第4話 企画&ライターの作業工程を教えて?


 前回の記事では、ノベルゲーム制作のおおまかな流れを説明しました。

 今回は企画&ライターに的を絞って、作業の流れについて解説します。


 ゲーム制作の流れを知らないと、きちんとした企画は立てられません。

 なかなか実務作業に入れませんが、もうしばらくお付き合いください。


 なお、初心者向けの解説になっておりますので

 ゲーム開発の流れをご存じの方は読み飛ばしてもかまいません。



 ■企画会議 ~ およそ1ヶ月 ~


 企画作りは、まっさらな状態からスタートします。

 スケジュールも予算も決まっていません。


 まずは『企画会議』を行い、スケジュールや予算を確認。

 新しく立てる企画の雰囲気、

 目指すべき方向性(テーマ)を決めます。


 企画が立つ前の会議は

 前作の作業や、他企画との同時並行で行われることが多いでしょう。


「次回作なんだけど。スポンサーやクライアント(様)

 プロデューサーが提示してきたスケジュールと予算はこんな感じ。

 テーマも決まってないけど、とりまこれで企画を考えてみて☆」

 と、「ふわふわ」とした状態で話を振られることになります。



 初期段階で依頼主から、

 スケジュールと予算、テーマが提示されていたら

 それらの項目を考慮に入れつつ、

 企画の初期案を『何作』か提出します。


 もちろん『全ボツ』を食らうこともあります。

 めげずに頑張りましょう。


 初動にどの程度時間を割くかは開発現場によります。

 今回は企画を練り、提出して、承認が得られるまでを

 仮に『1ヶ月』とします。




 ■設定&プロット作り : およそ3ヶ月


 企画書が通れば、

 シナリオを執筆するための『設定』作りが始まります。


 企画書が完成した段階で、プロデューサーが

 原画家(イラストレーター)さんにキャラデザを発注します。


 同時進行で、

 シナリオの設計図にあたる『プロット』作りも行います。


 企画が通れば予算も下りるので、

 ギャラも発生します(やったね!)


 これらの作業を完遂するには、

 およそ『2~3ヶ月』かかります。


 設定とプロットを決めながら、

 背景などの『仕様書』も作成するので、

 思っている以上に時間がかかります。覚悟しましょう。



 ●ヒント:プロットとは?


 小説における『あらすじ』の内容を、より具体的にまとめたもの。

( カクヨムユーザーさんならご存じでしょう)


「魔王が出てきて姫を誘拐して、なんやかんやあって勇者が倒す」

 という物語の流れ(概要)が、あらすじです。


「なんやかんや」の部分を、具体的なイベント内容にまとめ、

 章立てたリストを『プロット』と呼びます。


 誰が、いつ、どこで、何をするのか(イベント)

 といった内容を箇条書きにして、シナリオ執筆時の指針とします。


 開発現場によっては、シナリオテーブル、イベントテーブル、

 シナリオリスト、イベントリスト とも呼びます。



 ■素材を発注する


 プロットがあれば、ゲーム内で使用する『素材』がわかるので

 仕様書を元に、背景や音楽、SEなどを担当者に依頼します。


 現場によって異なりますが、

 仕様書の作成はディレクターが行うこともあるでしょう。


 ですが、その仕様書の元となるデータを作るのは

 企画を立てた本人です。


 何故かって?

 テレパシーでも使わない限り、あなたの頭の中を覗けないからです!


 というわけで、キャラの容姿や舞台となる町の景色、

 作品に漂う雰囲気(退廃的か明るいのか、西洋か東洋か……など)

 をテキストに書き起こしてまとめましょう。

 キャラデザ、背景デザイン、BGMの方向性を掴むのに役立ちます。




 ■シナリオ執筆 : およそ4ヶ月


 ここまでの作業で、すでに3~4ヶ月かかっていますね。

 春から企画をスタートさせていた場合、すでに夏です。

 アイスを食べている暇もありません、続いて『執筆』に入りましょう。


 ノベルゲームのシナリオライターが一日で書けるテキスト容量ですが、

 人によって大きなバラつきがあります。


 今回は、

『一日でおよそ15KBのテキストを書く』ものとします。


 1日15KBというのは、

 空下が個人的に計測して出した平均執筆量です。

(多いか少ないかは、みなさんの判断にお任せします)

(文字数でいうと、7500文字くらいです)



 1時間で2KB(1000文字くらい)分の文量を書くとして

 8時間労働を行った場合……


(2KB×8時間) - (気乗りしない日のマイナス分)=15KB

 となるわけです。


 シナリオは”水もの”なので、

 書けない日は0KB。気合いが入ると30KBくらい書きます。


 一般企業に倣って土日祝日はお休みを頂くとして

 平日8時間、5日間働くとします。


 一日15KB × 20日間労働 = 『300KB』(15万文字)

 これが、一ヶ月の平均シナリオ工数です。(あくまで一例です)


 1.8MBのシナリオ容量があるノベルゲームを制作する場合、

 単純計算で『シナリオ執筆に6ヶ月』かかることになりますね。


 今回は

「ライター二人体制で、一人当たり900KB(45万文字)。

 二人でシナリオを完成させるのに、3~4ヶ月かかった」とします。



 ●ヒント:ノベルゲームのテキストは分担できる


 ノベルゲームのシナリオは作業の分担が可能で、

 サブライターや、外注ライターさんにヘルプを頼めます。


 1.8MBのシナリオの場合、ライター二人体制なら

 単純計算で『3ヶ月』で執筆作業は終わります。

 各社が複数ライター制を導入しているのも、

 スケジュールの大幅な短縮を見込めるからでしょう。


 ※ 1人だと不慮のアクシデントに対応しきれない。

   また複数ライターにすることで

  作品としての深みや広がりを持たせられる側面もある。



 ■仕様書の作成と素材チェック


 ゲームのシナリオライター(特にメインライター)は、

 本編のテキストさえ仕上げればよい……というわけではなく、

 ゲーム内に実装されるシステムボイスや宣伝用ムービーの台本を書いたり、

 サブや外注ライターから上がってきたシナリオを総ざらいして

 修正依頼を出すといった、校正&監修作業も行わなくてはなりません。


 また、ライターのお仕事はテキストを書くだけではありません。


 本編のシナリオを書きながら、

 イベントCG(スチル)の仕様書を作成して、ディレクターに提出します。

 追加で必要になった背景素材なども、この段階で発注しましょう。


 上がってきた素材のチェックはディレクターが行いますが、

 シナリオとの齟齬がないか意見を求められることもあるでしょう。

 何だかんだで、『その他の仕事』に一ヶ月は工数が取られます。


 なお、素材チェックはシナリオ執筆中やアフレコ中に同時発生します。

 工数としてカウントされないことが多いので、

 スケジュールには余裕をもたせましょう。




 ■アフレコ : およそ一ヶ月


 シナリオを納品したあとも、ライターはお仕事が残っています。

 それが『アフレコ』です。


 何もライターが声の演技をするわけではありません。

 収録現場に赴き、キャラとボイスのすり合わせを行ったり、

 わからない単語の説明や、演技の相談に乗ったりします。


 現場によっては、アフレコを音響監督さんにお任せしたり、

 ディレクターやプロデューサーが監修を行う場合もあるでしょう。


 今回は『ライターがアフレコに参加する』とします。

 およそ『2~4週間』ほど、収録スタジオに通うことになるでしょう。




 ■後編に続く


 アフレコが終われば、ライターとしての仕事は一段落。お疲れ様でした。

 次に待っているのは、スクリプトとマスターアップ作業です。


 ゲームの仕上げ部分については、次の記事で説明します。





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