ガチャ005回目:100匹チャレンジ
「……ダメだったか」
1時間後。慣れないダンジョン、そして人気のダンジョンということもあり、ゴブリンを見つけるのに苦労した。が、なんとか100匹目のゴブリンを討伐することに成功したところでレベルは11に上がり、『運』も80に上がった。
けど、ゴブリンに関連するレアなモンスターが出現することは無かった。
「100匹連続は、結局スライム限定の仕様だったのか? それとも、『運』の問題で失敗の確率を引き当てた? スライムなら、この『運』があれば90%の確率で湧いてくれるはずなんだが。ゴブリンは確率が違うのか? ……もしくは、途中で別のモンスターを倒してしまったのがいけなかったのだろうか?」
ここ、初心者ダンジョンの1階層目は、ゴブリンの他にもう1種、キラーラビットという兎に角が生えたモンスターが出現する。兎と聞くと弱そうに思えるが、最初の初心者の壁と言われるほどには手強いモンスターだ。
出会うのは稀だが、小さくてすばしっこい上に、頭の角は防具のない所に当たれば、身体に穴が開くほどの威力がある。
幸い、『頑丈』ステータスが30もあればかすり傷で済むらしいが、試す気にはならなかった。
そんなモンスターとは、ゴブリン討伐の34匹目を達成した直後に戦う事になった。こちらから挑んだわけではなく、曲がり角を越えた瞬間、出会い頭に突進されたのだ。
不意の戦いに驚き迎え撃ったところ、苦も無く倒してしまった。
強敵と思って身構えてしまったが、『身体強化』を持つ俺にとっては敵ではなかったらしい。けど、『100匹連続』という目標の邪魔になりそうだったのでなるべく戦いたくはなかったのだが……。不意の事故というのは恐ろしい。
「とにかくまだ時間はあるし、もう1度ゴブリンを狩ってみればいいか。あと34匹ならなんとかなるだろうし。……あ、でもレベルが勿体ないからガチャを回すか」
マップを参考に行き止まりの袋小路に入り、壁に向かって『レベルガチャ』を使用する。
そして迷いなく「10回ガチャ」を押した。
『ジャララララ』
すると今回も、赤色2つと青色8つのカプセルが出てきた。
「確定分以外でも赤色が出るってことは、割と運が良い方だよな。……もしかしてここでも『運』の補正が掛かっているのか?」
こればかりは確率の記載もなければ、検証のしようもないため、ひたすらに数を重ねるしかなさそうだけど。
『R 腕力上昇+5』
『R 器用上昇+5』
『R 頑丈上昇+3』
『R 俊敏上昇+3』
『R 俊敏上昇+5』
『R 魔力上昇+3』
『R 知力上昇+3』x2
『SR スキル:自動マッピング』
『SR スキル:鑑定Lv1』
*****
名前:天地 翔太
年齢:21
レベル:1
腕力:41(+37)
器用:18(+14)
頑丈:31(+27)
俊敏:43(+39)
魔力:21(+19)
知力:14(+12)
運:80
スキル:レベルガチャ、鑑定Lv2、鑑定妨害Lv1、自動マッピング、身体強化Lv2
*****
◇◇◇◇◇◇◇◇
「『自動マッピング』、便利だなぁ」
新たに獲得したこのスキルは、『マップ』と唱えれば半透明な地図画面が目の前に表示され、文字通り一度移動したことのある場所なら自動的にマッピングされていくものだった。しかも、『マップ』に表示されるのは地図だけではない。
新たに湧いたモンスターを示す赤い点や、人間を表す白い点なども表示されていた。
残念ながら一度も足を踏み入れていない場所の情報はなにも表示はされないのだが、全て踏破してしまえば問題は無いだろう。
そして『鑑定Lv2』になったことで、対象のスキルが読み取れるようになった。
けど、ゴブリンはいたって普通のモンスターだ。スキルは何も持っていなかったが。
「よし、これで100匹目」
この『マップ』情報を駆使して、他に人間がいないところのモンスターだけを重点に狩る事が出来た。更には不意の事故も回避することで、先ほどのようにキラーラビットと遭遇する事もなく、難なく100匹連続を達成した。また、その過程でレベルも7になり、全て『運』に割り振っておいた。
その時、不思議な現象が起きた。
ゴブリンの身体からいつものように緑色の煙が現れたが、その煙の動きは明らかにおかしかったのだ。
「なんだ?」
本来なら、モンスターの死体の上で留まり、しばらくすると霧散して消えてしまうはずのものが、意志を持ったかのように浮かび上がったのだ。
それだけにとどまらず、洞窟の壁や地面、天井からは同じくゴブリンと思われる緑色の煙が湧き出て来ては吸収されていった。そして膨張した煙は一体となって、洞窟の奥へと飛んで行く。
「なっ、待て!」
煙を追いかけいくつかの角を曲がると、そこはさきほどガチャをした、何もない行き止まりへ辿り着いた。けれど俺が辿り着いた時には、その空間は先ほど以上に溢れた煙が充満していて、あまりの濃度に奥の壁が見えないほどだった。
固唾を呑んで成り行きを見守っていると、煙の中から巨大な手がこちらへと伸びてきた。
「うわっ」
慌ててその場から飛びのくと、次第に煙が晴れ、中から2メートルを超える巨大なゴブリンが現れた。
『グオオオオッ!』
耳をつんざく雄叫びに顔をしかめながら、スキルを行使する。
「か、『鑑定』!」
*****
名前:ホブゴブリン
レベル:10
装備:鋼鉄の大剣
スキル:怪力
*****
「ははっ、これが1層目のレアモンスターか。スライムの時とは強さも出現方法も、全然違うじゃないか」
『オオッ』
ホブゴブリンが俺を認識した途端、突っ込んできて大剣を振り下ろす。命の危険を感じた俺は、咄嗟に横に飛んで避けた。
ドガガッ!
地面に激突した剣は欠ける事無く、逆に岩肌の方が砕け散った。その風圧と、粉々になった岩をみて血の気が引くのを感じた。
「こんな攻撃、直撃したら死ぬだろっ!」
『オオオッ!』
最初に仕留めそこなったのが腹立たしかったのか、ホブゴブリンはその後も執拗に剣を振り回した。
だが、幸いなことに俺のステータスは『俊敏』が一番高い。対してホブゴブリンは、『腕力』はスキルも合わさって怪物のようだが、動きは単調で分かりやすいものだった。
「せいっ!」
シュパッ。
幾度かの攻撃を回避して、隙を見つけて初撃を入れる。だが、その傷は軽微だった。
ホブゴブリンは防具を身に付けていないのにも関わらず、その筋肉質な皮膚は非常に硬かった。
「俺の『腕力』もかなり上がったはずだけど、こいつの『頑丈』は更に上だな。こいつのレベルはたった10だってのに、あまりの違いに悲しくなる」
あまりの『頑丈』さに表面を傷つけるのがやっとだと思われた。
しかし、だからと言って諦めて逃げるのは違うだろう。攻撃が通じにくいと言っても、全く通じない訳ではない。
それにこいつは俺が実験し、呼び出してしまったモンスターだ。勝てる可能性があるのに逃げ出して、他の誰かが犠牲になりでもしたら、最悪だ。呼び出した以上、ギリギリまで面倒を見るのが俺の責任だろう。
そうして諦めず攻撃を続けた結果、またしても不思議な事が起きた。それは、何度か繰り返し攻撃を続けていくと、なぜかこちらの攻撃が
そんな
『グ、オオ……』
いくら『怪力』という強力なスキルを持っていても、我武者羅に振り回し、その度にこのような怪我を負っていては、スタミナも限界が近いのだろう。その動きには、精彩さが欠けていた。
ヒット&アウェイで戦い続ける事、約10分。ついにホブゴブリンは地に伏し、煙へと変わった。
【レベルアップ】
【レベルが7から17に上昇しました】
「ふぅ……疲れた」
レベルが一気に上昇。こんな経験は今までになかった。それだけ強敵だったんだろう。
いつものように『運』へと『SP』を全振りしたところで、ふと思った。
「……あれ。ここで、次のレアモンスター出たら、やばくね??」
目の前には、未だ残留し続けるホブゴブリンの煙があった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます