ガチャ043回目:後始末を始めよう

 『運』の有無によって、レアモンスターの出現そのものが、決められている?


「もしもこの仮説が正しいとしたら、誰もここのレアモンスターを見たことがないというのも、納得出来る。そもそも沸かせられる条件を、誰も満たしていなかったんだから」


 けど、スライムの延長線上である『虹色スライム』は、『運』がたったの60で沸かせることが出来た。順当に行けば、あの程度の『運』では1%くらいしかなかったはずだ。

 対して今回の『黄金蟲』。俺のガチャを回す前の『運』、450ですら確定ではなかった。それどころか、400匹目でようやく出たくらいだ。期待値は25%。

 もし本当に25%しかなかったのであれば、『運』が10の場合の人が呼び出そうとした場合の確率は……。0.6%か。出現率が1%を割る場合、出現しない可能性がある、と?


「……仮説としては面白いが、これの通りだとした場合、『運』が18以上の人だけ要注意とする形になるのかな?」


 中々面白いテーマだ。考え出すと止まらなくなりそうだが……。


『こちらA班。調子はどうですか』

「あ、もう少しかかる」

『了解しました』


 おっと不味い不味い。考え事に耽っていた。

 今回はアイテム拾いはなし。ひたすら狩るか!



◇◇◇◇◇◇◇◇



「これで99!」


 さきほど『UR』で出てきた『鷹の目』は本当に便利なスキルだった。簡単に言えば、今自分がいる位置から、直上10メートルくらいの位置に、俯瞰で見れる視野が追加されたようなものだ。更に、このスキルは『自動マッピング』とシナジーがあるようで、2種類の合わせ技が使用できた。


 1:未開の森などの見通しの効かない場所でも、マップに反映されるようになった。

 2:『鷹の目』の効果範囲であれば、たとえ障害物の向こうであっても、モンスターの姿を鮮明に見る事が出来る。


 初めての場所なら1が便利で、2を使えばモンスターの姿形だけでなく、どの方向を見ているかまで正確に把握できるのだ。特定のモンスターを狙って討伐する事が日課の俺には、非常に便利で使い勝手の良いスキルだった。


「100!」


 死体から流れ出る煙の様子を見守る。今の運なら、大体3回に1回は出てくれるはずだが……。


 ボコボコ。


「出た! A班、応答を」

『こちらA班』

「レアモンスターの予兆を確認した。数分以内にそちらに出現する」

『了解しました! 総員、防御態勢!』


 隅っこまでは少し距離があるようだが、綿毛虫のフォルムになった煙は地面を滑るように動き出した。その速度は、1度目よりも速い。


「距離に応じて速度が変わるのか? なら、煙の出現から到着まで、毎回同じ時間になるのか?」


 考え事をしていると、目標地点に到着。A班と合流を果たす。


「待たせてすまない」

「ご苦労様です! あれが、レアモンスター出現の煙……!」


 ふむ。モンスターが煙になった瞬間の煙は目視出来ないけど、出現間際の煙は知覚できるのか……。もうほぼレアモンスターが中にいるから見えてるのかな?


 そう思っていると、本日2度目の『黄金蟲』が現れた。


「おお……」

「本当に出たぞ!」

「こちらA班。全隊に告ぐ。目標の出現を確認。動画と全く同じ、黄金のモンスターです! 『鑑定』情報に誤りありません!」


 やっぱりというか、レアモンスターを狙って出せるなんて与太話、信じてはもらえてなかったらしい。護衛の冒険者達からはそんな意味合いの呟きが漏れる。


『本部了解。アマチさん、討伐をお願いします』

「アマチ了解。……じゃ、ちょっと危ないので下がってて下さい」

「はい、お気をつけて!」


 調査員が護衛と一緒に森の中へと入っていく。


「さて……」


 改めて見ると、『黄金蟲』は出現と同時に『金剛外装』を使用しているようだ。つまり、何をどうしても初撃はあれに無効化されてしまうという事。

 なら……。


「おりゃ!」


 足元に落ちていた石ころを投げてみた。


『ガンッ!』

『シュルル!?』


 案の定『金剛外装』は効力を発揮し、消失した。ある程度の威力があればそれだけで発動しちゃうのか……。ふむ、俺が使った場合でもそうだけど、くだらない攻撃で無効にされちゃたまったもんじゃないよな。

 避けれるものは、今後もしっかり避けてやらないと。


『シュルルル!!』


 『黄金蟲』はなんだかお怒りのようだ。威嚇のつもりなのか頭をこちらに向けて吠えている。……けど、『金剛外装』は使用しないようだ。それに、『金剛壁』を使用している圧力も感じない。


「隙だらけだぞ。『怪力Ⅱ』『迅速Ⅱ』使用」


『斬ッ!!』


【レベルアップ】

【レベルが20から39に上昇しました】


 『黄金蟲』はあっけなく倒れてしまった。攻勢に出る暇を与えなければ、本当に弱いんだな。

 アイテムは……案の定全部出たな。


 今回の作戦に際して、ヨウコさんが説明をしてくれていたけど、アキが事前に、いくつか取り決めをしてくれていた。そのほとんどが、俺の事に対する秘密ごとなわけだが、1番重要なのがドロップ品だ。

 ドロップしたアイテムは、全て俺の物にして良いというものだ。まあ、レアモンスターの出現検証と、責任もっての討伐という外部のお手伝いさんという立ち位置なので、この報酬は適切だと思う。そもそも、沸かせてるの俺だしな。

 この作戦中、内部にいるのは俺達23名のみ。護衛はその間モンスターの討伐は厳禁としている為、沸かせるために何らかの行動を起こしているのは俺だけという事だ。


 あと、ドロップしたスキルについてだが、当然3つとも『Ⅱ』にしてやりたいので、スキルは全て重ね掛けに使用した。『黄金の種』と『黄金の盃』をリュックに詰め込み、次の地点へと向かう。


「それでは移動する、最後のポイントEではどこに出現するか分からないので、すまないがこのままここで待機を頼む」

「了解しました。ご武運をお祈りします」


 そうして、『黄金蟲』狩りが始まった。


「B地点撃破!」


【レベルアップ】

【レベルが19から39に上昇しました】


「C地点撃破!」


【レベルアップ】

【レベルが19から40に上昇しました】


「D地点撃破!」


【レベルアップ】

【レベルが20から39に上昇しました】


「これよりE地点へ向かう。少し休んでから行くのでちょっと待っててくれ」

『了解しました。連戦でお疲れでしょう、ゆっくりで構いません』

「申し訳ない」


 D地点を突破した後、俺は遅れると連絡を入れた。

 それはなにも、本当に疲れていた訳ではない。

 D地点のレベルアップの時点で、ガチャの中身が【10/110】だったからだ。


 俺は、モンスターも人もいない森の木陰に座り込み、最後の「10回ガチャ」を回した。

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この度「小説家になろう」にて、ローファンタジー月間1位の栄誉を賜ったので、

今日も3話です(2/3)

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