ガチャ024回目:心機一転、まずはご挨拶

 新装備は本当に名前の通りのようで、羽のように軽かった。本来は多少なりとも重みを感じてしまうのだろうが、このステータスになって以降、例えリュックに『鉄のナイフ』を詰め込んだとしてもなんの苦も感じていなかった。

 いや、それは言い過ぎた。多少の違和感はあるかも。


 そういえば、リュックの件で2人から言及があった。リュックの積載量に関しては対応策があるにはあるが、やはりこちらもお金がかかるらしい。優先順位は下だったため、今回は後回しになったみたいだった。


 現在の装備は、これだ。


『武器・鉄の長剣』5万円 ⇒ 『武器・第六世代型・御霊三式』4000万円。

『防具・鉄の防具一式』10万円 ⇒ 『防具・第四世代型・軽量ハイブリッドアーマーMK.2』1200万円。


「はは、一気にグレードアップしすぎだろ」

「ショウタさん、今日は約束通りお弁当を作って来たんですけど……どうされますか?」


 これは、ダンジョンで食べるか、戻ってきて一緒に食べるか、というお誘いだろう。

 アキさんがちょっと不安げな顔をしているのがいじらしい。


「勿論、戻ってきて食べるよ。アキさんも一緒で良いんだよね?」

「!! うん、一緒が良い!」

「ふふ、ではお待ちしています。12時半頃を目途にお願いしますね」

「わかった」

「それじゃ、マキと一緒に見送りをするわ。今はあたしだけが専属だけど、代理人が一緒についてきてはダメなんてルールはないもの」

「頑張ってください、ショウタさん。決して無理はしないで下さいね。……ご無事で」


 安心させるためにマキの頭を撫でる。アキさんもついでに撫でておく。

 マキは驚いた様子だったが、すぐに受け入れてくれた。アキさんは言うまでもない。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 宣言通り美人姉妹2人に見送られダンジョン入りを果たす。

 この装備は傍から見ても輝いて見えるから、装備だけ見ればこのダンジョンの下階層で活躍していてもおかしくないレベルだった。けど俺の主戦場はここ、第二層だ。

 午前中の目的は、『自動マッピング』の四隅埋め。そして、新装備でどれだけ変化があったか、に再挑戦して確認してみることだ。


 ここ第二層は本当に広く、マップの四隅を歩いて回るだけでもかなりの距離がある。その為、普通にやっていては半日程度じゃ済まないのだが、俺には『迅速』のスキルがある。

 このスキルを使い、疲労がたまらない程度に加速を維持することで、高速で動く事に慣れておきたい。まずは時速30kmほど。続けて40、50と増やしていき、慣れて来たら今度は別の工程を織り交ぜる。

 それは、キラーラビットとの接触は避け、ゴブリンを見かけたら通り抜けざまに首を落とすというものだ。その行為は正に辻斬り。当然、途中で止まったりはしないので、ドロップは無視して走り抜けた。


 今行っているのは、3つの意味がある。1つ目は、加速状態においてもまともに武器を振るえるようにするための練習。2つ目はマップ埋め。3つ目はゴブリン100匹連続討伐をついでに目指せる。

 という、一石三鳥の作戦だった。


 デメリットがあるとすれば非常に疲れる事と、何のドロップも得られないという事か。

 そうして第二層の3つ目の角をマップに書き込まれた時、それは起きた。そう、レアモンスター出現の予兆だ。


「レアモンスター出現は、やっぱり連続100匹討伐だけが条件みたいだな。ドロップアイテムの取得とか供養だとか、そういう面倒な行動は全て無関係、と」


 煙はモクモクと膨れ上がり、その場で膨張した。


「!? で沸くのか!」


 今までとは違う現象に驚くが、考えられる事は2つ。第二層では『ホブゴブリン』はどこでだろうと沸くと言うもの。もう1つは、この角が出現ポイントである可能性。


「後者の方であってほしいけどね」


 そうでもなきゃ、理不尽にもたまたま上手く行ってしまった不運な冒険者が絡まれることになる。でもそれなら、発見報告が増えてもおかしくはない。だからやっぱり、後者かな?

 まあ今はどちらでもいいか。


「よぉ、二日ぶりだな。会いたかったぞ、元気にしてたか?」

『グオオオ!!』


 煙の中から姿を現したのは、一昨日見たのと同じ『ホブゴブリン』。

 第一層と第二層で違いはない、という事か?


「鑑定」


*****

名前:ホブゴブリン

レベル:15


装備:鋼鉄の大剣

スキル:怪力

*****


「レベルが高い!?」

『グオオッ!』

「……あれっ」


 あの時より強いと思って身構えたが、その攻撃はなんら脅威を感じる事無く簡単に避ける事が出来た。確かにあの時対峙した『ホブゴブリン』より強いのだろう。攻撃力も上がっているし、大剣の振りも早い。

 けど、それだけだ。もうソレは、脅威ではない。


『グオッ! グオッ! グオオッ!!』


 念のため、『ホブゴブリン』の攻撃を何度も観察し、避けてみるが、やっぱりあの時と比べるまでもなく弱く感じる。恐らく高まった『運』による『直感』と、『予知』スキルの合わせ技で、何処に攻撃が来るのかハッキリと分かるのだ。


「レベルが上がったとしても、2度目以降となるとこうも弱いのか」

『グオオオ!!』

「いい加減煩いっての!」


 ズバッ!


 その剣の軌跡は、見事に『ホブゴブリン』の首元をなぞった。奴は大量の血を流し、倒れ伏した。


【レベルアップ】

【レベルが6から18に上昇しました】


「うわ……この剣、すっげー切れ味だな。ゴブリン相手だと実感できなかったけど、あんなに頑丈だった『ホブゴブリン』の筋肉をいともあっさり……。それに相手のレベルが高い分、経験値も多いみたいだな。おっと、そうだった」


 煙を放ち始めた『ホブゴブリン』を見て、懐からタイマーを取り出し起動する。

 レアモンスターが消える時間に個体差があると思って、持ってきたのだ。


 念のため、新手が出ても良いように十分距離を保って、成り行きを見守る。

 すると煙は、膨れ上がることなく、いつものようにゆっくりと霧散して行った。


「……消えた、か。時間は、恐らく5分だな。体感、第一層の時より長く感じたな。体格というより、レベルによって差が出てるのかも。これも要検証だな。ただ、第一層で沸かせると、他の冒険者達に迷惑掛かるんだよなぁ……。湧いた瞬間にぶった切る、か? でもあいつ、初っ端絶対叫ぶんだよな。今までの傾向からして」


 色々と試してみたいことが多すぎる。本当にこのダンジョンは楽しい。

 そうして、新しいオモチャであるドロップアイテムを見下ろした。


「よお、お前も二日ぶりだな」


 俺は手に入れ損ねたアイテムを掴み取る。


「『怪力』。当然、使用する!」

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今日からまた3話です。(3/3)

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