地下壕の怪物
真夏の盛りに至って、油蝉の死骸に蟻が群がっている。僕はシャツのボタンを外して
「こんな深夜なのだから、誰かと
数年前に母親を亡くした時も涙は流れなかった。肉親を失った
※
人目を忍ぶように墓参りを済ませた
薄っぺらな座布団に腰を下ろすと、さして強くもないくせに酒を
数少ない友達の一人だったK君は強い正義感の持ち主だった。彼は大学を卒業した後に警察官として市民を守る道を選んだ。たが、皮肉にもK君の正義は市民によって裏切られたようなものだった。
K君は交番勤務に向かう途中にトラックに跳ねられて死んだ。運転手は長らく
壮絶なまでの友人の生涯を思うと、自分の未練がましい生き様が浅ましく感じられた。世間に顔向けできないような後暗い暮らしを送っていることが恥ずかしい。社会に支えられることでようやく立っていることが情けない。僕は不安を拭い去るためにも酒を飲み続けた。
※
ピチョンピチョンという
カンテラの
暗闇に
――ああ、僕はこの不気味なものに喰い殺されるのか――
その瞬間、何者かに手を思い切り引っ張られた。カンテラが地面に落ちてガラスが砕け散る。真っ暗闇の中で誰かが
急いで振り返ったが、太陽の光に眼が
※
目を覚ますと身体のあちこちが
(了)
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