ガチャ027回目:信じてもらえなかった

 姉妹の説得を無視し続けた結果、お弁当を食べながら報告をする形で取引が成立した。

 マキが持って来てくれたお弁当の中身は、昨日俺が伝えた好物などが中心に取り揃えられていて、1日で用意してくれた事と、彼女の料理技術の高さに感動した。なので俺は、報告よりも食べる事に夢中になってしまい、彼女達の質問に相槌を打つくらいが限界だった。

 あまりに俺がお弁当に夢中になっているものだから、結局2人も食事を優先することにしたようだった。


「それ、あたしが作ったんだよー」


 アキさんが、俺が箸で掴んでいるおかずを指して言う。


「え、これをですか!?」

「袋から出してレンジでチン。簡単でしょー」

「……感動して損しました」

「でも、ほとんどマキの手作りだから、味わって食べなさいよねー」

「言われるまでもありませんね」


 用意された弁当箱の中身を平らげつつ、たまに両隣からおかずがやってくる。

 マキは相変わらずグイグイ来て「あーん」をしてくれるし、アキさんはイタズラっぽく笑いながらも食べさせてくれる。

 ここは天国か。


「ふふ、いっぱい食べてくださいね」

「両手に華ね、この幸せ者ー」


 これは俺もそう思うし、何も反論はしないことにする。

 これも、『運』の力か。それとも『運』はきっかけに過ぎず、今のコレは彼女達の献身っぷりが発揮されているだけなのか。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 食事を終え、ご馳走様をしたところで、振出しに戻る。

 どうやら2人の間では、俺の異名は『魔石ハンター』と呼び合っていたらしい。なので、『魔石』を確保しない俺に衝撃を受けてしまったらしい。別に俺は、稼ぐ手段が魔石しかなかったから拾ってただけで、


「それで、結局ショウタ君は、4体の『ホブゴブリン』を倒したのね」

「そうですね」

「ショウタさん、『怪力』スキルがこの場に無いというのは、ドロップしなかったんですか? それとも……」

「安心してくれマキ。ちゃんと出たし、しっかり俺自身の為に使ったから」

「良かったです!」


 マキは俺が強くなることを望んでいる。

 強いスキルを手に入れて、俺の力が上がったのが何よりも嬉しそうだ。


「いやぁ、ショウタ君の『運』を以てしても、ついに黒星がついちゃったかー。まあこれだけ倒せてるだけでもすごいことだけど」

「わ、私はアイテムよりも、無事に帰ってきてくれた方が嬉しいかな」

「ちょ、ちょっとー! そこでそれはズルイわよ! あたしだってそうなんだからっ!」


 姉妹のやり取りに顔が綻ぶが、ちゃんと訂正しておかないと。


「アキさん、それにマキも。俺の『運』を舐めないでほしいね」

「え? でも……」

「ま、まさかあんた」

「ちゃんと他でも全てドロップしたから」

「えっ!? でも、残りの3つはどこにも……」

「マキ、あたし達はこいつの非常識さを忘れていたわ。冒険者が一番やってはいけない禁忌の方法を取ったのよ!」

「ま、まさか重ね掛けを……」

「しました。全部」

「「ああ~……」」


 2人がガックリと、脱力したかのように肩を落とした。

 やっぱり、誰かが過去に試したんだろう。そして何も変わらなかったことに絶望し、以後、禁忌だとして誰も試さなくなった。


「しかも、1つどころか3つも……!? ホントにもう、ショウタ君のバカっ」

「で、でもショウタさんならまた取れますからっ」

「それはそうだけどさー」


 やはり、諦めきれずに3つも重ねた人は流石にいなかったみたいだ。


「フフフ」

「ショウタさん?」

「え、なに? やりすぎて頭おかしくなった?」

「2人とも何を心配してるんですか。もし本当に無駄にしたとしたら、笑顔で戻ってくるわけないでしょうに」

「た、確かにそうですね!」

「いや、いつも笑って戻ってくるあんたの場合、それは信用ならないって言うか……」


 アキさんが何か言ってるけど無視する。


「『怪力』は更に3つ重ねた結果、『怪力Ⅱ』になりました!」

「わわ、凄いです!」


 マキは拍手してくれるが、アキさんは呆れ顔だった。


「あれ、アキさん?」

「冗談を言っているようには見えないけど、そんなおかしな情報、簡単に信じられる訳がないじゃない。マキはショウタ君に妄信的だけど、あたしは冷静だからね」

「でも実際に」

「それ、どうやって証明する訳?」

「……あ」

「『鑑定妨害Lv4』があるんでしょ? 誰が確認できるってのよ」


 そうだ、この情報を認めてもらうには、しっかり誰かにスキルの有無を認識してもらう必要があるんだった。

 でも、それをするには『鑑定妨害』が邪魔をする。くそ、考えが甘かった……!


「ショウタ君って、いつもどこか脇が甘いのよねー」

「うぐ……。あ、じゃあアキさんに『怪力』を4つ使ってもらうっていうのは」

「どえっ!? な、なんでそうなるのよ!」

「アキさん仮にも支部長でしょ。ならそれなりに発言権はある訳で、それが手っ取り早いかなと」

「だからって、受付嬢が戦闘スキルを4つも使うなんて勿体なさすぎるでしょ。値段分かってる? 相場通りなら1億2000万よ!?」

「でも俺なら半日あれば~」

「それもそうだけど……!」

「それに、アキさん以外の発言力がある人に使ってもらうとなると、俺の秘密が~」

「うぅ~~~!!」


 俺とアキさんでやり取りをしていると、今まで何か考えていたマキが手を挙げた。


「2人とも、待ってください。その問題、どうにかなるかもしれません!」

「「えっ?」」

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今日もまた3話です。(3/3)

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