コンピューター
@webtk
■第1章
この世は地獄です。今あなたが食べてる場所も、今あなたが寝ている場所も、今あなたが着替えている場所も……
皆さんは、今何をしていますか? そんな当たり前のことを聞くな! この本を読んでいるに決まっているだろう。
そうでした、失礼しました。それでは質問を変えましょう。この本を読む前は何をしていましたか?……おそらくスマホを触っていませんでしたか? そのとおりと答えた方が多いのではないでしょうか。昨今スマホ、SNS、インターネット等私達のまわりには、たくさんのコンピュータがまるで寄生虫のようにまとわりついてきます。今ではコンピュータという言葉はあまり聞きませんが、このコンピュータが無ければ私達は生活ができないほど侵食されていることを、はたして何人の人が感じているでしょうか?
「今日の天気は晴れ?」
息子はコーンフレークを口に入れがらしゃべった。
「今日は晴れだってえ、自分で調べろよ」
「だって聞いた方が早いでしょ」
見ると今度は牛乳を流し喉を唸らしている。息子は悪く言うと面倒くさがりで良く言うと効率を最優先で考える人間である。今の時代の考え方なのだろう。私も効率を最優先に考えるが昭和の時代が抜けずどうしても根性論を唱えるくせがある。時代というのはその人の人格を形成するのに非情である。
私は証券会社で管理職をしているが今はほとんどがパソコンで文字を打つことが多いため漢字が書けなくなっていく。ちょっとしたことを付け足して書く場合、パソコンでは時間が掛かる場合がある。そのためペンで手書きをするのだが漢字が全く出てこない。出てきても正確かどうかが不安になりパソコンで調べるという始末である。つまりこれは人間が退化しているということであろう。世間の方はどう考えているのだろうか?
息子はというと一日中スマホかipadでyoutubeを見ている。彼らの世代は極端に活字を読まない。ほぼ全てが出来上がった映像の入力だけなのだ。あとはバトルロイヤルゲームをする。このままでは人間はおかしくなるのではないか。ゲームの中の仮想空間で暴言を吐き合い罵る。なぜこういう時代になってしまったのか? そうコンピュータの進化が大きく関係している。
「父さんバトルロイヤルゲームを一緒にやろうよ」
彼は携帯ゲームのモニターを見ながら言う。
「うーん、そうだな、やるか」
私は内心面倒だと感じていたが返事をした。私が小学生3年位にファミコンが発売された。近所の友達がファミコンを買いはじめ最初は友達の家でワイワイ遊んだ。同然私も欲しくなり早速父にねだった。父と私は電車に乗って隣町まで買いにいった。しかし当時ファミコンは大ブームで売り切れであった。私は一人っ子で甘やかされていたので我慢ができず当時もう一つのセガというゲーム機を買ってもらった。当然満足できず半年後にファミコンを買い直してもらった記憶がある。
当時の私はゲームが好きだった。みんなも好きだった。しかし今はなぜかゲームすることが非常に億劫になる。何か面倒くさいというかいくらゲームがうまくなっても利益が発生しないという民主主義の呪縛が私を完全に飲み込んでいるためであろう。こどもの内は民主主義が浸透していないので純粋に楽しめるのだ。
「父さん、じゃあ始めるよ」
「いいよ」
「勝手にどっかに行かないでよ、僕にちゃんとついて着てよ」
「わかったよ」
画面に飛行機が出てきて降りる場所を決めるのだが私はどこに降りるかさっぱり分からないので息子の合図を待つ。
「よし、ここで降りて」
「おうっ」
しばらく息子の後を付いていくが、秒殺で打たれて死んでしまった。息子はうまいのでゲームを続けているのを見ていると音声で会話しているようだ。聞いているとあまり品の良いとは言えない言葉が飛び交っている。ふざれるなあ殺すぞなど聞いていて気が滅入る言葉が連呼される。息子を見るとあまり気にしていない様子である。恐らく見知らぬ人の音声チャットなので気にならないのだろう。言葉の重みがまるで無いに等しいのかも知れない。これはインターネットという匿名世界であるからだろう。みんな匿名だからひどいことを平気で言う書き込む。それを見て傷つく人がいるのに。そして人は他人に対して無関心になるのであろう。
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