ガチャ028回目:鑑定スキルのレポート

「今日、ショウタさんがダンジョンに行っている間に、調べ物をしていたんです。ショウタさんが所持しているスキルに関する、実験レポートを全て。まだ途中ではあったのですが、その中で気になるレポートがあったのを思い出しました」


 マキは端末を操作して、何かを確認し始めた。

 いや今、さらっと『全て』って言ったよな? マキは、たった半日で、一体どれだけのレポートをチェックしたんだ?


「ありました、これです。『鑑定妨害』の実験レポートです。姉さんはご存じですよね、スキルの『鑑定妨害』と、アイテムとしての『鑑定妨害』の違いを」


 アイテム?


「ええ。ショウタ君に説明すると、ダンジョンの宝箱に、たまに『鑑定妨害』スキルが入ったアクセサリーがあるのよ。それを身に付けると、そのアクセサリー内のスキルレベルに応じた『鑑定妨害』機能が働くわ。当然装着型だから、アクセサリーを外せば妨害は機能しないの」

「ふむふむ」


 宝箱か。

 『アンラッキーホール』はそもそも宝箱が存在しないダンジョンだったから忘れていたけど、ここのダンジョンにはあるのかな?


「けどスキルとしての『鑑定妨害』は一度身に付けると永続で発動。スキルを忘れる事は出来ないから、レベルが上がれば上がるほど、その人はステータスを覗かれることは無くなるわ。あと、『鑑定妨害』は非常にレアなスキルなの。値段、知ってる?」

「いえ、知らないです」

「1億よ」

「……ち、ちなみに魔法は?」

「ショウタ君は炎と水だっけ? たしか3000と1500だったかな? これらは宝箱からの発見報告がほとんどなんだけど、便利だし珍しいから、冒険者は皆見つけ次第取得しちゃうのよね。それでちょっと高騰しちゃってるけど、割と見つかりやすいものなのよ」

「そうなんですね……」


 どうやら俺は、ガチャのランクを鵜呑みにしていたらしい。

 SRだから安い、SSRだから高いは、俺の勘違いだったようだ。


「話が逸れたわね。つまりスキルの『鑑定妨害』は本当に厄介なのよ。着脱不可の呪いのアイテムみたいなものね。秘密を抱えたい人には不可欠ではあるわ。まあショウタ君みたいに、何のスキルを持っているか誰も信じてくれないというのは欠点ね」

「それなんですけど、このレポートによればスキルの方の『鑑定妨害』は、妨害する対象を選べるそうなんです」

「そうなの!?」

「はい、レポートの発案者曰く、スキルを持っている人がそもそも秘密主義の人が多くて、中々協力してくれる人が見つからなかったそうです」

「それは納得」


 本部の調査も、協力者を見つけるのは大変そうだな。


「マキ、それはどうすればいいんだ?」

「はい、まずご自身のステータスボードを開いてください。その中で、公開しても構わないスキルを強く念じてみてください」


 マキに言われるまま、開示したいスキルを念じた。

 とりあえず、『鑑定Lv2』『鑑定妨害Lv4』『怪力Ⅱ』『迅速』の4つを選出してみる。


 特に何も変化を感じなかったけど、これでいいんだろうか??


「終わったようですね。では姉さん、お願い出来ますか?」

「おっけー。……おおっ!? 見えてる! 『鑑定Lv2』『鑑定妨害Lv4』『怪力Ⅱ』『迅速』だっ。紙で見るのと実際に見るのとでは、やっぱり衝撃が違うわー」

「成功のようですね。この開示機能は、もう一度見えないように念じれば、見れなくなるはずです」

「やってみる……。アキさん」

「あいよ。うわっ、完全に弾かれたっ!」


 アキさんはわざとらしく、大きくのけ反って見せた。


「それと『鑑定妨害』と『鑑定』に差があったときのレポートもあります。まず同一の場合と、『鑑定妨害』が高い場合は何も見れません。逆に『鑑定』が高い場合は、差が広がるほど見れる情報が増えますが、『鑑定妨害』が1でもある限り何らかの情報がマスクされ、すべては見えないようです。その優先度は不明ですが、傾向的にレア度の高いスキルほど隠されやすいようです」


 つまり、俺の『鑑定妨害』より高い『鑑定』持ちが現れたとしても、一番秘密にしたい情報は守られる可能性が高いってわけか。それを思えば、支部長から嫌な感じがしたあの時。『鑑定』を使われていたのかもしれない。

 アキさんが『鑑定』の高いレベルを持っている以上、支部長も同じである可能性が高い。それで、俺のスキルを覗き見て、期待出来ると判断したのかも。まあ、仮説だけど。


 あの時には既に『鑑定妨害』があったのは助かった。


「マキのおかげで『怪力Ⅱ』の存在を確認出来たわ。この情報を本部に伝えるけど、信じてもらえるか怪しい所なのよね……」

「アキさん、もしも俺の力が必要だったら言って欲しい。言い出しっぺは俺だし、アキさんを嘘つき扱いにはしたくない」

「ショウタ君……。ありがと、やれるだけやってみるわね。あと、実際に使ってみた? 違いがあったら教えて欲しいんだけど」

「当然調べました。効果もそうですけど、デメリットだった部分が緩和されてたんですよ」


 元のスキルの効果としては『2倍の力を出せる』『効果時間1分』『再使用に10分』だ。

 そしてⅡになった効果は『2.2倍の力を出せる』『効果時間1分30秒』『再使用に9分』だった。


「ちょ、それ……とんでもないことよ!? 力は変わってなかったのね?」

「体感上は、ですけど。もしかしたらⅢに上がるときに、わかりやすいくらいの変化が現れるのかもしれませんね」

「そっか。今のショウタ君の『直感』がそう言うのなら、信じられるわね」

「さっきは信じてくれなかったのに」

「そ、それとこれとは話が違うでしょ。……ぶー。頭、撫でて」

「あー……わかりましたよ」


 仕方なしにアキさんの頭を撫でるが、すぐにご機嫌になった。


「んふふー」

「ショウタさん、私、頑張りましたっ」

「そうだね、ありがとうマキ」


 マキは本当に頑張ってくれた。これは当然の対価なので、優しく丁寧に撫でる。


「えへへ」


 2人とも気持ちよさそうだ。

 ……ふぅ、腹ごしらえも済んだし、気力も貰った。


 後半戦、行ってみるか!

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今日もまた3話です。(1/3)

アキの一人称を「私」から「あたし」に変えました。

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