ガチャ014回目:検証と油断

 『ファイアーボール』の実戦試運転も兼ねて、剣で戦いながら魔法の行使を試していた。今までは近接戦闘1つに集中していれば良かったのだが、思った以上に魔法を維持して戦うのは大変だった。

 必要になった瞬間に魔法を使えれば良かったのだが、そう上手くはいかなかった。魔法の仕様なのか俺の不慣れから来る問題かは不明だが、行使から発動までに数秒のタイムラグがあったのだ。そんな時間を悠長に使ってしまえば、せっかくのタイミングを失ってしまう。

 だから先んじて魔法を使って、俺の近くに留めつつ戦ってみたのだが……どうにも集中しきれない。


 そう思っていたところ、2匹のキラーラビットに襲われた。とりあえず、牽制の為に使おうかと判断し、『ファイアーボール』を使用した。


「ぐっ!?」


 その瞬間、急激な悪寒と吐き気に襲われた。

 耐えられないほどではないが、突然の現象に混乱を隠せなかった。気は乱れ、意識は内側へと向き、何とか倒れないよう踏ん張る事に夢中になり過ぎた。その結果、本来キラーラビットへと飛ばすはずだった『ファイアーボール』は、狙いが外れ2匹の近くにあった川へと落ちてしまった。

 ところが。


 バシャーン!


『キキィッ!』

『キィ!』

「!?」


 巨大な水飛沫が発生し、キラーラビットは小さな津波に巻き込まれた。

 突然の出来事に混乱する2匹を見て、慌てて立て直した俺は、一気に近寄ってモンスターを切り捨てた。その攻撃は、見事に相手の急所を貫いたようで、2匹同時に煙となった。

 そして図らずもレベルが上がり、先ほどまで感じていた悪寒も吐き気も消えてなくなった。


「さっきのあれは、何だったんだ? 思えば『ファイアーボール』も小さかった気がする。レベルアップと共にあの悪寒が消え失せたのなら、魔法使用による疲労か? 前回レベルアップから使用し続けた回数は、確かさっきので14回。今のレベルは7だけど、さっきまでの俺の魔力は41。……となれば、『ファイアーボール』1発に付き魔力が3消費される計算か? 足りなくても発動はするけど、0になった瞬間あの悪寒と吐き気に襲われる訳か……。あれが強敵との戦いの最中に起きたら非常にまずい。あと何発魔法を打てるか、よく考えながら使わなきゃな」


 魔法にも弾数はあるだろうと思ってはいたが、まさか限界が来るとあんな事になるなんてな。だがやはり、実験はしておくべきだな。もし気付かずにレアモンスターとの戦いで発生していたら、死んでしまっていたかもしれない。

 あとは、さっき気になる事が起きていたな。


「『ファイアーボール』を川にぶつければ、あんな爆発が起きるのか……。これなら、咄嗟の時にも役立てそうだ。それに、魔法を維持しながらの戦いはどうにも集中できない。けど必要になってから出すのでは手遅れだ。となれば……必要になる状況に追い込みつつ、魔法を行使するか……?」


 けどそうなると、相手の行動パターンを予測する必要が出てくる。

 何度も戦えば大体の動きはわかるけど、それだと結局、初見の相手と戦う時に苦労することに……。


 そんな事を考えつつ、もう1度先ほどの現象を再現できないか試す事にした。今の魔力は42。計算上、14発目はしっかりと発動するが、その瞬間あの症状に襲われるはず。そして適度にモンスターを狩りながら、14発目を発動させた。


「ぐっ……!!」


 やはりこの不快感は辛いものがある。しかし、来ると分かっているなら耐えられない事もない。魔法を完全に手放し、近接戦闘だけでモンスターを狩り、レベルを上げる。


「ふぅ……落ち着いた」


 こんなことを毎回していては、心が摩耗しかねない。だが、想定した通りの結果になったことに、俺は小さな満足感を得ていた。

 その後も、魔法を使った様々な戦いを試しながらキラーラビットを殲滅していく。今朝と違って、今度は『キラーラビットの角』が鞄を圧迫し始めた頃、レベルが11に到達した。


「ゴブリンより手強い分、レベルが上がるのも早かったな」


 ゴブリン100匹で、レベル8から11になったけど、キラーラビット90匹でレベル2から11になった。やっぱりキラーラビットの方が格上なんだな。

 周囲を確認し、ウキウキした気分でレベルガチャを起動。いつものように「10回ガチャ」を押した。


『ジャララララ』


 結果は、青色6、赤色3、紫1だった。


「よしっ、また紫!」


『R 器用上昇+3』

『R 頑丈上昇+3』

『R 俊敏上昇+5』

『R 魔力上昇+3』x2

『R 知力上昇+3』

『SR 腕力上昇+12』

『SR 頑丈上昇+15』

『SR 頑丈上昇+7、俊敏+7』

『SSR スキル:予知』


*****

名前:天地 翔太

年齢:21

レベル:1

腕力:59(+55)

器用:52(+48)

頑丈:59(+55)

俊敏:63(+59)

魔力:42(+40)

知力:50(+48)

運:140


スキル:レベルガチャ、鑑定Lv2、鑑定妨害Lv2、自動マッピング、身体強化Lv2、予知、投擲Lv1、炎魔法Lv1

*****


「『予知』? 正に読んで字のごとくって感じだけど……『ダンジョン通信網アプリ』になら詳細が乗っているかな?」


 どれどれ。


『戦闘中、次に相手が動くと思われる、予測された未来を感じ取れるスキル。戦った事のある相手であったり、一度見た動きであるほど、その予測は正確になる。また、なんらかの条件で発生確率が変化するらしいが、希少なスキルである為詳細は不明。末端価格2億~』


 俺はその数値が見えた瞬間に端末を切った。うん、俺は何も見てない。


「というか、俺が欲しいと思ってたスキルがそのまま来たな。これも『運』によるものなのか……? しかし、ステータスだけなら、とっくに初心者の域は脱しているよな。スキルだけでも、こんなに持ってる奴はそうそういないだろうし。スキルの供給源として、頼みの綱であるSRからスキルが出ない事があるのは残念だけど、ステータスはステータスで、増えていくのが実感出来る数値だから嬉しいよな。これまで結構引いて来たけど、残りは……」


『ボックスの残り30/100』


「30個か。使い切りまでもう少しだな」


 このスキルを得てからまだ3日目だっていうのに、もうここまで減ったのかという感想と共に、強くなった実感が湧いてくる。


「さて、キラーラビット100匹まで、あともう少しだ。一気に狩るぞ!」――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!


「小説家になろう」ローファンタジー日間ランキング1位をキープしているので、今日も3話投稿です。(2本目)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る