ガチャ002回目:その代償は
「レベル、ガチャ?」
見た事も聞いた事もないスキル名に、目を疑った。
だが、目の前に表示されたステータスボードには、確かに【レベルガチャ】と表記がある。
こんなギャンブル染みたスライム狩りに身を投じる馬鹿野郎な俺だ。「ガチャ」が何かくらいよくわかる。だが、「レベル」と付くからには……。
【レベルガチャを使用しますか?】
「……試して見なきゃわかんないよな。使用する!」
『ガコンッ』
何もなかったはずの空間に、突如としてカプセルトイマシーンが現れた。
お金を入れてレバーを回せば、中からカプセルが出て来て景品がもらえるアレだ。
だけどそこにあるのは、普段おもちゃ屋で見かけるような物とはいくつか異なっていた。まずお金を入れるところがない。その代わりに大きなボタンが2つ備わっていて、そこには『1レベル』と『10レベル』と書かれていた。
商品の中身が記載されているのであろう正面の張り紙には、こう書かれていた。
『所有者のレベルを消費して豪華景品をゲットしよう!』
『1回ガチャはRランク以上が出ます』
『10回ガチャはSRランク以上が確定で1個以上出ます』
『ボックスの残り100/100』
「100個も入っているようには見えないが……」
張り紙の向こう側にあるケースは、不透明になっていて中身がよく見えない。
いや、それよりも。
「なんだ、これは?」
ダンジョンが出現して早10年。世には様々なスキルや魔法が発見され、それにより科学文明は大きく発展して来た。
だけど、これは今まで見てきたものとはまるで異なる。
「……考えるだけ無駄か。結局、スキルなんて常識の外にあるものなんだ。使ってみなければ理解のしようなんてない」
ではまず、どちらを回すべきか。
現在の俺のレベルは31。初期レベルが1であったことから考えても、1以下にはなることはないだろう。
けど、このレベルは3年間の努力の結果でもある。特に20から30に上がるのに、1年半……いや、2年近く掛った。それがたった1回のボタンで、消え失せる……?
自然と「1回ガチャ」と明記された方のボタンへと手が伸びるが、指が震えた。
「けど、小数点以下の確率を引き当てるのに、3年も要したんだぞ……? そんな俺が、単発ガチャを引いて、たったの10回でSR以上を引き当てられると思うのか? ……思わないね」
確率も記載されていない以上、馬鹿な真似は出来ない。ちなみにここで「引かない」という選択肢は、俺には無かった。
指の向きを変え、「10回ガチャ」へと伸ばす。
「どうせ無駄にするのなら、派手に使わなくっちゃな!」
『ぽちっ。ジャララララ』
謎の演出音と共に、マシーンから10個のカプセルが出てくる。
その色は、赤色3つに、青色が7つだった。
「どっちがどっちだ……?」
色違いが複数出てきたことは素直に嬉しいが……。まずは数が多い青色の方から開けてみる事にした。
『R 腕力上昇+3』x2
『R 腕力上昇+5』
『R 器用上昇+3』
『R 頑丈上昇+3』
『R 俊敏上昇+5』
『R 魔力上昇+5』
「ステータス永久増加のアイテムか! しかし、これは……どうなんだ?」
中にはそれぞれの効果が記載された、輝く珠が入っていた。スキルオーブに酷似しているが、モンスター討伐や宝箱開封などでたまに出没するアイテムで、オークションなどでもよく見られる代表的な物だ。
もちろん、このダンジョンに宝箱はなく、レアなモンスターはあの色違いスライムのみ。その様なアイテムが出現した事は一度もない。
青色の数からみて、これが『R』なのだろう。
確かにステータス永久増加のアイテムは珍しいし、+3はさておき+5に関しては1レベル分は先に進めるということもあって、かなり高値で取引されていたはずだ。
+3と+5の違いは、一番下である『R』の中にも当たり外れがあるということだろう。
だが結局の所、この結果は良いのか? それとも悪いのか?
それを確かめるためにも、俺はステータスを確認することにした。
*****
名前:天地 翔太
年齢:21
レベル:21
腕力:24
器用:24
頑丈:24
俊敏:24
魔力:22
知力:22
運:60
スキル:レベルガチャ
*****
「……あれ? 『SP』で使用した『運』が、減っていない?」
レベルアップで上昇した、レベル10分の各ステータスの値は、文字通り10ずつ減っていたが、その間に得られた『運』の数値はそのままだった。
ここに先ほどの増強アイテムを使用してみる。
*****
名前:天地 翔太
年齢:21
レベル:21
腕力:35(+11)
器用:27(+3)
頑丈:27(+3)
俊敏:29(+5)
魔力:27(+5)
知力:22
運:60
スキル:レベルガチャ
*****
「このレベルでこれは……。いや、一般的な数値には程遠いけど、それでも今までの俺と比べればかなり違う。腕力に関しては、31の時よりも高いぞ。……ああそうだ、赤色のカプセルが残ってたんだった」
足元に転がっていた赤色を手に取る。よく見れば、青色のカプセルはいつの間にか消えてなくなっていた。
「ゴミを出さないカプセルか。便利だな」
そんな暢気なことを呟きながら、それぞれの開封作業を進めた。
『SR 腕力上昇+10』
『SR スキル:鑑定Lv1』
『SR スキル:身体強化Lv1』
「ス、スキルまで得られるのか!?」
早速使用してステータスを確認する。
*****
名前:天地 翔太
年齢:21
レベル:21
腕力:45(+21)
器用:27(+3)
頑丈:27(+3)
俊敏:29(+5)
魔力:27(+5)
知力:22
運:60
スキル:レベルガチャ、鑑定Lv1、身体強化Lv1
*****
「なんだよこれ、こんなの使い得じゃないか。……ふふ、ならあと20回分は回せるな」
俺は迷うことなく、「10回ガチャ」を2回押した。
結果は、青色16個。赤色4個だった。
『R 腕力上昇+3』x2
『R 腕力上昇+5』
『R 器用上昇+3』x2
『R 頑丈上昇+3』x2
『R 頑丈上昇+5』
『R 俊敏上昇+3』x2
『R 俊敏上昇+5』
『R 魔力上昇+3』x2
『R 魔力上昇+5』
『R 知力上昇+3』x2
『SR 頑丈上昇+10』
『SR 俊敏上昇+15』
『SR スキル:鑑定妨害Lv1』
『SR スキル:身体強化Lv1』
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