ガチャ118回目:第二層の秘密
新種魔法である『泡魔法』により発動した、バブルアーマーという魔法。
この魔法の真価は、海の中でも呼吸ができるという優れモノだった。どうやら、俺の身体を包むように展開されている膜の内側は、必要分の空気が供給されるようで、いくら水中で呼吸をしても萎んだりすることは無さそうだった。恐らく、俺の『魔力』を消費して、必要分の酸素なんかを生み出し続けているのかもしれないな。
この魔法の第二の効果として、水中であれば自在に浮き沈みを調整できるようだった。俺は今、自分の意思一つで海底に足を付けたり泳ぎ回れたりと、自由自在だった。まるで宇宙空間にいるような感じだな。
「これは便利な魔法だな。普通に喋ることも出来る。……あとは、同じ魔法を覚えてる人と会話ができるかどうかだけど……。そこは、また宝箱からのドロップを狙うしかないよな」
童心に帰る思いで水中散歩を楽しんでいると、マップに2つの変化があった。
1つは、突如として緑の点が出現したのだ。場所としては俺の現在の場所から10mほど前方。だが、日の光が入らない程薄暗い海底に沈んでいるのか、目的の物は目には入らない。
そしてもう1つは、人間を表す4つの白点だ。位置と数から考えて、間違いなく俺の恋人達なのだが、何やら急にテントの周りをグルグルしたり、散り散りになったりして……。
あっ!
俺が居ないから心配してるんじゃ――。
『ザポンッ!!』
そう思った矢先、背後に何者かが飛び込んできた。
振り返ってみれば、水着姿のアイラがそこにいた。目が合ったので、とりあえず手を振っておく。
「……仕方のない人ですね」
そんな事を言っているような、呆れ顔をされてしまった。
彼女は水を蹴って浮かび上がっていく。恐らく、俺の無事を伝えるためだろう。
俺も早く浮上して、彼女達に無事を伝えるべきなのだが……。
それよりも宝箱が気になる。怒られるのは覚悟して、もうちょっとだけ探索しよう。
悪いけど、もうちょっとだけ待っててほしい。
◇◇◇◇◇◇◇◇
海から出てきた俺は、バブルアーマーを解除して彼女達に駆け寄った。
「ごめん、心配かけたね」
「全くよ! テントから出たらいなくなってたんだから!」
「心臓に悪いです……」
「ほ、ほんとごめん……」
若干涙目のマキを見て、心臓がキュッと締め付けられた。
今回、間違いなく俺が悪いよな。
ちょっと楽しくなっちゃって、気が付いたら10分以上海の中を散歩してたみたいだし……。
「お詫びに、ちょっとデートしよっか」
そう言って、アキとマキ、2人の腰を抱き寄せる。
「え?」
「ショウタさん……?」
「わたくしも行きたいですわー!」
「うおっ」
アヤネが背後から抱き着いてくる。2人を両手に抱えた状態なら問題ないと思ってたけど、アヤネは小さいから、なんとかなるかな?
けど、アヤネは後でアイラと一緒に行くつもりだったんだけどな。
ちらりとアイラを見るが、彼女は水着姿のままだ。
「私の事はご心配なく。水中でも戦えるくらいには呼吸が続きますので」
「どんな肺活量してんの?」
「ご主人様も、もうそれくらいは出来るようになっていますよ。ステータスは、モンスターと戦うだけの名ばかりの物ではありませんから」
「あー……。じゃあ、アイラはそのままついてきて」
彼女が頷いたのを確認し、バブルアーマーを使用した。
薄い空気の膜が、俺達4人を包み込む。
「俺から離れないようにね。じゃ、海中デートにしゅっぱーつ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
ダンジョンの海と聞いて、まず最初に考えた事は、魚介類はいるのかどうかだった。
その疑問は、先ほど散歩した時に気付かされたことだが、すぐに解消された。俺達が泳いだり、ビーチボールなどで遊んでいた浅瀬には他の生命活動は一切感じられなかったが、ひとたび深い場所に足を踏む入れると景色が一変した。
周囲を様々な魚が遊泳し、足元には色鮮やかなサンゴ礁が広がっていた。その光景に彼女達は目を輝かせる。
美しい光景は人の心を奪い、手に取れる近さにあると、つい手を伸ばしてしまうものだ。
だから、俺の首元に添えられた2つの小さな手と、胸元に添えられた4つの愛らしい手。その内の2つが離れた事を知覚した俺は、すぐに呼びかけた。
「アヤネ、アキ、ストップ」
「ふぁっ」
「にゃ!?」
「この膜は、俺が形状を意識して常に展開し続けている魔法なんだ。だから、不意に手を伸ばされると泡が割れる可能性がある。気持ちはわかるけどね」
「あわわ、ごめんなさいですわ!」
「ご、ごめん……」
「あ、別に怒ってないよ。その代わり密着してくれると嬉しいな」
「「「はいっ」」」
そんな感じで3人とイチャイチャしていると、時折魚と一緒に泳いでいるアイラが視界に映る。こうしてみると、やっぱり彼女のプロポーションは抜群だよな。惜しむらくは肌面積が少ない水着であることだけど……。あんまりそれを言うと次は何を着てくるか分からないとこが怖い。
そう思ってると彼女と目が合う。あ、そういえば。
「アイラ、今俺達の声って聞こえてる?」
彼女はこくりと頷く。
そうか、この魔法は音を防がずにきちんと届けてくれるのか。ならやっぱり、いつか水中戦を繰り広げる事になった際には、必須と言える魔法となるだろうな。
そんな感じで10分ほど、水中デートを堪能したところで、
「ちょっと皆に見てほしい物があるんだ。この先にそれがあるんだけど……。アイラ、ここから前方20メートル付近にそれがある。先に行っててくれるか」
頷いた彼女は、水中である事を思わせない速度で移動していった。
まるでマーメイドだな。本来は海の乙女という意味だった気がするけど、アイラの場合、海でもメイドだとか言いそうだ。
アイラの後を追って、とある岩場の影へと入り込む。
その岩場の奥には空洞があり、空気が貯め込まれていた。先に到着していたアイラが、鎮座する宝箱の前で驚きを隠せないでいた。
洞窟内部へと侵入してからバブルアーマーを解く。
「すっごいところに宝箱あるのね!」
「ショウタさんは、これを見せたかったんですね」
「まあ、水中デートしたいってのも嘘じゃないよ?」
「ふふ、ちゃんと分かってますよ」
「とっても素敵でしたわ!」
アヤネを撫でていると、皆が改めて宝箱に視線を寄せる。すると次第に、誰もがその存在に疑問を浮かべ始めた。
「……あれ?」
「この宝箱は、一体……」
「変な模様が入っていますわー!」
その宝箱には、全体の色合いは赤がベースとなっているが、青色で『デスクラブ』の模様が刻まれていた。
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