイントが複数ある可能性が控えていることだ。もしも複数の箇所で湧くようなことがあったら、半日程度じゃ絶対に調べ切れない」


 最悪、丸一日貸し切りにでもしないといけなくなる。

 何故ならキラーラビットの出現比率、ゴブリンと比べると体感1対10、『運』が悪いと1対20くらいなんだよな……。


「大変な事になりそうですわね……。でも、旦那様ならきっとなんとかなりますわ!」

「どこまでもお付き合いいたします」

「ありがとう、2人とも」

「さ、こっちの宝箱の存在は確認したし、このまま東側の宝箱を回収に行こう」



◇◇◇◇◇◇◇◇



 北側に戻った俺達は、協会員に驚かれた。

 なぜなら、俺が鎧を脱いでいたからだ。……まあ、レアモンスターと戦いに行ったはずの奴が私服で戻ってきたらビビるよな。

 軽い会釈をしてそのまま東側を目指す。今の時刻は14時頃。人が少し減ってきたこともあってか、水着も着ずにうろつく俺達は目立つのか、周囲から視線を集めてしまった。まあこれは仕方がない。安全に東西を移動するには北側を通るしかないのだから、この視線は諦めるとしよう。


 そう思っているとアヤネがワクワクした表情でこちらを見上げてきた。


「旦那様、こんなに注目されているという事は、わたくし、ナンパされてしまうのでしょうか?」

「……嬉しそうな所申し訳ないけど、この注目はそういう類のものとは違うかな」

「残念ですわ……」


 しゅんとなってしまったアヤネを撫でている内に、境界線に到達。そのまま東側へと入り、一直線に宝箱のある場所へと向かう。

 前回と同じく隠れるように存在する岩陰を通り、空気のある海底洞窟へと侵入すると、『デスクラブ』のレリーフ入りの宝箱が出迎えてくれた。


「それじゃ……」


 宝箱に触れると、俺の持つトロフィーに反応したのか錠前が光り輝き、煙となって消える。

 鍵の消え去った宝箱をゆっくりと開けると、中にあった何かが俺に向かって飛び込んでくる。来ることが分かっていたため、今回はじっくりとその軌道を眺めていたが、俺の胸に当たるとスッと消えていった。

 この感じは、スキルオーブで何らかのスキルを得た時と同じような感覚を覚えるな。

 あと、いつの間にか宝箱が消えていた。


「旦那様、いかがですか?」

「ああ」


*****

トロフィー:ホブゴブリン

管理者の鍵:810(1)、810(2(1/2))

*****


「2(1/2)か。やっぱり、もう1個はさっきの『人面魚人』のものでこの層は終わりらしいな」

「数が分かるのはありがたいですね。となると、出現エリアは3つあるのに、対応レアモンスターは2種類という訳ですか」

「南側は全部見たわけではないけど、他に種類はいなさそうというのは助かるな。南側の海の中で、人面魚に追われながら宝箱を探すのは避けたかったし」

「旦那様、今日はもうこれでお終いですの?」

「ああ、明日からはまたしばらく『初心者ダンジョン』方面に戻る訳だし、早めに準備しないとな」

「ではダッシュで帰りましょう。先輩達も旦那様に早く会いたいはずですもの」


 そういってアヤネが負ぶさって来る。後ろから甘えてくる彼女を微笑ましく思いつつ、俺達は小走りでダンジョンから脱出した。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ステータスのお陰か、スキル無しでも随分と速く移動できるようになったな」

「そうですね。私達は2000の大台を突破しておりますので、小走りでも時速30kmは余裕で出せますし、本気で走れば……。ただ、一緒にいるお嬢様が危ないですから、抑えめに行きましょう」

「だな」


 アヤネは負ぶさるだけではあるが、しがみ付くだけというのも、それなりに負担はあるだろうし。


「旦那様の背中は世界一安全ですわ!」

「はは、ありがとう」


 そんな風に話しながら協会へと入り、いつもの様に奥の会議室へ案内された。

 しばらく待っているとアキとマキがやって来て、無事を確認するようにお互いに抱き合う。俺が普段から抱き枕にしているからか、彼女達もこういった行為に抵抗は無くなってきているように感じる。

 いや、マキの場合割と最初から距離が近かったか? まあ、2人とも恥じらいは捨てきれてないみたいだけど、それはそれとして可愛いから良いか。


 そうやってイチャついていると、一緒にやって来た支部長のヨウコさんが、呆れた顔をしていた。


「あなた達って、ほんとに仲良いわね。この協会で仕事をしていると、嫌でもカップルのイチャつきは目につくけど……。その中でもあなた達の仲の良さはトップクラスね」

「にひひ、先輩羨ましい?」

「それなりにね。……で、私に用があるらしいけどどうしたの? 君達が帰るって話はこの子達から聞いてるけど」

「ああ、それなんですが……。第二層のレアモンスター、あれの情報公開をお願いしたくて」


 他の冒険者に見られた以上、秘密にするのも限界がある。

 いるのではと勘繰られた以上、つつかれて面倒な事になる前に公開してしまおうという算段だった。

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